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      お役目と幸せ 其の五

お鳥が去って、兵庫はとぼとぼと一人家に戻る。

狭い長屋の部屋が、お鳥がいないと何だか広く見えた。


「遠くをみるな。俺たちがまだいるぞ」


一真たちは相変わらずその場にいたのだが、兵庫の目には映らなかったようだ。


「まだいたの」

兵庫は、びっくりしたように言った。


「友達がいのない奴だな。斬られて怪我したのにさっさと帰れっていうのか。お前だって、ふられて傷心だろ。慰めてやるよ」

安次郎が悪戯っぽく言った。


「いいよ。どうせ俺じゃ、あの人の心の重みは支えきれないよ。それに元はといえば、お鳥さんの優しさに寄りかかっていたい甘えの心から、一緒になって欲しかったんだ。そんなうわっついた気持ちじゃ、お鳥さんを幸せになんかできないさ」

兵庫は苦笑いを浮かべた。


「そういえば、あの地蔵は結局なんだったんだろうな。黒装束の男達も、お鳥さんにも大事に見えたが、あんな地蔵のどこにそんな価値があったんだろうなあ」

安次郎の疑問に兵庫も首をかしげた。


お鳥は、自分のことをしゃべってはいたが、任務のことには一切触れなかった。

知れれば命を狙われる、とも言っていた。


「推測だが、あれは只の石造りの地蔵じゃないだろう。外側は石のような素材だったが、重さが半端じゃない。中身は、金か銀だな。中をくりぬいてそこに流し込んで、一見只の地蔵のように見せているんだ。抜け荷をごまかすためか、あるいは藩に隠し金山でもあるのかもな。いずれにせよ、幕府にばれたら没収されるのは目に見えている。金がないのは藩も幕府もどこも一緒だ。」

一真はさらりと言った。


「よくみているなあ。俺なんて、毎日地蔵の顔見ていたというのに、全然気がつかなかったよ」

兵庫が感心したように言った。


「ああ、それにしても疲れた。ちょっと美人を見に来ただけなのにこんな目にあっちまった。俺はこのまま寝るぞ!」

安次郎はそのまま畳に大の字になった。


「ちょ、ちょっと。ふとんは一つしかないんだぞ。泊めるったって・・・」

兵庫は慌てた。


「別に雑魚寝で構わない。どうせそろそろ木戸も閉まる頃だ。帰るのも面倒くさいしな」

一真もごろんと寝転ぶ。


「もう、二人とも」

兵庫はあきれたように頭をかいて、二人の友人に挟まれながら、それでも久しぶりの我が家で川の字になって就寝した。



その後、流れてきた風の噂で、北国の藩で隠し金山が見つかったという噂が持ち上がった。

その噂には藩を咎めない代わりに、どういうわけかたくさんの地蔵が江戸城に持ち込まれたという尾ひれもついていた。


どこまで本当のことかは分からないが、兵庫は何となくその噂を丸呑みにして信じていた。



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