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22.優秀な人材の斡旋


「あ、あの……ここ貧民街の女帝がいる場所じゃないんですか!?」

「そうだけど?」

「も、もしかして、私は公開処刑されるのでしょうか……? それでニグリスさんの気が済むのなら」


 え。

 あーそうか。貧民街で暮らしていない人間にとって、ここは地獄みたいなものなのか。

 フローレンスも噂でこそ冷酷非道とか、極悪と悪評が広がっているが、それも威厳を誇示するための噂だろうしなぁ。


「いい仕事があるって言っただろ?」

「ど、奴隷のように働けということですね……」


 ん-、違うんだが何を言っても誤解は解けない気がする。

 まぁ、時間と共に薄れていくか。


「……ニグリス殿。妾は有能な人物は差別せぬし、実力主義であることは認めよう。じゃが……っなぜ女子おなごなんじゃ!」

「そこかいっ!」


 アリサが思わずツッコむ。


 言わんとすることは分かるけど、有能な人間が役立てる場所があるのに紹介しない手はないだろ。


「裏方の仕事、腐るほどあるんだろ? だから鑑定の仕事で器用が高い奴を求めてるんだろ」

「……その慧眼は時に厄介じゃな。器用さが高い人間は裁縫や物作りに重宝しとる。生産ラインを貧民街で確立したいのでな」


 やはり貧民街を支配しているフローレンスは有能だ。


 何が重要かをしっかり理解している。


 あと、俺が思うに貧民街の住民の育ちが良くないのは、教育する場がないからだ。

 大人が貧しいと子どもも貧しくなる。大人たちはその日稼ぎで生きるのですら手一杯だ。


「ってことでコイツ。リーシャだ。器用Sの超有能だぞ。たぶん人に教えるのも得意だろうから、裁縫でも学校の先生でもやらせればいい」


 事実、リーシャは受付の仕事においてピカイチである。

 彼女が十年以上、冒険者ギルドの受付をやってきたことの凄さを知らない俺じゃない。


「学校か……分かった。リーシャ、お主を雇おう。ニグリス殿に感謝するのじゃな」

「は、はい……っ」


 フローレンスなら酷い扱いはしないはずだ。 

 案外優しいからな。


「ところでニグリス殿。銀の翼が妾を狙っていたらしいが、それはつまり妾を守ってくれたのか?」

「まぁ、遠回しにそうなるか」


 ズッキューンという効果音と共に、フローレンスが萎れる。

 ズッキューンってなんだ。


「あぁそうだ。フローレンスの殺害は大貴族からの依頼だったらしいぞ」

「なんじゃと? 大貴族……もしや調べた通り……」


 何か知っているのなら教えて欲しいが、深く聞いて厄介ごとに足を突っ込むのも嫌だった。


 肩の力を抜いたフローレンスが、リーシャの前に立つ。


「まぁ良い。妾に付いて参れ。その身なりでは“綺麗“すぎるのでな」


 フローレンスにリーシャは連れて行かれる。

 ……人材の振り分けをした時もそうだが、なんか知らず知らずのうちに貧民街がかなり豊かになってないか?

 少し将来が気になるな。


「ニグリス~。なんでリーシャって人を連れて来たのさ~? 一目惚れ?」

「な訳あるか。俺のアイデアじゃない、フェルスのアイデアだよ」

「い、いや……そっちの方が良いかなと思いまして」

「なんで?」


 フェルスは俺の方を見て、代わりに説明して欲しそうに耳をピクピクと動かした。

 ……花を持たせてくれるのは嬉しいが、気を使わなくてもいいのに。


「……リーシャは冒険者ギルドを勝手に代表して謝罪した。これは冒険者ギルドからかなりの恨みを買うはずだ」


 冒険者は冒険者ギルドの庇護下にいるから活動ができる。

 絶対に冒険者ギルドは頭を下げてはならない。そのルールを破った。


 アリサには言わないが、俺が本当にムカついている相手はリーシャじゃない。


 ……本当に謝るつもりがあるのなら、ギルドマスターが出て来るべきなんだ。それを一方的にリーシャへ押し付け、罪をかぶせた。


 ギルドが謝るつもりなんかないってすぐに分かった。


「ギルドをやめたリーシャに待っているのは、酷いバッシングと暗い未来だったろうからな」


 どうせ、圧力掛けて仕事も出来なくさせられるだろうからな。

 それも分かっていてリーシャは謝った。

 

 そんな人物を見捨てることはできないだろ。


「人間は誰だって失敗する。でも、それを認めて進もうとする人間を見捨てることは違うだろ」

「おぉ、なるほど。頭いいね」


 アリサは納得してポンッと手を叩く。事件が解決したと見るや、ぐぅとお腹を鳴らしご飯食べに行こう!と歩き出した。


 相変わらず元気だな。


「あ、あのニグリス様……?」


 俺の前に出てきて、下唇を噛んだまま僅かに紅潮している。

 エルフ耳が跳ねて、上目遣いが非常に可愛く思えた。


 ……何。

 あっ褒めて欲しいのか。


「リーシャのことよくやったぞ。銀の翼を誰も殺さなかったことも偉い」

「は、はいっ!」


 頭を撫でてやると激しくピクピクと耳を動かして、喜んでいた。

 これ以上、誰も不幸になんかさせたくないからな。


 俺の手が届く範囲は、せめてハッピーエンドにしたい。

 

 



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