異世界
「ようこそおいでくださいました勇者様方!」
目の前には歓喜の声をあげながら俺達を歓迎している金髪の女の子がいる。
年は俺達と同じくらいだろうか、すごく美人だ。
その周りには今時甲冑を着ている騎士のような存在の人物が数人いた。
うわぁ、まるでヨーロッパニキタミタイダナー、アハハハ・・・
……まあ、待て。 現実逃避はこれくらいにして状況を整理しようじゃないか。
なんでこうなったのかを思いだそう。
えっと、確かーーー
★
俺、馬場連は教室の隅で一人、読書をしていた。
決してクラスでハブられている訳ではない、決してだ。
確かに仲の良いクラスメイトはそんなに多くないけどいないこともない。
ハブられてはないと思うけどなー、ブツブツブツ・・・。
ゴホン、話を戻そう。
しばらく読書をしていると本鈴が鳴り、俺は本を机に仕舞った。
いつも通りなら本鈴が鳴ると同時くらいに教師が授業をするために教室へ入ってくるのだが、五分くらいたっても誰もやってこない。
何かあったのかと教室がざわめきだしたその時、
「えっ! あなた誰ですか?」
突然クラスメイトの困惑した声が聞こえた。
何事?と思って俺もそちらを見てみると、
町なんかで見たら問答無用で捕まりそうな怪しい人物が教壇の上にいた。
まず、身長は百六十センチ後半くらいで体格的には女?
一見それだけ聞くと普通だが、問題は女の服装にあった。
なんと、真っ黒なローブを羽織っていたのだ。
誰がどう見ても危ない奴だと確信出来るほどおかしな人物。
そんな奴が事前情報なしにいきなりいたら、当然クラスは混乱する。
もちろん俺もだ。
だが、内心は混乱どころじゃなかった。
(あいつ、どっから現れた!?)
確認するまでもないが、確実にさっきまであいつはこの教室にいなかった。
クラスの様子からしてドアから入ってきたわけでもなさそうだ。
ということは、あの黒ローブの女はいきなりあの場所に出現したということだ。
俺はその事実に戦慄する。
(俺でも現れた瞬間に気づけなかっただと? ・・・一体何者だ)
クラスメイトの何人かが黒ローブに質問をするが、黒ローブはそれを全く気にせずに何かブツブツ言っている。
その様子にカチンときたのかクラスの不良のような存在である黒田利光が、
「おい、てめえ! さっきからブツブツ言ってねえでこっちの質問に答えろや!」
と、怒鳴りつける。
だが、やはり黒ローブはそちらを見もせずにまた何かを唱えるようにブツブツと言い続けている。
自分が無視されたことを理解した黒田が立ち上がり、黒ローブのところまで行って掴み掛かろうとするが、
「『次元転移』」
黒ローブの口からその言葉が発された瞬間、黒ローブを中心に白い光が溢れ教室を覆った。
あまりの眩しさに俺は思わず目を瞑る。
時間にして一分程経った後、光が収まったのを確認し俺はゆっくりと目を開いた。
そして、次の瞬間目に映った光景に思わず目を疑った。
なんと、教室にいた筈の俺達は全く見知らぬ豪華な場所にいたのだ。
あまりの事態に困惑して声も出せないでいると、目の前の大きな扉が急に開き、
★
今に至るというわけだ。
(・・・だめだ、情報が少なすぎる)
何一つ分からない現状に俺が頭を抱えていると、
「勇者様方、突然の事に驚かれていると思いますが、事情は『王座の間』で説明いたします。 どうぞ私に付いてきてください」
突然現れた金髪の少女はそう言いながら、やってきた大きな扉の方に歩いていく。
不安もあるが、少しでも情報が欲しい今の状況ではそんなことも言ってられない。
ゾロゾロと促されるまま付いていくクラスメイトに俺は便乗する。
(・・・見た感じ、今ここにいるのはクラスメイトの三十人だけか)
歩きながら周りを見渡して確認し、現状の人数を把握する。
他にもいるかもしれないが、今は確認のしようもない。
そして、扉の前に着いた少女が何かを呟くと、
触れてもいないのにいきなり大きな扉が開いた。
(はっ!? 今何が起きたんだ!?)
