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1.追放される


※なろうと書籍版では序盤展開、キャラ設定や魔法の設定、過去がかなり大きく変更されています。

 その点をご理解とご協力の上、お楽しみください。


「いよいよSSランク一歩手前だな……!」


 SSランク。それは冒険者の中で最上位の地位であり、唯一貴族になる方法だ。

 貴族になれば領主になることができ、権力者になることができた。


 貴族への王手を掛けたSランクパーティー銀の翼(シルバーウイング)の一員である俺は、宿場の一室で巻き散らされた酒や食べ物を掃除していた。決して俺は雑用係ではない。


 この世界ではごく稀にスキルを持った人間が生まれてくる。多種多様なスキルがある中で、スキルは絶対的な価値があり、それ相応の能力があるとされていた。


「結局、俺達がここまでくるのにニグリスの鑑定スキルなんて要らなかったな」


 俺のスキルは【鑑定】。その人物の簡単なステータスを見ることができた。

 でも、戦闘では役に立たないし、使えないゴミスキルだと言われても仕方がない。


 それでもこのパーティーに居たのは、別にお金や権力が欲しいからじゃない。

 同じ孤児という傷を持っている者として誘われ、仲間意識があったから付き合っていた。時間と共に自然とSランクまで来てしまったが。


 パーティー内での俺はほぼ奴隷同然。リーダーのアゼルは俺の報酬をほぼカットされた状態で渡す始末だ。


「うし、ニグリス。お前出てけ」

「……は?」

「ほら、早く出てけよ」


 何か言い返してやろうかと思ったが抑えた。こんなこと、今に始まったことじゃない。


 いつもの扱いだ。下手に反発すれば剣を抜いたアゼルが本気の殺意を向けてくる。ここは黙って従おう。


「……部屋から出ていけばいいんだろ」

「違う違う。ゴミクズには分からなかったか?」


 ケラケラと馬鹿にして、空になった酒杯を投げつけてくる。


「お前をこのパーティーから追放するつってんの。お分かり?」

「冗談だろ……?」

「冗談じゃないって分からないの? ほんっと能天気なカスね」


 このパーティーで攻撃魔法の使い手であるミーアが指で突き刺すように迫りくる。

 

「あんた! みたいな! 役立たずが! 寄生でSSランクになれると思ってるわけ? 恥を知れ!」


 癇癪でも起こしたのか鋭い目つきで、歯ぎしりを鳴らしていた。

 コイツら、本気か……?


「理由を聞かせてくれ」

「気持ち悪りい奴。分かんねえのかよ、馬鹿にも程があんだろ」

「教えてやんなさいよアゼル。このカスにさっさと出て行って欲しいからね。同じ部屋に居るのも嫌だってのに」


 ミーアには嫌われているなと感じていたが、ここまではっきりと嫌悪感を示されたのは初めてだった。他メンバーの聖職者アン、盾役のオーガスも同様で、俺を寄生虫のように軽蔑した視線を向けていた。


「俺たちはよぉ、元々四人で活動していくつもりだったんだよ。そこに鑑定スキル持ちのてめえがいたから、お慈悲様で入れてやってたんだ。もうお荷物……いや、ゴミクズと一緒に行動する意味がねえ」


 極まれに、この世界ではスキルを持った人間が産まれてくる。俺もその一人で、数少ない鑑定スキル持ちであった。

 だが俺の唯一の価値は鑑定スキル。そう言われているように感じた。それすらもたった今否定されたが。

 無価値だと。


「確かに俺の鑑定スキルは対象ステータスしか分からない。だけど、それでも十分役立っていたはずだ」


 ステータスでは相手の潜在能力や詳細な能力が見れる。それだけでは戦闘に役立てないかもしれないが、魔物の【状態:安心】や【状態:警戒】と言ったような相手の状態を確認することが可能だ。


 相手が油断しているのか、警戒しているのかで行動は変わってくる。

 これがどれだけ戦闘面において有能か分からないはずがない。


「それが要らねえって分かんねえのかぁ? あぁ!? 鑑定スキルがあるからなんだよ、俺たちは正面から叩き潰せんだよ。俺は天才剣士アゼル様だぞ? コソコソとゴミみたいな鑑定スキルが必要かぁ?」

「……鑑定スキルが必要なくても、俺には治癒魔法がある。少なくとも、こちらでは十分な仕事をしていたはずだ」


 俺は少なからず鑑定スキルだけで生きてきた訳じゃない。治癒魔法の使い手として、このパーティーではかなり活躍していた。

 何度も説明していたし、知っているはずだ。


「「「「ぶ、ブハハハハハッ!!」」」」


 俺は茫然と立ち尽くしてしまった。

 

「し、信じらんねえコイツ……っ! 頭おかしいんじゃねえのっ」

「治癒魔法なんて使ってない癖にまだ言ってるの? 自分の無能さが受け入れられなくて妄想でもしてるんじゃないの!」


 アゼルとミーアに馬鹿にされる。


 ようやく俺は、とあることに気付いた。


 ……これが、仲間に対する扱いなのか?


 パーティーのことを想って雑用を率先して受け入れ、戦闘中も味方が傷つかないように常時魔法を展開して……仲間は平等な存在じゃないのか。


「お前さぁ……馬鹿だよな。俺たちが怪我したのなんて一年以上前が最後だぞ。俺たちはお前と違って、強くなり過ぎちまったんだよ」

「……そうか」

「あー、国に貢献したかぁ? 寄生虫を駆除しましたってな!」


 三年もの間、野営や荷物持ちのパーティーに関わること、鑑定スキル以外でもパーティーに貢献できるようにと努力してきた。

 俺への報酬が少なくても、パーティーの遠征費などに使われるのならと我慢した。だが、実際は豪遊に全て溶けていった。

 誰からも認められず、評価もされない。


 ふざけるな……。


「なんだよ。睨みつけてきやがって、殺すぞ」

「……分かった。このパーティーを抜ける」

「無能が消えてくれて助かるぜ。あぁ待て、どうせ装備も要らねえだろ置いていけよ」

「これは俺が自腹で買った……」

「あぁ? 口答えすんのかよ。てめえはもう仲間でも何でもねえんだぞ。殺してもいいんだぜ?」


 完全に俺の中で納得してしまった。

 コイツらは俺の仲間ではない。


 護身用の高級な杖と銀の翼のマントを叩きつけて、部屋を後にした。 


「うっしゃ、もっと酒飲むぞ! これでSSランクへさらに早く近づけそうだからなぁ! 俺たちは最強の銀の翼だ!」


 俺は一度も振り返ることはなかった。

 こんな奴らが仲間を語るな……俺は、俺だけの仲間を作る。



 Sランクパーティー、銀の翼(シルバーウイング)は知らなかった。


 ニグリスは治癒魔法と支援も同時にこなしていたこと。仲間である彼らを死なせたくないから、どれだけ酷い扱いを受けてもパーティー内に居たことを。


 そして、鑑定スキルを使っていたニグリスは知っている。

 三年前から、彼らのステータスが一切変わっていないことを。

 



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