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天使の贈り物〜Shiny story〜  作者: 悠月 かな
3/6

ユイの不安とシャイニーの励まし

翌朝、ユイはいつもより早く目が覚めました。


「あれは…夢?」


ユイは、寝ぼけながらボンヤリと考えます。

そして、何かに気付いたようにハッとしました。


「そうだ!羽!」


ユイは飛び起き、自分の手を見ました。

ユイの右手にはシャイニーの羽がシッカリと握られていたのです。


「ママ~!」


ユイは居ても立っても居られず、お母さんの元へ走り出しました。

キッチンへ向かうと、お母さんは朝食を作っているところでした。


「あら?ユイ、ずいぶん早起きね。おはよう。」

お母さんは、手を止めユイを見ました。

すると、ユイの右手にはシッカリと羽か握られています。


「ママ!ママ!あのね!あのね!」

「ユイ、ちょっと落ち着いて。」


お母さんはクスクス笑いながら、ユイの右手を優しく両手で握りました。


「天使の羽ね。新しい羽?」

「そうなの!ユイ、夢の中で天使さんに羽を貰ったの。天使さんの名前はシャイニーだって!」


ユイは、目をキラキラと輝かせています。


「そう。名前も教えてもらったのね。」


嬉しそうなユイを見て、お母さんはニコニコしています。


「さぁ、朝ごはんにしましょ。着替えてらっしゃい。」

「うん!」


ユイは羽を大切そうに撫でながら部屋に戻っていきました。

お母さんはユイを見送ると、ふと宙を見上げました。


「シャイニー。いるかしら…お願いがあるの。」


シャイニーは、突然お母さんに話しかけられて驚きました。


「え!僕が分かるの?」

「シャイニー。残念だけど私にはあなたの姿は見えないの。でも…あなた達、天使の存在は知っているのよ。」


シャイニーは、驚きながらもお母さんの話をジッと聞いています。


「それで、あなたにお願いがあるの。私は、忙しくてユイに淋しい思いばかりさせているの。だから…あの子が淋しがっている時は、支えてあげて欲しいの…」


宙を見上げるお母さんも淋しそうでした。

シャイニーは、お母さんをソッと抱き締めました。


「大丈夫だよ。ユイちゃんが淋しい時には僕が元気をあげる。お母さんもとても淋しそう…」


お母さんは心がじんわりと温かくなりました。


「この感覚…久しぶりね。シャイニー、ありがとう。あなたの温かさを感じたわ…さぁ、朝食を作らなきゃ。そろそろユイが来る頃ね。」


自分に言い聞かせるようにお母さんは呟き、朝食を作り始めました。

シャイニーは、お母さんが天使の存在を感じてくれて、とても嬉しいと感じました。

しかし、心はスッキリしません。


(こんなに嬉しいのにスッキリしないのはどうしてだろう?)


シャイニーは一生懸命に考えます。

そして気付いたのです。


(そっか…お母さんも、ユイちゃんと一緒にいられないから淋しいんだ…ユイちゃんもお母さんも淋しい…スッキリしないのは、この淋しさが僕の心に流れ込んで来てるんだ…)


シャイニーは、少しずつですが人間が抱える感情を理解し始めていました。

そして更に考えます。

ユイだけではなく、お母さんも元気にする事が出来ないか…

でも、答えはなかなか出ません。

お互いに大好きなのに、淋しい思いをしてる2人…

どうしたら良いのか全く分からないのでした。

そこで、シャイニーはラフィに相談する事にしました。


「ラフィ様、ラフィ様。」


シャイニーは、ラフィから貰った指輪に向かって話しかけます。


「やぁ、シャイニー。君は地上で頑張ってるようだね。この指輪で連絡してきたという事は…何かあったんだね。」

「はい。ラフィ様…実は…」


シャイニーは、今までの事をラフィに話しました。

ユイが、シャイニーの存在に気付いた事。

そのキッカケを作ったのは、ユイのお母さんだという事。

そして淋しいのはユイだけではなく、お母さんも淋しいという事。

ラフィは、シャイニーの話を黙って聞いていました。

そして、シャイニーに問い掛けたのです。


「シャイニー。君はどうしたいんだい?」


シャイニーは、少し考えて答えました。


「僕は2人が淋しくないように…そして、2人が幸せになれるように手伝いたいです。」

「そうだね、シャイニー…僕達天使は、直接人間を助けるわけではないんだ。人間が前を向き、苦しみや淋しさや悲しみと向き合い、解決する為の手伝いをする事が僕達天使の役目。今回の場合は、ユイちゃんとお母さんが、どれだけお互いを大好きか気付けば良い。きっと、状況は良くなると思うよ。」


ラフィは、優しくシャイニーに話しました。


「どれだけお互いを大好きか気付く…」


シャイニーは、ラフィの言葉を確認するかのように呟きました。


「そうだよ。シャイニー。後は自分で考えてごらん。」

「ありがとうございます、ラフィ様。僕…考えてみます。」

「うん。シャイニーなら大丈夫。また困ったら、いつでも連絡しておいで」


シャイニーはラフィとの話を終えると再び考えました。

しかし、いくら考えても答えは出ませんでした。



そんな時、ある出来事が起こるのです。

いつものように、朝食の用意をしていたお母さんが倒れたのです。


ガシャン!


