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今日という日  作者: 誓約者
人でないもののはなし
29/30

バケモノ?

間章最終回です。


長かった…。

 ―休み時間。

「…」

 なにそれー。きもーい。

 ゴミだな。あいつ。

 だりぃ…。眠い…。

「有稀ちゃん。職員室の倉石が呼んでるよ」

「…うん」

 …あの子無愛想だよね。

「…」


 ―廊下。

 数学の倉石、つかえねー。

 あれ有稀先輩じゃない?

 顔は良いんだけどな。人の心覗き見るってのはな…。

 もしかしたらこれも聞こえてたりして。

 なわけないだろ。もしそうなら化け物だろ。

 っだよなー(笑)。

「失礼します。倉石先生に用件があり参りました」


 ―職員室。

「有稀。その目は止めてくれないか?」

「…?」

「その見透かしてるような目。印象は悪い。面接とか色々な面で不便になるから今のうちに―」

 ―というか、俺が恐い。全部悟ったようで気に食わない。

「―聞いているのか、有稀」

「…はい。気をつけます」

 ―なんで俺がこんな奴の担任なんだ…。

「失礼しました」


 ―廊下。

 きもい。うざい。きえろ。だるい。うざい。めんどう。ねむい。つかえない。しね。きえろ。こわい。ばけもの。よるな。きもい。しね。しね。しね。しね。しね。しね。しね。死ね。しね。しね。死ね。しね。しね。シネ。シネ。死ネ。しね。しね。しね。しね。しね。しね。しね。死ね。しね。しね。死ね。しね。しね。シネ。シネ。死ネ。

「……!」

 もう聞きたくない。聞こえなくていい。

 何回、死ねばいい?

 何回聞こえた言葉に怯えればいい?


 ―神様、なぜ私たちは普通に生まれてこなかったの?


「…普通に生きたい?」


 …ぬいぐるみ?


