本性
今回少ないです
「えっ?」
アリスは思わず何を言われたのか分からずに疑問の声をあげる。
だが、林田はアリスが聞こえなかったと判断したらしく、
「だから、あの---「聞いてどうするんだい?」---えっ?」
もう一度同じことを言おうとした林田の行動は横から言葉を被せてきた神童によって中断させらた。
話を中断させた張本人である神童は静かな怒りを宿した表情をしている。
「どうしたんだい、正次郎?」
そんな神童を見た林田はおどけるようにそう肩をすくめた。
「まだ質問の回答をもらってないな、聞いてどうするんだい?」
神童は無視し、もう一度同じことを林田に対して聞く。
そんな神童を見た林田は笑いながらこう答えた。
「何をしに行くって? 決まってるじゃないか、笑いに行くんだよ!」
その言葉を聞いた周りの生徒の一部は絶句していたが、召喚された時に悲しむどころか喜んでいた一部の生徒は林田に賛同するように笑う。
そんな中で神童は表情をあまり変えずに再び林田に問う。
「・・・それが君の本性かい?」
「おや? あまり驚かないんだね」
林田は少し意外そうな顔をしながらもあくまで発言を撤回する気はないようだ。
「困っている人を見たら助けるのが君の流儀じゃなかったのかい?」
「知らない人だったら僕に利益があるかもしれないだろう?」
完全に自分のことしか考えていない林田の発言に厳しい視線が殺到する。
林田はそんな視線など全く気にせずに話を続ける。
「今ここで喋った理由、分かるかい正次郎?」
その林田の問いに神童は辺りをちらりと周囲を見渡す。
「・・・なるほど、この場にいるのは男子生徒だけそれに今は彼がいないね」
「さすがは正次郎だ」
神童のその的確な指摘を林田はパチパチと手を叩いて称賛する。
「だが、王女様がいるのに正体を表したのは何故だい? 僕の記憶が確かなら君は無類の女性好きのはずだ、こんな綺麗な人の前で自分の負の部分を見せても君に得はないんじゃないのかい?」
そこだけは解せない、といった感じで更に神童は林田を追及する。
「じゃあ正次郎、今度は僕から簡単な質問だ。 これからこっちは危険なことに関わらなきゃいけないよね、それには報酬があってもいいと思わないかい?」
当然だろ? といった感じで林田はそう言う。
だが、その言葉の意図を周りの者はともかく神童ですら理解出来ていないようだった。
それを見た林田はやれやれと首を振りながら話し出す。
「心配しなくても僕と王女はもう結婚することが決まっているからこういうのを隠す必要もないのさ」
「ま、まさかお父様が!?」
アリスが思わず声をあげる。
林田はそんなアリスに優しげな眼差しを向けながら最低のことを言った。
「王様も最初は渋ってたんだけどね、僕がそれなら戦わないと言ったら魔王を倒すというの条件に了承してもらったよ」
どうやら林田はアリスの意思を全く無視した一方的な取引を行っていたらしい。
そんな林田を見た周りの生徒は愛想をつかしたように段々とその場から去って行く。
だがそれを林田は止めない、おそらく誰かに言ったところでそれを他の人は信じないと思っているのだろう。
ついにその場にはアリス、林田、神童の三人だけとなった。
「さあ正次郎。 僕と今まで通りの関係でいてくれるかい?」
手を差し出しながらそう言ってくる林田に対し、神童はーーー
★
「連様はもうお待ちでしょうね」
アリスは少し急ぎながらそう呟く。
先程の不愉快な時間によって害した気分は神童の言葉によって少しは晴れた。
あの後、すぐに自室に戻って身支度を整えたが、その余計なやりとりのせいで連との約束の時間に少し遅れ気味なのだ。
色々と知りたいと言っていたこの城で迷わないかと心配して自分の信頼するメイドを派遣しておいた。
おそらくあの子がしっかりやってくれているだろうと信じて小走り気味に連の部屋へと向かう。
途中、見回りの兵士がいつもより少なかったのが気になったが、今は関係なかったのでそのことをそこまで重要視しなかった。
やがて、部屋までもう少しというところで二人の人影が見えた。
最初、連とメイドが一緒にこちらにやってきていたのかと考えたアリスだが、
(・・・あきらかに体格が違いますね)
片方は連より少し高いくらいだが、もう片方は明らかに肥え太っている。
アリスが疑念を抱きながら進んでいき、遂に二人組の正体が見える位置まで近づいた。
だが、
「な、なんであなたがここに!」
そこにはアリスにとって一番出会いたくない相手がいた。
「フヒヒ、半年ですなアリアーゼ王女!」
横に黒いローブを着た従者を連れ、豚のように肥え太った見た目に気持ち悪い声を出しながらこちらに近づいてくるのは帝国の第ニ皇子その人だった。