食器を運んでいたお母さんは、そのまま倒れました。

食器が割れた音で、ユイやおじいさん、おばあさんが駆けつけます。


「ママ!」


ユイが倒れたお母さんの体に触れました。


「ママの体が熱い…ママ!ママ!」


ユイがいくら呼んでも、お母さんは目を開けません。

ユイは悲しくなりました。


「大丈夫だから」


おばあさんがユイを抱き締めます。

お母さんは、救急車で病院に運ばれていきました。

ユイはおばあさんと留守番です。

ユイは、心配でたまらずポロポロと涙をこぼしています。

おばあさんが、ユイをいくらなだめても泣いてばかりです。


「困ったね~ご飯も食べてくれないし…」


おばあさんは、ユイを抱き締めながら呟きました。

シャイニーは、お母さんが倒れてからずっと見守っていました。

ユイに話しかけていますが、心には届かないようです。


「どうしたら良いのかな…」


シャイニーは、また自分の羽を抜くとユイの前に落としてみました。


(お母さんは大丈夫。僕も側にいるよ。)


シャイニーは、自分の思いを込めて羽に託しました。

ユイはすぐに羽に気付きました。

拾い上げて光にかざした瞬間、ユイの胸が一気に温かくなったのです。

ユイを泣くのを止め、おばあさんを見ました。

おばあさんは、とても心配そうな顔でユイを見ています。


(おばあちゃん…ユイが泣いてばかりいるから心配してる。)


ユイはおばあさんの気持ちに気付き、両手で涙を拭うと言いました。


「おばあちゃん…ごめんね。ユイご飯食べる。」

「そうかい。食べるかい。すぐに用意しようね。」


おばあさんは、ホッとするとご飯の準備を始めました。


「シャイニーありがとう。また羽くれたのね。」


ユイは、ソッとシャイニーに話しかけます。


「ユイ…ママが心配だけど、もう泣かないからね。」


そう言うと、シッカリと羽を抱き締めます。

シャイニーは、そんなユイの姿を見てホッとしました。

その時、電話が鳴りおばあさんが急いで出ました。


「そうなの…それなら良かった。」


電話で話しているおばあさんの表情が明るくなりました。

電話を切りながら、おばあさんはユイに言いました。


「ユイ、おじいちゃんからだったよ。ママ、大丈夫だって。今日は念のために病院に1日お泊りするけど明日は帰って来るよ。疲れが溜まってたんだろうね…」


「良かった。ママ帰って来るんだ!お熱は下がったの?」

「熱はまだ高いみたいだね。でも、だいぶ元気になったって。おじいちゃんが言ってたよ。」

「そっか…お熱まだ高いんだ…」


ユイは、自分が熱を出した時の事を思い出しました。

体が熱くて、嫌な夢ばかり見て何度も目を覚ましました。

その度に、お母さんがいてくれて安心していたのです。


「ママが怖い夢を見て目を覚ましたらどうするんだろう?病院でママは一人ぼっち…」


「ママは大人だから大丈夫だよ。さぁ、ご飯出来たから食べなさい。」


おばあさんは、そう言うとユイを抱き上げ椅子に座らせました。


ご飯を食べながら、ユイはお母さんが病院で泣いていないか、怖い夢を見ていないか…ずっと考えていました。


(ママ…可哀想…)


ユイは泣かないと決めましたが、病院で1人で寝ているお母さんを思うと、また涙が溢れそうになりました。

ユイはグッと我慢して、急いでご飯を口に放り込みます。

そうしないと、涙が今にも溢れ落ちてしまうからでした。


「ごちそうさま。」


どうにかご飯を食べ終えたユイは、俯きながら部屋へと向かいました。


ーーパタンーー


部屋の扉を閉めると、涙がポロポロと溢れ落ちました。

そんなユイを見てシャイニーはオロオロしています。


「ユイちゃん…泣かないで…お母さんは大丈夫だよ。」


シャイニーは一生懸命に話しかけます。

そして、ユイを抱き締め頭を撫でました。


暫く泣いていたユイが、ふと顔を上げました。

そして、涙を拭い泣きじゃくりながらもシャイニーに話しかけたのです。


「シャ…シャイニー、お願いがあるの…ママのお熱がまだ下がらないの。お熱は、とても辛いの。体は熱いし、怖い夢をいっぱい見るの…ママは病院で一人ぼっち…ママのお熱が下がるように…怖い夢を見ないようにママを守って…」


