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・・・矢張り、私が行動出来る範囲が少なすぎる気がする。
確かに、廊下と一言で云っても此の廊下には何十もの広すぎる部屋が並んで居る。
だが、そういう問題では無い。
緑も見れない、人も居ない閉ざされた世界。
文句は言えない。
いきなりやってきた私を此処までしてくれたのは陛下だ。
どうしてだろう、こういうとき普通なら親は心配してないかなとか友達は元気かなとか思うのに。
何も思わないや。
家族や友人に対する情がないみたいに。
いや、そんな筈ないのに。
普通に、私はそういう感情を持って親に感謝して友達と喧嘩しながらも仲良くして。
・・・疲れた。
よく判らないけれど、多分私は突然いろいろありすぎて焦っているのだ。
一度、自分に起きたこと、判っている事を書き出して整理でもしてみようか。
そしたら、少しは楽になるかもしれない。
そうと決まれば陛下の処に紙とペンを借りに行こう。
もらった部屋には、ベッドと誰のか判らない癖に妙にサイズがぴったりの豪華な服しかないのだ。
4つ隣の部屋、と云ったがそんな説明なくとも判るほど他の部屋の扉とは違うオーラが。
お、怒っていらっしゃるのかな・・・?
きっと仕事がうまく云って居ないんだろう。
国の王ともなれば大変だ、陛下。
こんな時にあんまり大事な用なく入っていいかは判らないけれど矢張り頭の中を整理したい気持ちもある。
二回ほどコンコンとノックをするととっとと用件を済ませろ、と矢張り怒っているのだろう怒気を含めた声で告げる。
失礼します、と入ると床に紙が広がって居た。
「何此れ」
一枚を拾ってみてみるとわんやかんや訳のわからない事を並べた文字。
よ、読めない・・・。
英語も日本語も通じたから言語は統一されてると思ったけれど、違ったのか。
いや、若しかしたら地球のギリシャ語とか地方の文字とか私が知らないだけもあるかもしれない。
が、さっぱり読めない事に変わりはない。
拾える分だけの紙を拾った後、陛下の居るだろう机に近づく。
「陛下ー?」
「・・・なんだ」
ぎろり、と睨まれた。
顔立ちが言い分、睨まれると割増しで怖い。
何をこんなに怒っているのか。
「何か用か」
「用ってほどじゃないんだけど、紙とペンを借りに。」
「本を読むのでは無かったのか」
「頭がこんがらがってるから整理しちゃおうと思いまして」
「ああ。単細胞で頭がでかい割に脳味噌が小さそうなお前からしたら大切な事だろうな」
・・・やつあたり反対。
「何をそんなに怒ってるんです?」
「お前に関係ない」
正論ですけどならやつあたりやめましょうよ。
万年筆らしき筆がガンガンと机に押し付けられ過ぎて先が歪んでいる。
「・・・おせっかいかも、ですけど無理はしない方がいいですよ」
じゃないと、私にやつあたってくるのだから。
「・・・?貴様は変わったことをいう」
人の心配をすることの、何が変わっているのだろう・・・こいつって人?
「王、である以上自分の身を砕き国民の為に尽くすのが当然、そういう考えだ」
「誰が?」
「国が」
国に意志など無い。
ようするに、国民達が望んでいるのだろうか。
身を砕いて働くのが当然、なんて。
若しかしたら、此の人は警戒心が強いからこそ直ぐに人を殺しそうになるのだろうか。
誰からも心配して貰えず、仕事だけをさせられる機械。
王も大変だ。
何かお礼も兼ねてしてあげられないだろうか、と考えるもなにも思いつかない。
結局、弟にしてあげるように頭を撫でてみる。
男性の割に長いまっすぐの藍色に近い蒼の髪が私の手の動きに合わせて揺れる。
「・・・何をしている」
「あの、こうしたら安心するのかなって」
「安心するのか」
「しない?」
「少なくとも・・・不快ではない」
素直でない陛下だ。
まあ、いいや。
此の髪、サラサラで触って居て凄く気持ちいい。
「もう・・・良い。仕事を再開する
紙とペンは其処だ
我も使うから其処で作業しろ」
暫時そうして居たが、もう良いと言われたし声も穏やかになったので素直に手をひく。
其処で作業しろ、といわれても陛下が使って居る机の隅っこを使えという事だろうか。
隅に問題は無い。
別にそんな大層な事をやるわけではないのだから。
問題は、仕事中の陛下の邪魔にならないか。であるのだが
当人はどうやら集中しているらしく此方に見向きもしない。
こうして黙って居れば俳優顔負けの美形なのに。
まあ、こいつの顔が整ってるくせに性格類が残念なのはどうでも良い。
折角借りたのだ。
早く整理して、本を読みに行きたい。
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