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役に立たない背中

作者: 進藤奈都子

役に立たない背中


「息子の人生を、瑣末な家事やら育児やらで煩わせないでやってほしい。息子の社会人としての人生を邪魔しないでくれないか。」

前夫の父親(当時29歳の息子ちゃんダイスキ!)から言われた言葉。


私が、家事とか将来子どもが授かったとしたら育児とかは、二人で協力してやりたい、と言ったときのこと。


さすがに同席していた前夫の姉と母の女性陣はカチンと来たらしく、

「瑣末ってなに⁉︎家事も育児も、すごく大変なんだよ!」

「男にだけ人生があるっていうの⁉︎」

と猛抗議。

思いもよらない?非難を受けたダメダメお父様は、

「いや、女性は偉いよ。子ども産むんだもん。男は逆立ちしたってできないからね。」

とオロオロしながら意味不明なフォローをするも、

「それじゃ、女の価値は出産だけってこと⁉︎」

とお姉さんにまた抗議されて、しどろもどろ。


ハイ、バカですね。

こういう人は、根本的に「男が上、女が下。女は子どもを産む機械ぐらいのもの」と考えているので、自分がどうして女性から叱られるのか、ぜんぜん理解できない。

息子の嫁なんて、もはや人間じゃないと認識していたんだろう。


そんなんだったので、私はこの父親が大っ嫌いだった。憎んでいたと言ってもいい。

そのことが前夫は気に入らなかったらしく、

「君は、俺の尊敬する父親のことを嫌ってるんだろう。好きになる努力もしないで批判ばかりして、君こそひどい。夫の親は大事にするのが当然なのに。」

とかよく恨み言を言われた。


あんたの父親は、私だけじゃなく女性をバカにしている。だから好きになれない。

何度もそう伝えたけれど、前夫には理解できなかったようだ。

「親父は、⚫︎⚫︎会社(有名大企業)で、重役手前までいって、年収は約2000万円だ。それだけの実績がある人間なのに、なんで尊敬できないんだ。そこまで立派な人間なんだから、女性はもちろん、男でも稼いでない人間がバカに見えて当然だ。」

と要約するとそういう内容のことを繰り返し繰り返し言ってきて、そのたび私は失望し、そのうち絶望に変わり、絶望はどんどん深まり、アルコール依存症になり、うつ病を発症してしまった。

父親のどこが駄目なのかを理解できないということは、結局前夫も同じ考え方なんだと気がついたからだ。


今思うと、どうしてあんな男が良かったのか、理解できない。若い自分は、人間を見る目もなく、愚かだったとしか言いようがない。

ただ、当時の男性の多くは、多かれ少なかれ男尊女卑の思想を持っていたように思う。友人たちも「夫が、彼氏がわがままだ」「浮気の可能性を匂わせて、自分の言い分を通そうとする」「自分から連絡してこないくせに、こちらから連絡しないと怒る」等々、今にして思えば、そんな男即刻捨てろ!と怒鳴りたくなるような悩みを抱え、どうしたら彼が自分を選んでくれるのか、真剣に悩み、努力をしていた。

女性向け雑誌も、「わがままなカレのハートを射止めるには?」みたいな特集がならび、「男性は、立ててほしくて、甘やかしてほしい、矛盾した生き物。母のような愛情をもって接するのがベスト」などとほざいていた。


私はよく疑問を感じていた。

女性誌には、男心を理解するHOW TOが毎月のように掲載されて、女は男心を勉強すべき!を推奨しているのに対し、男性向け雑誌は、車、服、女性の裸ばっかり。女心をつかむには?的な特集はほとんどなくて、あるとすれば「どうしたらヤレるか?」ばかり。

これって、女が一方的に男の機嫌を取れってことか⁈それじゃあまりに女はつらいじゃないか、と。


そういう世の中だったんだよな、と思う。

ずっと景気は上向き、男で、毎日出勤して言われたことさえやっていれば給料はもらえて、毎年年収も上がって、ボーナスもたんまり。

年収が人間の価値を決める世界だから、男どもがみんな「俺って、デキる男。偉いんだー!勝手なことしても許されるんだー!」と甚だしく勘違いし、謙虚さを忘れて傲慢に振舞っていた時代。


今、結婚しない人が増えているが、そんなの当然だとつくづく思う。

自分で働いて、自分を大切に暮らしていく方が、ヘンな男と結婚して人生棒に振るよりよっぽど幸せである。

夫に絶望して、不満ばかりの毎日、そんな精神状態で育児でもしようもんなら、虐待が起きてもぜんぜん不思議じゃない。

つくづく、前夫との間に子どもがいなくて良かったと、今もしょっちゅう思う。


ファザコン父子に振り回された私ですが、その後ステキな出会いがあって結婚。今は二児の母になり、仕事をしながら、うつ病の治療もしながら、家族で楽しく暮らしています。

離婚はエネルギーが必要でしたが、あの時がんばって、本当に良かったです。


余談ですが、風の噂で、前夫は最近再婚し、もうすぐ子どもが産まれるとか。

某SNSで、

「もうすぐパパ、育児と会社経営(結婚していたときに私と立ち上げた会社です)の両立がんばって!」

との誰かのコメントに対し、

「子どもは生まれますが、自分はまあ変わらず、関東と関西と九州を行ったり来たりの出張生活をします。やっぱり男は仕事が大事ですし、子どもに父親の働く背中を見せなくては。」

とか浅はかなこと書いていて、ああコイツ、今の時代にまだこんなこと言って、なーんもわかってない。縁切れて良かったー!と実感した次第です!

以前ファザコン父親が、「男親は、背中を見せるのが仕事」とか言って、前夫の母に「育児中に男親の背中なんて、なんの役にも立たない。必要なのは手だね!」とばっさり斬られたことを思い出し、笑ってしまいました。


読んでくださってありがとうございました

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