2章 異世界転生とスレイクス収容所②
輸送車から降りると、雪深い土地に大きな塀に囲まれた白い建物が見えた。建物の大きさはそこまで大きいとは感じられず粗末に建てられた印象を受けた。それより圧巻されたのは大きな塀だ。建物を取り囲むかの如く張り巡らされた塀は幾重にも連なり外部からの接触や内部からの逃走者がでないように仕掛けられた様に感じられる。まるで刑務所の様だ。子供たちは全員その施設へ歩かされ建物の中へと入っていった。
何もない通路が続き、やがて大きな扉が見えてきた。その扉の先にはガランとした大きな部屋に何人かの大人が立っていた。子供たちが全員中へ入ったのを確認すると、
「全員いるな、1人ずつ前にでろ。」
教官らしき大人が叫んだ。その声に子供たちは反応したが、怯えて前に出る人は誰1人としていない。もちろん前に出れる者はいないだろたう。
その教官の手には熱く熱せられた赤い焼印が握られている。
「グズグズするな!」
大きな怒鳴り声が再び室内に響き渡る。
· ·アレ· · ·されるんだよな· · ·
· · ·痛いどころじゃねぇよな· · ·夢なら早く覚めてくれよ· · ·!
全員やるからには最初に行っても最後に行っても変わらないのは知っているが、流石に行くのを躊躇ってしまう。というか躊躇わない方がおかしいだろう。
あぁー、もう!
クソッ!!
どうにでもなれと思い、1歩前に踏み出した。それと同時にもう1人前へとでた子供がいた。彼はすっと手を伸ばし、「俺が最初にやります。」とハッキリとした口調で喋った。そう、彼は輸送車の中で唯一話しかけてくれた少年、ルートだ。
「ほう、2人も最初の志願者か現れるとは。いいだう。2人とも前にこい。お前は名は?」
「ルートと申します。」
「· · ·ゆきです。」
俺たちは名前を言い、ルートは前へと向かって歩いていった。俺もそれを見てとっさに前へと踏み出した。
「ルートとゆきか· · ·覚えておこう。では、ルート、ゆき手を出せ。そして私と同じように唱えるのだ。」
『このスレイクスの地と聖教皇を守る騎士として我が身を捧げることを永遠に誓わん!』
手を出し俺達も言葉を反復する。
『『このスレイクスの地と聖教皇を守る騎士として我が身を捧げることを永遠に誓わん!』』
台詞を言い終わると、手の甲に焼印が押された。
ジュっという音とともに少し焦げたようななんとも言えない匂いが漂う。
痛い!!
熱い!!!
痛い痛い痛い熱い熱い熱い· · ·!!!
あまりの激痛に悲鳴を上げたい。本当に俺がこいつらの歳だったら泣き喚いていただろう。だが今はその気持ちを必死に抑え耐えた。
ルートもかなり苦痛の表情を浮かべたが唇をぎゅっと噛んで耐えているようだ。
「お前達は列に戻れ。今からは時間が惜しい。端から順に行う。」
指さされた先の女の子はその瞬間恐怖に満ちた表情を浮かべた。教官が近づく度じりじりと後退りをしている。
「手を出せ。」
少女の目からぽろぽろと大粒の涙が溢れる。
「や· · ·やめ· · · · ·」
シンと静まり返った部屋に小さく呟く声が聞こえる。
「い、いやぁぁぁぁあ!!!!」
教官が掴もうとしていた手を振り切り少女は扉に向かって一目散に走っていった。もちろん出られるわけない。その時、真っ赤な鮮血が空を舞った。
どさり。
少女は倒れた。ピクピクと痙攣していたが途端に痙攣も弱まり息を引き取った。
これを見て、泣き出す者や狂った様に叫び出す者が次々と現れた。
それを容赦なく切り捨てる音。俺の目の前が真っ赤に染まっていく。狂いそうな血の匂い。年端も行かない子供が耐えれるようなものではない。あまりの出来事に理解が追いつかない。目の前で起きていることを何もせずただ見るしかできなかった。
7月9日
(7月11日→主人公の心の声を丸括弧()で表していましたが、使い方を修正しました。)