日本にある自動ドアのようなものかと一瞬考えたが、センサーの類どころかそもそも電気を使っている様子もない。
目の前で起こったことが信じられずに驚いていると、少女はこちらのその様子には気づかずに案内を始める。
「勇者の皆様、こちらが『玉座の間』になります」
扉の仕組みについて一旦思考を中断し、『玉座の間』とやらを見てみる。
(・・・マジ?)
まず、その場所を見て一番最初に思い浮かんだ感想がデカイ、の一言だった。
恐らく、俺達の学校の体育館くらいの大きさはあるだろう。
次に気づいたのはこの場が異様に明るいということだ。
資料でしか見たことないような大きなシャンデリアが何個も設置してあった。
だが、それらの装飾品や広さよりも俺の目を惹く存在があった。
それはこの部屋の一番奥にある豪華な椅子。
その椅子に座っているのは圧倒的な存在感を放つ男性。
(誰だ?)
チラリとクラスメイトの方を見てみると、まだ誰も気づいている様子はない。
皆この部屋をキョロキョロと見渡して「へー」だの「すごい」だの言っている。
豪華な装飾品などに目を奪われて心ここにあらず、と言った感じだ。
(・・・なんか嫌な予感するな)
直感だが、用心はしておいた方がいいだろう。
そう思いながら、金髪の少女に付いていく。
やがて、一向は俺が見ていた椅子の前の階段にたどり着き、
「お父様、勇者の皆様を連れて参りました」
「ごくろう、下がってよいぞアリアーゼ」
お父様・・・つまり目の前のアリアーゼという名前の少女はこの男性と家族という関係なのだろう。
「急な召喚をすまぬな勇者達よ。 我が名はレイドス・ラ・クリスタ三十四世、この国の王だ」
「王様? おい、その王様とやらが俺たちに一体何のようだ?」
男子生徒の誰かがそう喚き散らすと、王様の近くにいた大臣っぽい人が反応した。
「国王様に対してで無礼だぞ小憎! 身の程を弁えろ!!」
その気迫のある一喝を受けた男子生徒はこうなると思っていなかったのか固まった。
そんな中、
「すみません、国王様。 質問をよろしいでしょうか?」
そう手を挙げて一人の男子生徒が質問した。
声を聞いただけでわかる、これはクラスの中心人物である林田光だ。
「うむ、構わんぞ」
飽くまで上から目線で王様は応える。
その言葉を聞いた林田が少し戸惑いつつ、質問する。
「えっと、聞きたいことは山程ありますが、まず、ここはどこですか?」
「ここは【クリスタ王国】だ。 他には?」
【クリスタ王国】聞いたことのない国の名だ。
どうやらここは日本ではないらしい。
その事に気づいた他のクラスメイト達(主に女子)が明らかに絶望の表情を浮かべる中、林田は質問を続ける。
「先程から僕達を勇者と呼んでいますがどういう意味でしょうか?」
「言葉通りの意味だ。 異世界から来た者達は全員が特別な力を持っている、そのため我々は異世界人を勇者と呼ぶ」
その言葉を聞いたオタク男子やヤンキー系男子がガッツポーズしている。
(何でガッツポーズしてんだよ・・・いきなり変な場所に連れてこられて怖くないのか?)
