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20.フェルスVSミーア


 馬車に乗っていた商人が、フェルスに縋るべく近寄る。

 フェルスはニグリスを追いかけたいと思っていたが、あの程度の人間に負けないことは分かっている。

 ただ、あのアゼルという男を殺したいとだけ思っていた。


「じょ、嬢ちゃん戦えるのかい……? た、頼む! 俺達を守ってくれ! いくらでも金は弾む!」

「……では、隠れていてください。巻き込まれるので」

「あ、ああっ!」


 フェルスは残っている一人。魔法使いのミーアと対峙していた。

 やれやれ、と言った様子でため息を吐いているミーア。


「あなた、奴隷でしょ? ニグリスなんかの奴隷になって可哀想。気持ち悪いでしょ」

「……いいえ、誇っています」

「奴隷ってさ、奴隷根性が染み付くと取れないって言うじゃん? あなたもソレなんだよ」

「余計なことは言わない方がいいですよ。私はあの男以外殺さないと決めているので」

「はぁ? 馬鹿な主人を持つと犬まで馬鹿になるのね。見たところあなた剣士でしょ。もしや魔法の強み、ご存じない?」

 

 魔法は剣士と違って才能が必要だ。

 しかも、詠唱や魔法陣と言った物が必要ではない。脳内でイメージし、出力するだけで使えてしまう。

 遠距離からの攻撃かつ強力で、剣士にとっては天敵と言っても過言ではない。


「ただの剣士ならそうでしょう。でもあなた程度の魔法は、私にはなんら障害になりませんので」


 独自に編み出した剣術に、対応できる人間はまずいない。

 相当の手練れ。フローレンスでなければ、今のフェルスに負けはない。


「馬鹿な奴隷。じゃあ、早く死んで」


 ミーアの得意魔法は風だった。

 杖の先端から刃風が放出され、フェルスへ一直線に飛んでいく。

 抜刀し、斬撃が飛ぶ。


 何が起こったのか分からないと言った表情で、ミーアは驚愕していた。

 金髪が風に揺られ、美しく輝く。

 

「う、嘘でしょ……? も、もしかして……魔法、剣士?」


 人は従来、天から二物の才を与えられない。

 故に魔法剣士は器用貧乏とされる役職だった。


 しかし、どちらの才能も群を抜いているフェルスには、最適な職業であった。


 ────ドゴォォォンッ


 轟雷が鳴り、地響きが襲う。

 フェルスは頭を抱えて「またですか」と呟く。


「な、なに……この音!」

「アリサさん威力抑えてって言われてたのに、全力でぶっ放しましたね」

「いやー、スッキリスッキリ」


 爆発で汚れた頬を拭いながら、満面の笑みで歩いて帰ってくる。

 二人を相手していたアリサは、戦いに飽きてしまい、力を見せることで相手の戦意を削いだ。


「わ、私の仲間……二人はどうしたの!?」

「あたしが魔法撃ったら逃げてったけど。ここで撃つ訳には行かないしね〜。腰プルプル震えて逃げてったのマジおもしろ」

「……ッ!!」


 アリサに向かって魔法を放つミーア。だが、それよりも早くフェルスが動いた。


「動くと斬りますよ。私は子どもではないので、容赦はしません」


 首筋に向けられた切っ先にミーアは杖を地面に捨て、両手を上げた。

 自分の立場を分かっていないのか、ミーアが癇癪を起してしまう。


「……な、なんなのよ! 奴隷の癖に……ニーノ人の癖に!」


 汚い言葉を並べ、必死に二人を罵倒するも二人は怒りを浮かべる様子はなかった。


「響かないね~」

「そうですね」

 

 ニグリスの悪口でない限り、彼女たちは怒りはしない。

 元より温厚な二人が、たった一人の男を侮辱されただけで表情を変えてしまう。

 

 もはや、ニグリスにしか止めることはできない。


「それだけ強くて......あなた達狂ってる!」

「あなたに言われたくないのですが……」

「フェルス。言っても無駄よ、コイツら馬鹿だもん。なーんにも分かっちゃいない」

「……残念です」


 尖り耳をショゲさせて、口を閉じた。

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