~おれ、パチンコなしじゃいきられない~
ギャンブル依存症とは
自身の身の丈を越えた金額をギャンブル行為に消費し、やめられなくなること
近々パチンコ業界では依存症対策を行い、ギャンブルではなく「ギャンブリング」「ゲーミング」と名称を変えている
※本作品はそういったギャンブリング行為を推奨するものではありません
あくまでギャグとしてお楽しみ下さい
1.プロローグ
俺は神田頼広30歳
これと言った特技はなく、東京で25歳の時にバーを開業。料理や酒運びなどで鍛えた身体で同年代より体力、筋力に自信もある。
容姿も悪くなく、店を開いた時には一時的ではあったが、イケメン店長とメディアに取り上げられたこともあった。
今は彼女なし。経験人数8人。飲食店経営者。…だった。
つい1年前に経営が上手くいかなくなって店をたたみ、朝から晩までパチンコ屋に出入りする生活を送っている。
嫌いだった名前の神頼みに頼った時もあったが通じず、数ヶ月前に世界中を蔓延しているウイルスによる休業保証や事業給付金といったものとも惜しくも縁がなく、貯蓄を切り崩しながら毎日をパチンコとともに生きている。
しかしウイルスのせいで外出自粛を余儀なくされ、パチンコ店も休業する店が大半になり、俺はパチンコも奪われそうになっていた。
いや、この数日後に完全に奪われるとは思ってもいなかったのであった。
2.迷惑メール
それから数日後のある日、
陽も完全に沈み、コンビニで買った缶ビールを片手に帰路につく。
「いやぁ、今日の当たり台は隣だったかー。でもあそこで確変引けてれば、いやあそこで当たってれば勝てたかもしれないのになぁ」
薄暗い道に独り言を響かせながら歩く。
途中いつものように公園に立ち寄り、1人ブランコに座り買っておいた肉マンをほうばる。
「しっかしなぁ、明日から今日の店も休むとか言ってるし、あとどこの店やってんだよ。雀荘も全滅だしよ」
飲み終えた缶ビールをグシャっと潰し、スマホをいじる。
明日以降も営業してそうな店を探すが出てくるはずもない。
「参ったな…こりゃあとは競馬くらいか?っても、ウマはよくわかんねぇし」
頭をボリボリかいて、顔をしかめる。
すると珍しくメールが届いていることに気が付いた。
「誰からだ?っても迷惑メールだよな…っと」
【ギャンブルにお困りのあなた】営業してるパチンコ店お教えします!
「ふーん、なかなか面白い内容だな」
バカにしたように眺めながら画面をスクロールしていく。
するとある一文が目に留まった。
【神様に直談判したい方はクリック】
「ふっ、バカじゃねぇの(笑)こんな幼稚なイタズラメール初めて見たわ」
高笑いし、スマホの画面を消しポケットに入れる。
「いやぁ久しぶりに面白かったわ。俺の名前が神頼みって分かってて送ってきたなら表彰モンだわ。あー可笑しい」
2本目の缶ビールを開けた瞬間、スマホに着信が入った。
「今度はなんだよ?」
足元に缶ビールを置き、再度スマホを取り出し画面を見る。
画面には非通知と表示されていた。
「うわっ、怖っ。なになに?俺呪われてる系?ホントに勘弁してほしいんだけどー」
着信音を止め、スマホを再度ポケットに入れ缶ビールを持つ。
だが、次の瞬間…
「その願い聞き届けたり」
野太い声が響き渡り、頼広は光に包まれたのであった。
目を開けると頼広は雲の上に立っていた。
「な、なんだこれは!?夢…?いや、俺は死んだのか?」
自分の手を見つめ、それから身体を触るが違和感は感じられない。
むしろ酔いが覚めて感覚が少し鋭くなった気さえする。
「ふぉっふぉっふぉっ。気分はどうかね?選ばれし者よ」
光に包まれる前に聞いた声が後ろからする。
「選ばれし者って?俺はこれから別世界で世界を救うとかってパター…ん??」
後ろを向くが誰もいない。
「下じゃ、下じゃ」
目線を下ろすとそこには紙オムツ一枚だけの男の赤ん坊が立っていた。
「え?赤ちゃん?こういうのって偉そうなじいちゃんか美人な女神様ってお約束じゃね??」
「うるさいバカモノ!わしかて好きでこの姿をしているわけではないわ!!」
地団駄を踏み顔を真っ赤にしている。
「で、ですよね。んで、色々教えて欲しいんですけど。
おれ死んだんですか?」
その場にしゃがみこみ赤ん坊と同じ目の高さになる。
「いいや、お前さんは生きておる。だが、別の世界に行って選ばれし者の役目を果たしてもらうぞ」
キターっ!!
これは鉄板の異世界転生!いや、生きてるから異世界召還ってヤツか!!
「任せといて下さい!必ずや世界を平和にしてみせます!」
「ん?何を言っとる?世界を救う?安全で平和な世界にお主を送ってやるぞ?」
へっ?
開いた口が塞がらない。
数秒後、頼広は深呼吸をしてから再度尋ねる。
「じゃあ、俺の役目って何ですか?」
「そんなもん、パチンコを絶ってもらうに決まってるではないか?」
えっ、ちょっと待って…ムリ。
「待って!待って!普通にチート能力を手に入れて、異世界で大活躍して女にモテモテ、財産、名誉もうほほーい!って流れでしょ!?」
「お主はアホか?お主の頭にはナマコでも詰まっておるのか?」
取り乱す頼広を呆れて、ため息を漏らす。
「良いか?これは大黒天様がお決めになったコトじゃ。お主みたいにろくに働かず努力もせず、運もない人間をギャンブルのない世界に送り出し健全な生涯を終えてもらうという計らいがあるのじゃぞ?」
「んなコト誰も頼んでねぇよ…」
肩を落とし涙目になりながらも赤ん坊を睨む。
「まぁ、大体の人間はそう言うのぉ。大丈夫じゃ、お主以外にも何人かすでに送っておるから寂しくないぞ?それに…」
赤ん坊は右手から金色に輝く光の玉を出す。
「お主の言うチート能力はムリじゃが、何か1つ能力を授けてやろう」
お、おぉっ!復活パターンきたーーー!!!