俺がそう思っていると林田がさらに質問する。
「なんで僕たちを召喚したのですか?」
「それについては今のこの世界の情勢を語らなければならないので少し長くなる。 まず、ーーー」
王様の話を省略すると、
まず、この世界には大きく分けて三種族『魔族』、『亜人族』、『人族』がいる。
この世界の名を『魔法界』と言い、なんとこの世界の住人は赤子から老人まで全ての人が魔法を持っているらしい。
ここでは魔法の強さで地位などが与えられているという。
ちなみに、剣などの武器は魔法の前では役に立たないうえに魔法でプロ並の腕が使えるので鍛えている人は全くいないらしい。
『人族』には帝国と王国の二種類が存在し、帝国は優秀さ、王国は血筋で王が決められている。
現在、人族は魔族の脅威におびやかされており、王国の対抗策として白羽の矢が立ったのが俺達異世界人。
王族の血筋の中で希に召喚魔法が使える者がいるらしく、過去に一度だけその力を使って勇者を呼び『人族』を救ってもらったことがあるらしい。
今回は運の良いことに王様の一人娘のアリアーゼ王女が召喚魔法を使えると分かり、早速召喚の準備をし召喚魔法を使った。
その結果現れたのが俺達三十人の学生。
この数は予想していた人数よりも遙かに多かったらしく驚きの結果だそうだ。
三十人も勇者がいれば楽勝だろうからこれからサクッと魔族を倒してきてくれないか、と、まあこんな具合だ。
「僕たちに王様はその魔族というのを僕たちだけで倒して欲しいということでしょうか?」
王様の話が終わり、林田が真っ先に核心をつく。
その言葉に王様は苦々しい表情になりながら、
「うむ。 急な召喚で悪いが頼めるか?」
(頼めるか? じゃねえよ、都合良すぎるだろう)
敵の戦力は未知数、自分達は戦い方も知らない、自分達がどれだけの力をもっているのかも分からない。
不安要素はまだまだあるが、言い出したらキリがない。
いくらご都合主義が服を着て歩いていると言っても過言ではない林田でもこの程度は考えられるだろう。
流石に断るだろうと思ってもう一度林田を見る。
王様のその言葉を聞いた林田は、ゆっくりと頷くと、
「任せてください!! 魔族なんて僕たちで倒してやりますよ! なあ、皆?」
そう豪語しやがった。
(はあ!?)
俺は思わず声を上げそうになった。
林田が無責任にそう言ったのも驚いたが、他の奴までそれに乗っかりだしたのだ。
「ああ、困っている人を助けるってのは当たり前だぜ!」
(お前そんなこと考えてないだろ!?)
クラスで林田とよく行動を共にしている脳筋系イケメンの三井俊之がそう言い、
「えっ、えーと。 とにかく頑張ります!」
(え、桃木さんそんなキャラだったの?)
学校でも可愛いと評判のおとなしい系女子である桃木裕美も賛同する。
クラスの中心人物達がやる気を見せたことによって最初は戸惑っていたクラスの皆もやる気を見せている。
なんだか嫌な流れになってきた。
このままでは全員が賛成してしまうのではと俺が危機感を抱き始めていると、
「ん? どうしたんだい真波、正次郎?」
林田が怪訝な声をあげた。
どうやら林田の取り巻きの残り二人がまだ何の反応も示していないらしい。
残りの二人とは俺は結構親交があった。
天河真波、学校では二年にして桃木さんと並び一、二を争う美少女であり、桃木さんとは違い活発。
神童正次郎、学年トップの秀才でエリート眼鏡のイケメン。
その二人とは経緯は違えど、ある事件があってから親しくなった。
その二人の内、神童の方が、
「王様、日本に帰ることはできないでしょうか?」
と、冷静にそう言った。
周りの様子がおかしすぎて神童の口から出たその言葉が一瞬理解できなかったが、
(・・・はっ! 流石は神童、俺はそれが聞きたかったんだ!)
即座に気を取り直し、俺は王様の反応に気を配る。
だが、もちろんその意見に対し、異議を唱えるバカが出てくる。
「何を言ってるんだ正次郎、困っている人を見捨てる気かい!?」
(お前は黙ってろ!!)