「僕が君を普通の人に―」


 *


 ―右肩に太い杭を打たれた。

「…っ―!」

 喉奥から絶叫が上り詰める。視界端には、はっきりと赤を滴らせるランスが見え、視界中央の彼女はしたり顔をした。

 木の葉の揺れのみが時間経過を知らせる。激痛は閃光のごとく体中を駆け回った。

 ここで叫んではいけない。奥歯を噛み締め、笑った。

「…!」

 理心の両手がランスを掴む。そのまま、足を乗せるように下半身を捻り上げる。

 ただ速度は蹴撃に近いものである。現に理心の左足はまっすぐ、有稀の顔に向かっている。

 蒼白の有稀は動けない。間もなく理心の右足が有稀の横顔を捉えた。

 感触は僅かに凍ったペットボトルを蹴ったようだった。有稀はぐりんと首を揺らし、顔面から叩きつけられる。

 手ごたえはある。死にはしないが意識は飛んだだろう。

 一瞥して、理心は肺に酸素を取り入れ、むせた。右肩の痛みを再認識し、左手で抑える。次々どろっとした生暖かいモノが指の隙間をこぼれていく。

「…あらら…」

 理心は小さく笑ってみる。ランスはぽろりと落下して地面に突き刺さる。

 はっきりと大きくなる痛みに耐え切れずふらふらとよろめき、背中を大銀杏の木に託した。

 拡大を続ける痛覚。おもわず目を閉じると凍てつくような冷気を感じていた。

「っ…」

 痛みと間違えそうな冷たさに意識がはっきりする。そのまま理心の両目は右の来葉を見た。

 いつもの無感情の思考が読めない顔で、右手を理心の傷口に翳している。驚くことに傷口から流れていた血は凍り、瘡蓋かさぶたのように赤い氷となって傷口を塞いでいる。

 感じた冷気はこの瘡蓋だ。

「…応急処置だ」

 来葉は気づいていたようで、素っ気無く言葉を口にする。

 ただ血が凍っているのではない。いつの間にか痛みも消えている。不思議そうな顔に無感情が呟く。

「溶けたら死ぬほど痛いだろうな」

 そう呟き、来葉は手を退けた。

 傷口を冷やし、神経を麻痺させ、現在一時的な無痛状態を与えているだけだ。

 確かに痛みはないが、肩から先の感覚もほとんどない。実際、指は動くが霜焼けのように指先の感覚が無く、違和感がある。まさに応急処置である。

 冷え切った肩をぽんぽんとさする。冷気は冷静さも取り戻してくれたようで『影』がいないことを気付かせる。

「…魔力で使役されていたらしい」

 大した魔力だ、とため息混じりに来葉は呟いた。

 使役するものがいないため消えてしまったらしい。消えなければ来葉もこちらには来れなかっただろう。

 黒鏡となった窓ガラスを見る。映ったのは右肩に赤黒い花を咲かせる自分の姿だ。

 膝を曲げ、知らぬ間に落としていた一対の双剣を拾う。

「クルハ、有稀を担いでさっさと―」

 途端、緊張が二人を覆った。

「…僕は…―!」

 か細い声がした。

 二人は同時に目を向ける。有稀は白いランスを地面に突き立て、立ち上がっている。

「…」

 隣で来葉が息を吐いた。両手には再び拳銃が顕現する。

「クルハ」

 一言、理心がその拳銃を抑える。

「俺様がなんとかするよ」

「…」

 無言で目のみの会話。時間にして一秒も無く、来葉は拳銃を下ろした。

 理心は余裕を持って、有稀を見る。

 虫の息だった。全身を上下に動かして呼吸をしている。足元を地団太を踏むように覚束おぼつかない。

 ただ彼女の目は生きている。

 本来なら動けないはずだ。頭部へのハイキックで脳に直接ダメージを与えた。さらに地面に叩きつけたとき、胸部の骨を数本折った手ごたえもある。間違いでなければ音も聞いた。

 ただ現実、彼女は未だに挑戦的な目で対峙している。ふらついてはいるが、殺意は決して衰えていない。

 その決意に理心は動かされたのだろう。

「……」

 有稀はランスを引き抜き両手で構える。

 理心も呼応するように双剣を構える。

「…邪魔するなよ…」

 有稀の口が動く。

「何も知らないやつが…」

「じゃあ殺せよ」

 真顔の理心が一言告げる。聞いて彼女は笑ったように見えた。

 瞬間、確かめる間も無く彼女は不意を突くように踏み込んだ。五、六メートルの間合いは瞬時に詰められ、ランスの射程距離に入る。さらに勢いそのまま小さく跳び、飛び掛る形になる。

