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ー瘤ー  作者: 幸路
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ー瘤ー タナカサチ


『本日未明、桜ヶ丘市三丁目の住宅で、住人とみられる男女二名の遺体が発見されました。』


朝、起きてリビングに入るとそんな物騒なニュースがTVから流れてきた。

普段、私の気になる番組なんて星占いと天気予報くらいだ。

だけどテレビ画面に映し出された住宅地がよく知っている風景だったので、私は眠気が一気に吹き飛んだ。


『遺体はいずれも激しく損傷されており・・・』

「怖いわね。」


そうつぶやいたのは私ではなく、朝ごはんを用意するお母さんだった。

今日の朝ごはんは、我が家定番のトーストと、リンゴ、玉子焼きに牛乳だ。


「強盗かしら。三丁目といったら、学校のすぐそばね。さちはぼーっとしているから犯人に襲われないか心配だわ。」

「本当だ。さち、気をつけて学校に行くんだよ。」


心配そうにTV画面をのぞき込むお母さん。

ネクタイを締めながら父も、笑って私のほうを見て言った。


「…。」


何をどう気をつけていいのか分からないので私は無言でトーストを頬張る。

TVのニュースで自分の知っているところが出ていると変な感じだ。

確かに、時々通ることもある住宅街の前が映っている。

真剣な顔をしたニュースキャスターがマイクを持っている。


『遺体の状況から警察は、「瘤」が発生した可能性も否定できないとし、市役所と連携して捜査をすすめる方針です。』


「…。」

瘤、ってなんだろう?


そう思ってお父さんとお母さんの方を見てみる。

すると2人とも真っ青な顔をして画面を見つめていた。


「まさか…今更、こんな田舎町で瘤が発生するなんて…」

「最後の発生は、もう数年前だって言うのに…外国から感染者が入ってきたんだろうか。」


ただならない両親の雰囲気にわたしは不安を抱いた。


『瘤とは、10年前に猛威をふるったウイルスの一種で…』


ただならない様子はTVの中も一緒だった。

解説者が「瘤とはなにか、」の説明をはじめたのだけれども…


「さち!あなたまたぼーっとして!TVばかり見ていないで、早く学校に行く準備をしなさい!」

お母さんに怒られてしまった。あわてて牛乳でパンを流し込む。


結局、いつも通り、お父さんが出勤して、お母さんにせかされて学校に行く、いつもの朝になってしまった。

ずしりと重たい通学カバンをもって、家を出る。

今日はからりと晴れていい天気で、朝の事件が近くで起きたなんて嘘みたいだ。

TVでは騒がれるニュースみたいで大人は大変そうだけれど、きっと、わたしは今日もいつも通りの生活が続くのだろうな、なんて感じる空だった。


そういえば、玄関を出る前に、お父さんが振り返って一つだけ教えてくれた。


「いいかい、さち。紫の腕章をした人たちには近づいてはいけないよ。」

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