ⅩⅥ
* * *
陛下が珈琲を飲むのだから豆から挽くのだと思って居たがそんな事はしないらしい。意外と哀しくなる陛下事情。
「陛下。珈琲淹れてきてあげましたから味わって飲んでくださいよ」
「上からだな」
「陛下の真似してみました」
いちいち嫌味が飛び交う会話。
砂糖も牛乳も何処にあるか判らなかったのでブラックだ。
もともとブラック派だから私は良いが、陛下があの顔で甘党だったら笑ってやる。
陛下のもとにカップを置くと口に含んだ陛下が私の腕を引っ張って思わず陛下の胸に倒れこんだ私の唇に流し込んできた。
「・・・ん」
「毒はなしだな。協力感謝するぞ」
普通に毒入りかと聞けば良いだろう。
私が本当に暗殺者なら毒入りかと聞かれてもいいえっていうだろうけど。
私のファーストキス!なんていえない。
先に口づけたのは私だから。
「陛下。女性の唇奪うのはいけません」
「莫迦女。我の唇を奪うとは随分な事だな」
「女性は良いんですー」
「女が何処に居る」
「目の前に居るでしょう!其れに莫迦女って云いましたよね!」
「言葉のあやだ。目の前か、格下しかいないな」
「だから格下ってやめてくださいよ」
「では売春婦。」
「喧嘩売ってます!?買いますけど」
「高いぞ」
「借金しますよ!」
「五月蠅いな」
「貴方の所為です!」
傍から訊けばどうなんだという会話。
だが此処には私と陛下以外誰も居ない。
人は何処に居るんだろう。
あの廊下の向こう?
「陛下。誰か居ないの?」
「我が居る」
「そういう意味じゃなくて。此の城には他に誰かいないのかと」
「此処は王のみが許される空間だ。
お前の行動範囲外の廊下の向こうに上級管理官が居るが何故だ?」
「なんとなくです」
矢張り莫迦だと嗤われる。
人を莫迦莫迦云ってると友達なくすからね。
「そういえば陛下、部屋の窓から見えた景色が綺麗だったのだけど」
「外には行かせんぞ」
「何故」
「此処に残ると云った以上、お前が逃げるのを我は全力で阻止するから安心しろ」
何を何処をどう安心すれば良いの。
「じゃあ、一緒に外行きましょうよ。気分転換に」
「・・・今ある仕事にひと段落ついたらな」
そうだ、此の人は顔が良くても口が悪くても悪趣味でも一応陛下なのだ。
「どんな仕事?」
私に手伝えるものだったら手伝いたい。流石に衣食住支えられて居るのは申し訳ないから。
「農民の税問題と空気汚染について改善を求める者達の処遇および対応についてだ」
「うわぁ」
無理無理。そういうの無理だ。
「お利口にしておけ。書物は一生じゃ読み切れんほどあるからな」
「・・・Yes, Your Majesty.」
お利口にってまるで子供に対してじゃない。
「お前に仕事を与えよう。一日に何度か我に珈琲を運んで来い」
カフェイン中毒か。
「Yes, Your Majesty.」
綺麗な蒼い瞳が私を睨んで思わず目をそらす。
「良いな」
「判りましたよ」
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