プロローグ[均衡を乱す者]
人間と精霊が共に生きる世界【 ベルツァニア】
人間達はあらゆる精霊のチカラを借り、生きていた。
美しい自然と豊かな作物で人間は暮していた。
その世界の均衡を保つ使命を持つのは四人の者達。
自由自在に精霊を操る能力を持つ撰ばれし者。
その者達は、こう呼ばれた。
『灰色の精霊』
闇でも無く、光でも無い。
この世界の均衡を保つために生きる者達。
これは、そんな『灰色の精霊』の物語である。
東の国 【ザスチェル】 王城
一人の女性が長い廊下を歩いて行く。
ピシッとした白い服に銀縁眼鏡、ひっつめにした髪。
廊下の突き当たりにある扉をノックする。謁見の間と呼ばれる部屋だ。
「入れ」
中から、重々しい声が掛かる。
女性は、黙って扉を開けた。
赤い絨毯の上を歩き、王座の前で一礼する。
「ご報告致します。準備が整いました。極秘任務の者も西の国【アドラント】に潜り込めたようです。」
「そうか。」
王座に座る年老いた人物は満足げな笑みを浮かべた。
「引き続き極秘任務の者からの連絡を待て。」
「了解しました。」
女性はまた一礼すると、踵を返して出て行った。
「・・・・・・・後もう少しだ。」
年老いた人物は、ククッと笑った。
「後少しでこの世界は儂の物になる。」