大魔王おにぎり
その日、世界は唐突に終わりを告げた。
大魔王おにぎりが勅命を下したのだ。
「我ら米一族以外の穀類を、悉く根絶やしにするのだ!」
小麦一族の長が怒りを顕にした。
「勝手な!同じイネ科ではないか!」
「ええい、うるさい!我ら米一族のように粒食できず、製粉しなければ食せぬ分際ででかい口を叩くな!大体貴様らはパンだの麺だのと、軟らかいものにばかり加工されるではないか。軟弱なものばかり食っていては顎が軟弱になる!」
「ぐわああ!フランスパンは硬いのにいい!」
こうして小麦一族は粉砕された。
とうもろこし一族の長は嘆いた。
「酷いわ!我らとうもろこし一族は、米や小麦と並ぶ三大穀物のひとつ。穀物界を支えてきた重鎮なのに!」
「ええい、うるさい!そういう生意気な口は、主食として食卓に並んでから利け!とうもろこし一族の殆どを占めるデントコーン家は飼料用ではないか!他に食えるものはコーンフレークやポップコーンといった菓子だろう。片腹痛いわ!我ら米一族と同等だと?百年早い!………何?スイートコーン家は食卓に並ぶ?あれは野菜に属するイレギュラーだろうが!」
「いやああ!コーン油は体に良いのにいいい!」
こうしてとうもろこし一族は粉砕された。
蕎麦一族の長は武器を手に取った。
「小麦一族も、とうもろこし一族もやられてしまった。こうなったら我ら蕎麦一族が立ち上がるしかない!磨り潰された同類の無念を晴らすべく、今こそイネ科の底意地を見せてやるぞ!」
「いや、そもそも貴様らはイネ科ではないだろ。そば一族はたで科だ」
「ぎゃああ!無念んんん!」
こうして蕎麦一族は粉砕された。
最後に残ったのは大麦一族。大麦一族の長を見た大魔王おにぎりが鼻で嗤った。
「最後は貴様らか、ビールか麦茶にしかなれない粒共よ。恨むなら米一族より秀でた部分がない己の無力を恨むがよい!」
高笑いする大魔王に、大麦一族の長は言い放った。
「あの、ぶっちゃけ、秀でた部分しかないんですけど。食物繊維は貴方の何十倍もあるし、ビタミン類も豊富です。米は………嗚呼、玄米だったら兎も角、精白米の大魔王はビタミンが全然ないんでしたっけ?」
「ぐぬぬ!痛いところばかり突きよって!いつか絶対粉砕してやる!覚えていろ!」
言い返せなくて、その場から逃げ出した大魔王おにぎり。
斯くして世界は平和を取り戻したのだった。