 有稀は右手にランスを持ち、後方へ右腕を引き絞っていく。空いた左腕は狙いを定めるように理心の頭に伸びている。

 閃光のようだ。理心は右肩の痛みを感じながら双剣を握りなおす。

 そして、右腕は引き絞り終えた。

「…っ!」

 激しい金属音が鳴り響いた。

 彼女が繰り出した一突きは最高速だった。避けようとしても肉は確実にえぐるだろう。認識がそう語る。

 だから理心は避けなかった。

 疾走する白槍を左の剣で受ける。そのまま下から押し上げるように跳ね上げる。ランスを持つ右腕は斜め上に向かって行き、胸元に生まれた隙間に身をねじ込む。

 二人の距離が近くなった。

 有稀と目が合う。見開かれた目は信じられない様子であり、じんわりとした恐怖が混ざっていた。

 理心は意外と褪めた目で返答した。念を押すように右の剣を握りなおす。

 距離にして数センチ。理心と有稀の顔は近づいていた。

 見開かれた有稀の目にじんわりと涙が溜まる。

 右の短剣が大気に切り口を入れる。

 ぽとりと、頬に水が落ちた。


 ―一閃。


 理心らの周りに木の葉が舞い上がった。

「…」

 理心は目視する。

 下から上に駆け抜けた蒼色の残像。

 はさみで裂いたような滑らな有稀の制服の切れ口。

 ぷつりと目を閉じ、こちらにもたれかかる有稀。

 そして、宙に投じられたくまのぬいぐるみ。

「……」

 すかさず左手の剣がぬいぐるみを貫く。胴体の中央を突き刺し、傷口から白い綿を噴出す。

 理心は倒れてきた有稀を右腕で受け止める。彼女から魔力の反応はない。彼女はただの生徒となっていた。

 目をぬいぐるみに戻す。最中、ぬいぐるみは微動だにしない。目は重力に伴った方向を見ている。

 理心は下を向く。足元には制服の粕と円状に赤黒くなった土が見えた。

 知らぬうちに息切れしている。体全身を痛みが巡っている。

「…あー…結構しんど…」

 肉体がぐにゃりと倒れた。

 右肩の噴水が再開したと認識すると、彼の記憶はぷつりと切れた。


 *


 三階。女子トイレに居た彼女は廊下へと出てくる。そのまま窓際まで進み、中庭を見下ろした。

 大銀杏の元に居る三名と一体。

 認識し、彼女は小さなため息をつく。

 まず一人目―大銀杏に寄りかかる褪めた目をした彼に目を合わせる。

 現在は消しているが先ほどは拳銃を両手に持って舞っていた。魔力で従えたとは言え、上界の魔物共とは比べ物にならない強さだ。

 戦闘に慣れ、且つ冷静な判断力。上界の人間としても納得しがたい年齢。

 小さくしたうちする。

 二人目―右肩から血が滲む彼。

 僕は彼に負けたのだ。操作といえども敗北した。

 ここに居た中で一番の実力者だ。命の取り合いに対しての反応は異常である。

 なにより、彼は上界にはいないタイプの人間だ。魔力を用いた双剣を使っていたが、彼からもその武器からも一切を感じられない。そもそも魔力ではないものを具現化しているのかもしれない。