林田の抗議をするような声を聞き、思わずイラついてしまう。
「光君、落ち着いて考えるんだ」
だが、そんな俺とは違い、神童は表情一つ変えずにクイッと眼鏡の位置を調整してから林田を諭す。
「・・・何をだい?」
その神童の言葉に少し冷静さを取り戻した林田が再度問う。
「今の僕たちの状況だよ」
随分と漠然とした問いだ。
こんな質問をすれば大抵の馬鹿は異世界に来ているだけだと答えるだろう。
だが、少しでも考える頭を持っている奴なら今の自分の危機的な状況に気づける問いだ。
(なるほど、流石神童だな)
質問の意図を理解した俺は心の中で賞賛を送る。
今の状況、おそらく神童は自分たちが全く知らない世界に“いきなり”来てしまったことを言っているのだろう。
問いの意味を理解できているかと思って林田の方を見てみると、
林田は首を傾げながら地面を指さしている。
どうやら、王宮にいるということをアピールしたいらしい。
・・・林田は普段はバカでもないし、むしろ頭はいい方のはずだが、急な事態に脳が混乱してまともな思考ができてないのだろう。
(それでもちょっとは考えろよ・・・)
林田の間抜けな回答に思わず呆れてしまう。
「この世界の人たちのこともそうだが、自分たちの家族や友人はどうしてるんだろうね?」
だが、神童はまるでそれを予想していたのか淡々とそう答える。
「「「「「あっ!!」」」」」
林田だけではなく、浮かれていたクラスメイト達もその言葉を聞いて全員が全員声を上げている。
様子を見る限りクラスのほぼ全員が浮かれていて気づいていなかったようだ。
・・・いや、多すぎだろ。
声を聞いた感じほぼじゃなくて完璧に全員だったぞ今の。
慌てて林田は振り返り、王様に問い質す。
「王様、帰る方法はあるんですか!?」
その質問が出た途端に王様達の顔が一瞬、ほんの一瞬だけ歪んだ。
だが、次の瞬間には何事もなかったかのようにしている。
他の皆は気づかなかったようだが、俺はそれを見逃さなかった。
(何だ? 呼び出せたんだから返す方法もあるだろうに)
俺がそう怪訝に思っていると、王様が口を開いた。
「すまんがそちらの世界にお主たちを返す方法についての詳細はわかっていない」
「「「「「なっ!!」」」」」
林田達が動揺を明確に表し、俺も一瞬動揺しかけたが、言葉の重要な部分に気づき、すぐに冷静になる。
誰も聞かないなら俺が聞こうと思った矢先、
「詳細は、とはどういうことでしょうか?」
神童はやはりそこに気づいていた。
その質問を聞いて一部の連中は帰る方法があるかもしれない、と期待を抱き、固唾を飲んで王様の方を見る。
「一部の伝承ではどこかの王族が送還魔法を持っていると言われております 」
神童の質問に対し、今度は王女様が答えた。
詳細ではないが帰れる方法が存在するとわかったクラスメイト達に希望が宿る。
(成程、人が召喚で何かが送還。 まあ、人と対極とも言える魔族とやらが妥当かな?)
そう考えていると、まるで俺の思考を見透かしているかのように神童が意見を述べる。
「人族が召喚魔法ということは、魔族の王族が送還魔法を持っている可能性が高いですね」
「そうか! なら、魔族を倒せばいいんだな!!」
(・・・アホか、何で持ってる奴等を倒しちゃうんだよ)
楽観的過ぎる三井に呆れていると、王様がこれ幸いとばかりに、
「うむ、是非ともよろしく頼む」
と、偉そうに言ってきた。
その言葉を聞いた林田は任せてくださいと言わんばかりに頷き、神童の方へ向き直る。
「正次郎、帰れる方法は今はないけど・・・あるかもしれないといのは分かったんだ。 これでもまだ戦う気はないのかい?」
自分が気づいた訳でもないのに何故か林田は諭すように神童にそう言う。
一瞬俺の方を見た神童はなにかを考え込むような仕草をしてから、
「・・・まあ、この状況なら仕方ないね」
と言って参加の意思を表明してしまった。
「・・・皆がやるって言うんなら私も頑張ってみようかなぁ」
林田に続いてこれまで黙って聞いていた天河さんも参加の意思を表明する。
・・・何故か神童同様にその時に一瞬こちらを見たのが気になったが今はさして問題じゃない。
(現状じゃ何もできることはないし、今は黙って従うか)
今の状況では確かに参加以外の選択肢はないと判断し、俺も異議は唱えない。
「全員が参加してくれるということでよいか?」
しばらく黙っていた王様は俺たちの意見が決まったタイミングを見計らってそう声を掛けてきた。
「はい!」
「おお、そうか! ならば早速だがお主達一人一人の能力を確認してみてくれ」
元気良く返事した林田に王様は嬉しそうに頷くと、中々に重要なことを言ってきた。
(・・・能力? そんなもんどうやって確認しろと?)
