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 * * *


「じゃあ、また明日。」

友達の言葉に明日、と軽く返して家までの長くもなく短くもない道をただ歩く。

ハァ、と一つ小さな溜息をつく。

日常に不満はない。

生活に不便もなく、友達も其れなり、勉強も其れなりに出来るのだから十分だと思う。

でも、何か物足りない。

刺激が欲しいというか、其れも違うような。

多分、自分が〝平凡〟だからただの日常とかが嫌いなのかな。

そういうものだと、勝手解釈をして考えるのを放棄する。

そういえば、読み途中の本に太宰治の人間失格がある。

太宰治の自伝ともいわれている遺作、人間失格は共感出来る部分が多数あった。

特に、と面白かった部分を思い出している最中に視界を黒猫が横切った。

黒猫は特別珍しくない。

にも関わらず何故か黒猫に注目した。

「おいで」

手招きすると人慣れしているのかニャンと鳴いて近くに来る。

真っ黒な毛を眺めていると首に巻かれた革に気づいた。

首輪だろうか。

ごめんね、と前足を持ち上げると革に英単語が彫られている。

【refuse】

英語は特別得意じゃないが特別苦手でもない私の大好きな〝普通〟である。

確か拒絶する、という意味と(ごみ)という意味があったような。

猫にそんな名前をつけるだろうか。

其の人はきっと普通でないのだろう。

猫がかわいそうだ。

黒猫がニャア、とまた鳴いて私の手から逃れる。

「あ、何処行くの」

早く家に帰ったからといって課題を早く終わらせろと親に口うるさくいわれるくらいだから、と黒猫の後を追う。

ニャア、と私がついてきているのか確認するかのように黒猫は時々振り返り鳴く。

其のまま、暫時追いかけていたら見知らぬ路地に出る。

あれ、私は何処をどう進んで此処まで来たのか・・・。

黒猫にばかり注目して全然周りを見ていなかった。

黒猫は何処だ、とここら辺に居た筈の黒猫を何故か其処に存在する古い井戸に飛び込むところだった。

「危なっ」

手を伸ばしたが、間に合わず後ろから誰かに背中をおされたような感じがした後、抵抗虚しく

「嘘だぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

落ちた。


 * * *

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