 とにかく、僕は負けた。

 目は三人目―その少年に抱えられるようになった女子生徒に向く。

 今回の身体。満足いく働きはなかったが、彼女の限界だろう。相手がバケモノだとは―。

「……」

 窓際の彼女は思考を中断する。目前では褪めた目の少年が面倒そうに二人を担いでいる。

 どう見ても人間だ。

 唇を噛み締める。

「…んー…?」

 左から声がした。眠そうに目を半開きにした少年がこちらを見ている。

「…檜山さん?」

 名を呼ばれ、僕は目を合わせる。檜山未稀の知り合いみたいだ。

 少年の眉がぴくりと動く。

「…じゃないのかな?」

 含みを持った発言をし、わざとらしく顎に手をかける。目は変わらず眠そうだが、楽しんでいるようにもみえた。

「だとしたら…麻百合?」

「…!」

 自分でも分かるほど動揺が露骨に顔に出た。すぐさま平常の表情へ変貌させるが、少年は顎から手を退けた。

「ビンゴ」

 一言、響く。僕は檜山未稀を想定して口を開く。

「…あの…私の名前は―」

「対制約者用装着兵器『七宝石しちほうせき』指揮型・麻百合。現場指揮を目的として作られ、士気の向上、物体憑依による遠隔指揮を目指した兵器」

 間違えているか、と聞き、彼は欠伸をした。

 間違いはない。ただ、なぜこいつがそんなことを知っているのかが問題だ。今の発言は全て僕が燃やした資料の話だ。

「『七宝石』じゃ一番、純粋らしいな」

「……」

 麻百合は口を開かぬまま思考する。

 なにが起きるかは分からない。危険性は排除しておくべきだ。

「…それはどこで知ったんだ?」

「秘密だ」

 少年は再び眠そうに欠伸をする。目にはうっすらと涙が溜まっているようにも見える。

 むかつく態度だ。

 麻百合は彼に見えないよう、背後でランスを顕現させる。そのまま一歩ずつ歩き出す。

「で、なんで未稀の体なんだ?」

「…そんなの関係ないでしょ」

「あるよ」

 少女の声がした。

「…っ!?」

 途端に突風が吹き上げ、麻百合のランスが上に吹き飛ばされる。

 風が収まると、麻百合の視界には新たに紺色の髪をした女子生徒が姿を現す。

 目を大きく見開いたことを忘れそうにはない。

「…レイラ…」

 紺色の彼女の名を呼ぶ。

 吹き飛んだランスはざくりと突き刺さる。

 澪羅は麻百合を一瞥し、悲哀の目を床に向けた。

「おはよう、マユリちゃん」

 目を合わせず、言う。

「変わってないみたいだね」

「お前もか…」

「……」

 タイミングから判断つく。

 少年の情報元はレイラだ。そして完全に少年を守った。つまり、そちら側だ。

 目を合わせようとしない彼女を睨みつける。

「なんで邪魔する…」

「……」

 澪羅は沈黙する。

「憎くないのかっ! こんな体にされて!」

 左手を胸に当て、訴える。

「死ねない体にされ、名簿上死んだことにされ、戦争が終わったら用無し。無かったことにされて…悔しくないのか!」

「……」

「レイラぁあああああああ!」

 咆哮のような怒号。

 澪羅はおずおずと口を開く。

「それでも、他人を巻き込むのはいけない」

 小さな声、夜風のごとく呟く。

「…マユリちゃん。もう止めて」

 澪羅の右手に風が集まる。風は徐々に色がつき澪羅の肩に纏わりつく。

()めないなら、私がめる」

 その顔はひどくつらそうだった。

「分かってるよね。人体状態と戦闘状態ならどちらが有利か」

 右手に纏った紺色の風を剣と化する。金属の光沢はどこにも無い。殺意を持った風が澪羅の右腕に終息し、僕に向けられている。

「変わってないな…」

 一言目は懐かしむように、

「本当…変わってないな…」

 二言目は悔やむように告げる。万に一つでも僕に勝ち目は無い。

「マユリちゃんも変わってないよ」

 澪羅は哀情を述べる。

「…変わってない…」

 二言目は、後悔。

 麻百合はランスを消失させ、澪羅らの居ない廊下へと歩き出す。

 切っ先は背中が月から見えなくなるまで向けられた。

「…いいのか?」

 少年は欠伸交じりに問う。

「大丈夫だよ。あの子は話せば分かるから…もう、しないよ…」

 風が拡散していく。穏やかに、ゆっくりと―。

「ふーん…」

 少年は興味なさ下にうなった。

「…帰ろう」

 澪羅の一言で、二人の歩は麻百合が向かっていない闇へと向かう。間もなく、飲まれ、校舎は無人となる。



 *


 当たり前の事態が発生する。

「…何か悪いモノでも憑いてるんじゃない?」

 翌日、登校すると朱がこう言い放った。心配よりかは怪訝の割合が大きい口振りだった。

 彼女が見たのは右肩に包帯を巻く理心の姿と、階段から滑り落ちたという一般的な供述。ただ彼女は審議を確かめる手段も無く、疑心暗鬼のまま授業へと望むしかない。


 また今日が始まる。


 檜山姉は欠席した。妹によると筋肉痛らしい。

 昨日の動きは人間離れしている。誰だって筋肉痛でもおかしくは無い。筋肉痛で済んだ、と考えると気が滅入るので止めておく。

 姉はやはり一人だったみたいだ。調べてみると休み時間も一人でいる場合が多い。避ける理由はやはりESP能力である。

 一応、生徒会はオープンにしているが、果たして相談に来るだろうか。