「自分の能力をですか? 一体ーーー「知ってるぜ! “ステータスオープン”とかって言えばいいんだろ!?」ーーーそうなのかい?」
俺と同じことを考えたらしい林田が王様に質問しようとした瞬間、その声に被せて自信満々にそう言ってきた奴がいた。
さっきからずっとテンションの高かったオタクと呼ばれている男子の一人だ。
林田は最初自分が話しているのを邪魔されたのが気に食わなかったのか口を挟んだ奴の方を向いたが、ここには他の人も大勢いることを思い出したらしく、仕方なくと言った感じで話を合わせていた。
(おーい、本性でそうになってるぞー笑)
俺は林田が拳を握りしめているのを見て思わず含み笑いしながら内心でそうからかう。
「う、うむ? そちらの者が何を言っているのかわからぬが、似たようなものだろう『アビリティ』と言えば自分の能力が表示される」
俺がそんなことをしていると、王様がオタク男子の言葉に困惑しながらそう説明してくれた。
それを聞いたクラスメイトの視線が発言したオタク男子へと集まる。
あそこまで自信満々に言っていた分、間違っていたと知った今あいつの考えていることは“穴があったら入りたい”だろうな。
「分かりました、早速やってみます『アビリティ』!」
そんなオタク男子のことを気にしてか気にせずにかは分からないが林田が声を挙げて早速実行する。
いや、あいつの性格からして確実に後者だな、ただ自分が早く知りたかっただけだろう。
そんな林田の目の前に何かが表示される。
「「「「「『アビリティ』!!」」」」」
それを見た他のクラスメイト達も一斉にそう唱える。
俺もそれに倣い「アビリティ」と唱える。
すると、目の前に空間ウィンドウのようなものが表示され、こう書かれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 馬場連
Lv 1
HP 100/100(?)
MP 300/300
ATK 50(?)
DEF 50(?)
AGL 50(?)
魔法 なし
称号 勇者・変幻自在・歴戦の猛者・魔法の使えない者
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ん?)
その自分の能力を見た俺は思わず疑問を抱かずにはいられなかった。
(・・・あれ、おかしくないか?)
俺の記憶が正しければ確かこの世界って魔法は持っているのが当たり前なんじゃなかったっけ。
そう思って周りを見てみると、
「見ろ、俺強化魔法だってよ!」
「私、支援魔法だったわ!」
「俺は創造魔法だ!」
と、口々に自分の魔法について語っている。
(嘘・・・だろ? 俺魔法がないんですけど)
そう思っていると、
「うむ、基本は《創造》、《強化》、《属性》、《支援》、《武闘》、《操作》の六大魔法じゃろうが、中には《オリジナル》の魔法を持っている者もおるがこの中におるかの?」
その王様の言葉を聞いたクラス全員の中で林田が手をあげる。
「あの、僕《オリジナル魔法》でした!」
その言葉を聞いたお偉方達が一気に沸き上がる。
「おお、今代の勇者にも《オリジナル魔法》の使い手が!」
「これで魔族にも勝ったも同然だ!」
「ありがたや、ありがたや」
そんな騒がしいお偉方達を見た王様は息を軽く吸い、
「静粛にせい!」
そう一喝した。
その声を聞いたお偉方達が慌てて姿勢を正す。
それを見た王様は不満ありげにしながらもそれ以上追求はしなかった。
「他の者達の魔法も教えてくれるかの?」
王様がそう言い、皆が魔法を教えていく。
結果、
《操作魔法》四人、
《属性魔法》七人
《支援魔法》五人
《強化魔法》五人
《武闘魔法》三人
《創造魔法》四人だった。
「お主はどうじゃ?」
何も答えずにぼーっとしていると、王様が俺にそう聞いてくる。
それを聞いた俺はハッと気を取り直し、答える。
「いや、申し訳ありません。 俺、魔法ないみたいなんです」
俺が正直にそう答えると、
「「「「「はあ!?」」」」」
見事なまでにほとんどの人の声がハモった。