- 蜜月 - 「終末のチョコレート」
- 蜜月 - 「終末のチョコレート」
- あれから数ヶ月
「昼姉、ゆー君からお手紙」
「ほう? 少年からか。成る程音信不通ではあったものの、この地球上のどこかで必ず元気でやっているとは思っていたが。やはり、私の偉大なるおねーさまレーダーというやつも、あながち馬鹿には出来なかった。そうだろ? ヨルシー」
「それより、見て。この写真」
「! やれやれ、百聞は一見にしかず、か。こんなの、手紙を読むまでも無いではないか。…メルヒェンだな。うむ。師匠の独り勝ち。悔しいが、相手があの師匠ならば仕方がないと思えてしまうのは、やはり修行も、そして何もかもが足りていなかったという、確固たる証拠なのだろうなぁ…やれやれ。元気でやれよ、二人とも」
◆ ◆ ◆
「佐東さん! 大変、大変ですよ、佐東さん! 昨日、家のポストに朝鳥君からこんなお手紙が!」
「ああ、うん。うちにも届いてたよ、それ。でもさぁ、こんなもの見せ付けられて、僕達どーすりゃいいのって感じだよね?」
「元気そうで良かったです。でもでも、まさかあのお二人が突然行方不明になってしまうなんて、最初は凄く心配したし驚きましたから」
「そう? 別にいいんじゃないの? それにさ、涼も見たでしょ、あの写真。だってさぁ、僕、ユータが《笑ってる顔》なんて初めて見たよ。そりゃ、妹のヨルシーちゃんも中々笑わない子だったけどさ、実際のところ、ユータのソレなんてもっと酷いんだから。長年一緒にいた癖にさ、僕ですら見たことなかったレベルでね。…まったく、世話の焼ける幼馴染だよね、二人ともさ。本当、ちょっとは僕にも感謝してほしいくらいだよ、実際のところ。長年三人一緒にいたんだ。気がつかないわけないのにね。二人とも不器用だからさ」
本当に、本当に、ほんんんとうに、手の掛かる口説き方もあったもんだよ、ね? なうちゃん。まったく、甘ったるくて見てるこっちが胸焼けしそうだ。おかげさまで、暫く甘いものは食べられそうにないよ。本当、ご馳走様。
◇
前略
新秋快適の候、いよいよご多忙のほどお喜び申し上げます。
あー…やめやめ。やっぱ堅苦しい書き方なんてかったるくてやってられねーぜ。
つーわけで、改めて。よう、お前ら、元気してたか?
オレはともかくとして、今鹿は死ぬほど元気だ。それこそ、毎晩……って、オレは何言ってんだ。まぁ、あれだ。何が言いたいかっていうとだな、どーやら、アイツはオレが思っていた以上に、いや、それこそ人並みにちゃんと女の子女の子してたんだなって話さ。すいーつ(笑)だなんて、馬鹿にできねーなって話さ。
ウオッホん。で、肝心の本題はここからだ。
今、オレはハネムーンと称して奴に世界中を連れまわされてる。それが何を意味するのかは、極力考えないようにしちゃいるが、一応、念のために、オレがまだ生きてるって証にこの手紙を認めた次第だ。ぶっちゃけ、生きて帰れるかも甚だ疑問だし、いつ帰ってこれるかも皆目見当もつかない。つまりは、そんなハチャメチャな二人旅。
だが、まぁ、うん。悪くはない。
なんつーか、何だろう。とにかくだ、オレ達はいつか必ず戻る。だからよ、お前達も元気でやってくれ。そういや今、日本の季節は秋だろ? 食欲の秋だ。うん。
甘いもん、たらふく食べてくれよ。幸せって、つまりそーいう事なんだろうなと、最近オレは思っている。割と、真面目に。
ま、オレが言いたいのはそれだけだ。それじゃ、またいつか。
草々
追伸
--- 二人の関係が、永遠にすいーつ(笑)であり続ける事を願って ---
《甘》