 個人的な答えが出たところで、次の出来事が起きた。


「俺ら、帰る」

 昼休み、生徒会全員を集め綾平がいった。驚いたのは来葉を除いた二人。

「突然だな」

 来葉が抑揚無く問いかける。

「俺らもそう思う」

 綾平は大きな欠伸をして答えた。

 簡単な話だった。澪羅がいないことに気付き、綾平が連れて行ったと思われ、連れ帰るという話だ。

「でも、こっちに生徒長がいなくなるけどいいの?」

 朱が問いかける。

「いいんじゃないか? 別に俺がいなくても機能していたって言えばいいし」

「そう…かな…」

「心配なら、それを生徒長にすれば?」

 綾平の目は理心に向けられる。

「えぇ?」

 包みを開けていた彼は頓狂な声を出す。

「もーらい♪」

「おいっ、俺のモンブランンンン!!!」

 向き直り、頭を抱える理心。

 犯人の澪羅は口いっぱいに頬張り、幸せそうな顔をしている。

「きぃさぁまぁあああああ!」

「った!?」

 鬼の形相をして鉄槌を振り下ろす。べちっ、と重い音がした。

「もう…ふぁふぇてんでふぉーが(食べてんでしょうが)」

「誰のケーキだとおもってんだよ!」

「私のためじゃ―」

「ちがあああああああああう!」

 ―今日もこんな感じらしい。

「…そう思うか?」

 目で否定しながら来葉は問いかける。

「形だけだよ。中身は今までどおり二人でやればいい」

 面倒そうに言うと澪羅の首元をつかみ、ひょいと持ち上げた。澪羅は大人しくなり、そのまま廊下口へと連行された。

「ケーキぃ…」

「さよなら、みなさん」

「おつかれさまでしたー」

 数秒無く、扉は閉まった。

「…」

 途端、来葉が理心に近づき、彼の目の前にあったケーキの箱を取り上げる。

「おいこらぁあ!」

「後で買って返す」

 それだけ言い残すと理心を一瞥し、二人を追うように生徒長室を出た。

 残された二人。朱は何も無かったように隅の書記席に着き、理心は手に持っていたスポンジを口に入れた。


 *


 西の生徒長と副長は玄関へと向かっていた。

「…ケーキぃ…」

 いまだ口にする澪羅。足取りは重く、気分が下方修正されていた。まるで飼い猫が死んだときのような沈みよう。

 綾平はため息をつくように目を瞬く。

「何のためにこっち来たんだ」

「…」

「麻百合、ほっといてよかったのか?」

 声の抑揚は無く、だがしっかりと問いかけていた。間が開いてから澪羅の口が開く。

「あの子はもうやらないよ…」

「そうかね?」

「やりそうなら、また止める」

 楽天的な彼女が真面目に答える。綾平もそれ以上は聞かずに口を封じた。

「…」

 玄関を目前とし、ぴたりと綾平の足が止まる。追うように澪羅も止まり、二人は振り向く。

 そこには褪めた目の少年が立っていた。手にあるのは先ほどのケーキの包み。

「見送りご苦労さん。掃除係」

「けーきぃ!」

 とびかかりそうな彼女にモノを与え、来葉は綾平の目をじっと見た。

「…今回の事件。関係してるのか?」

「生徒長代理としては一応」

「…虚言は好まない」

「真だよ。君の名前にもあるように」

 綾平は相変わらず、眠そうな目をしている。

 来葉はケーキに夢中な澪羅を一瞥し、低い声を続ける。

「食べないと死ぬのか?」

「いいや」

 即答する綾平。

「じゃあ、戦えない?」

「そう…腹が減ったら戦は出来ぬってね」

 おちょくった口調だ。そのまま、くるりと背を向き、澪羅の首を掴んだ。

「帰るぞ」

 ずりずりと足を引きずりながら、玄関へと向かう。夢中の澪羅は次々と口の中へ放りこむ。

「…心配せずとも、邪魔しないよ…」

 一つ綾平の声が悟った声を出す。

「もし、俺が邪魔になったら?」

 問いかけと同時に綾平を照準をつけるように背中を指差す。直後、微風が来葉に向かって吹いた。

 風が止むと澪羅の左手が来葉の首に触れていることを認識した。

 口を動かし、右手に食べかけを持ち、平然な顔で、首を掴んで、居た。指先の体温が首に広がる。

 来葉はゆっくりと手を下ろす。見ずして綾平は答える。


「…分かっているだろ?」


 そういうと、澪羅の名前を呼び、小さくため息をつく。彼女は何も無かったように振り返り、綾平の後ろについた。

 来葉は足を動かさない。外の靴に履き替える二人を見ていた。

 履き終えて、綾平がこちらをみる。穏やかで、無表情だ。

「さよなら、氷の王子様(クルーエル・ハーツ)

 一礼して、二人は去っていった。

 来葉の手は無意識に首をなぞる。

 微かに震えた手は首筋につけられた生クリームを拭い去った。

次から本編に戻ります。


理心―かなり怪我してる。


来葉真一クルーエル・ハーツ―氷は便利な魔法って証明した。


柳川朱―出番なし。最近、こいつの存在に疑問が…


綾平―苗字もあったけど、こっちの名前で呼んでいる。同時系列の作品の主人公であった。(ここで書くかは未定)


澪羅―上記にしかり。『七宝石』の一つ


麻百合―犯人。百合なので武装は全部白です。


有稀・未稀―ただの超能力兄弟


『氷の王子様』―綾平最後のセリフ。伏線です。

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