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Ⅲ
* * *
井戸というのは、地下水をくみ上げる為の採水施設であり
「何処まで落ちれば気が済むの・・・」
底なしではない筈なのだ。
うう・・・此れは少し気持ち悪い。
手入れがされていないところに頭から突っ込んでいるのだ。
・・・もう無理だ、頭に血が昇って意識がクラクラする。
私が生き残れる蓋然性は低い。
せめて楽に逝こうでは無いか・・・。
* * *
目が覚めたら、暖かい部屋、柔らかいソファで安らかな睡眠を得ていた。
どうやら私は死ななかったらしい。
周りを見回して、此処が誰かの仕事部屋である事を確認する。
「・・・・・・」
物事を客観的に捉え、冷静に判断することが生き残る術と何かの本に書いてあった。
冷静になれ、冷静になれ、と自分に暗示をかける。
明らかにおかしい、当然の疑問が二つある。
一つは井戸に落ちた筈の私が此処に居るか、ということ。
もう一つは。
「お前、何者だ」
何故、刀の切っ先を私の喉笛に向ける男が居るか、ということ。
* * *