ユイは祈るように言いました。


「ユイちゃん…」


そんなユイをシャイニーは抱き締めます。


「分かったよ。今から病院に行ってくるからね。心配しないで僕に任せて。だから、もう泣かないで…」


シャイニーは、ユイを元気にしたい…また笑ってもらいたい…そう強く思いました。


「どうしたら良いのかな…僕に出来る事はないかな…僕には、ラフィ様のような力はないし…」


シャイニーは一生懸命に考えます。


「でも…諦めたらダメだ。そこで終わっちゃう。やってみよう。」


シャイニーは、ラフィが不思議な物を出す時の動作を思い出してみます。


「えっと…ラフィ様は、よく指を鳴らして不思議な物を出してるから…」


シャイニーは、見よう見まねで指を鳴らしてみます。


ーーパスッーー


シャイニーの指からは、指が擦れる音しかしません。

ラフィのような高く澄んだ音は出ません。

シャイニーは、もう一度鳴らしてみます。


ーーパスッーー


「ダメだ…僕には指を鳴らせない…」


シャイニーは、少し考えるとハッと何かを思い付いた表情をしました。

自分の羽を数枚抜いてフーッと息を吹きかけます。

すると、羽はフワリと舞い上がりクルクルと回り出しました。

羽は小さなつむじ風に巻き込まれたように更に激しくクルクルと回ります。

やがて、羽は四角い箱のような形となりシャイニーの手の平にストンと落ちました。

それは、白い羽で装飾された箱でした。

光の加減で虹色に輝く美しい箱です。

シャイニーは、箱の蓋をソッと開けました。

すると、箱から美しいメロディーが流れ始めたのです。

それは、オルゴールでした。

シャイニーは、ベッドに突っ伏して泣いているユイの側にオルゴールをソッと置きました。

オルゴールから紡ぎ出されるメロディーは、とても美しく優しく、そして温かいものでした。

ユイは、オルゴールのメロディーに気付き顔を上げます。

そして、キョロキョロと見回しました。

そして、ベッドの上で美しいメロディーを奏でるオルゴールを見つけたのです。


「わぁ~!綺麗なオルゴール…あ!虹色…シャイニーのオルゴールだ…」


ユイはオルゴールをギュッと抱き締めました。


「シャイニーありがとう。ユイ…泣かない。泣かないでママの帰りを待ってる。もう大丈夫だから、シャイニーはママの所に行ってあげて。」


ユイは涙を拭き、笑顔で言いました。


「良かった…ユイちゃん、待っててね。」


シャイニーはユイの頭を撫でると部屋の窓から飛び立ちました。


「さて…病院はどこだろう…」


シャイニーは、周りを見渡すと屋根の上で昼寝をしている猫を見つけました。


「猫さん、猫さん」


シャイニーが声をかけると、猫は片目を開けチラッとシャイニーを見ると、また目を閉じてしまいました。


「猫さん、猫さん」


シャイニーは、少し近寄ってまた声をかけます。

しかし、猫は目を閉じたままです。


(聞こえないのかな…?)


シャイニーは、もっと近寄り猫の耳に向かって大きな声で話しかけました。


「猫さん!猫さん!」


シャイニーの大声に猫は飛び上がりました。


「全くうるさいね!聞こえてるよ。年は取っても耳は衰えてないよ!」


猫はシャイニーを睨みながら答えました。


「ごめんね。猫さん。呼んでも答えないから聞こえてないのかと思って。」

「だからと言って、加減を知らないのかい?全くうるさいったら…」


猫は昼寝を邪魔され不機嫌そうにブツブツ言っています。


「あのね。猫さん、僕…ユイちゃんのお母さんが入院した病院に行きたいんだ。ちょっと前に救急車が来たでしょ?どこに行ったか知らない?」


シャイニーの言葉に猫は顔を上げました。


「ユイのお母さんだって?何があったんだい?」

「猫さん、ユイちゃんを知ってるの?」

「ああ、知ってるよ。あの子はいい子だよ。年寄りの私をいつも可愛がってくれるんだ。それで、ユイのお母さんがどうしたって?」


シャイニーは、お母さんが倒れ救急車で運ばれた事…そして、ユイが心配している事を話しました。


「そうかい…救急車で運ばれる病院なら、この辺りでは一軒しかないよ。ここから近い。そこから見えないかい?白い大きな建物が建っているよ。」


シャイニーは、猫から離れパタパタと舞い上がると病院を探しました。


「あ!あった!」


シャイニーの視線の先には、白い大きな建物が建っていました。


「見つけたかい?」


猫は眠そうにアクビをしながら聞きました。


「うん、ありがとう。猫さん。僕…病院に行くね。」


シャイニーは、空に舞い上がると病院目指して羽ばたいていきました。


「頑張るんだよ。天使さん…」


猫がシャイニーを見送っていると、どこからか声が聞こえました。


「マリン!ご飯よ。どこにいるの?」

「ご主人様がお呼びだ…よっこらしょ…年は取りたくないね~」


「ニャー」


猫は返事をするかのように一鳴きすると、ゆっくりと屋根から下りていくのでした。



お読み下さりありがとうございます。

今回は童話となります。

ご感想頂ければ励みになります!


よろしくお願いしますm(_ _)m

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