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8 甘い薫りに誘われて~気がつけばそこは戦場。


 無限回廊の中庭に、いつから有るのか誰も知らないビオスの丘と誰かが呼び始めた場所がある。


 森が開けた場所にポツンと丘が広がり様々な魂草が咲き乱れる丘には、それを象徴するような大樹が一本。そこには美味しそうな赤い木の実が甘い香りを放っていた。


 ビオスの丘のビオスの大樹。

 その実を皆がビオスの実と呼んで食らう。


 魂に少し力を与える美味しい不思議で真っ赤な木の実。


 争いという名の種を含んで…。



 (わおー!すごい、広いなだらかな丘にいっぱいの花が咲き乱れてる。まるで天国じゃん。蝶々も沢山いるし絶景だね)


 僕とレイブンは今、花畑広がる素敵な丘の上空にいる。何だか今までと違う風景に心が弾み浮かれてしまう。


 レイブンがあきれ、ため息をはいた。


 (お前なぁー!良く見ろ、あれは全部、花一つ一つが魂草だ。しかもだ、それにつられて虫と獣もいるぞ)


 僕はぎょっとして下を注意深く眺めた。


 (げっ、もしかして全部、魂草と魂虫と魂獣?)


 (正解だ!)



 事実を知るとみえ方はやっぱり違う。一見、美しい丘は魂達がうごめきポイントの奪い合う戦場だった。

 

 しばらくすると、大きな丸い岩を転がす大きな糞ころがし風な魂虫が森から現れる。それが花畑の魂草を石で縦横無尽に潰していく。逃げれる魂草は逃げ惑い。動けぬ魂草は無情にも、その悪夢を受け入れる。


 中には念話スキルをもつ魂草もいたのか?おぞましい悲鳴と助けを呼ぶ声が聞こえてくる。


 僕は息を吸うのも忘れじっと、それらの惨状を見つめていた。


 いつまでも続くと思われた蹂躙はバタリととまる。糞ころがしが直ぐに光はじめランクアップをする。それは三つ目を持つ茶色い熊に変化した。

 獰猛そうな熊は次の手頃な獲物を物色しつつ回りを見回す。


 バサバサバサバサ!

 がオオーーん!

 バサバサバサバサ!


 突然、上空から大きな影が羽音と共に滑空する。瞬く間に、ランクアップしたばかりの熊は巨大なワシのような獣に鋭い鍵爪でつかまれ、森の向こうにつれていかれてしまった。



 そして、辺りは何もなかったように静まりかえり戦いの前の景色に戻る。 


 (レ、レイ?レイブン…今の見た。凄い一瞬で色んな事が起きたよね)


 (危なかったな、今のはグリフォンだ。上半身が猛禽類の鳥で下半身が肉食系の獣だな…俺たちがターゲットでなくて良かった。もしかしたら、ランクアップする魂獣を遥か上空から狙ってたのかもしれない。巣に持ちかえられたのかな…)


 (僕とレイブンは魂虫と魂草で良かったよね)


 (次は上空も注意し警戒してくれ…と言っても気がついても、あの速さだ!狙われたら、のがれられないだろうが…心構えぐらいできるだろう)


 僕はレイブンのあまり意味のない忠告にうなづく。

 レイブンは浮遊だからフワフワしか飛べないし僕の方が速く飛べるけど、所詮、虫の速さだ。あの速さにはかなわない。また似たような魂獣が現れない事を僕は密かに祈った。




 僕とレイブンが一息ついて丘の中央に飛んで移動する。その中に一本だけある3階建てのビルの高さの大きな木。美味しそうな赤い実をつけた木を目指した。


 フワフワと前進すると何処からか?ピンクの蝶々がレイブンの花の部分にとまった。綺麗な蝶だなと感心して見ていると次の瞬間、ガバリと大きくレイブンの花の部分が口のように開いた。


 (えっ…そこ!開くの?!)


 美しい蝶はその中に飲み込まれ消えてしまう。

 

 あれ?!レイブンが自分より質量の大きい蝶を食べたみたいに見える。今だにもぐもぐしている。そして、ごっくん。ああ…飲み込んだ。


 (レイブン?今、僕の見間違いじゃなければ蝶を食べたよね?)


 レイブンはそれがどうしたというように言葉を返す。


 (なんだ?顔が真っ青だぞ。蝶か…あれは魂虫だ。言わなかったか?俺は過去の転生の中で長く食虫植物をやった事があるんだ。だから魂草の姿でも虫は普通に食べるぞ)


 (そうだよね。食虫植物は虫を食べるよね…)


 僕は動揺を隠しつつ頷く。

 確か魂達は自分が一番馴染んだ形に変化するとレイブンに教わった。例えば、亀の姿で長生きをして魂にその姿が馴染んだものは魂獣にランクアップした時にその姿になる。


 僕の場合は魂草は動くツタの生えた球根型で、魂虫は謎な妖精が魂に馴染んでいる姿らしい。と言うことはレイブンはシロツメ草みたいな食虫植物という事だね。


 (それに、あの蝶しれっと俺から蜜を吸おうとしていただろう?あのまま吸われていたら俺はポイントを失い魂石に逆戻りだ。そんなの見逃すわけがないだろう)


 (えっ、蜜だけじゃなくてポイントも吸われるの?)


 (当たり前だろう後でお前にも、この花畑で蜜を吸ってポイントを集めてもらう。いいな?ガンガン働いてもらうからな…)


 レイブンは白いシロツメ草の花部分をフリフリしながら僕に発破をかける。すると食事がおわって口から小さな魂石をペッと出した。直ぐにレイブンの体が発光しだす。


 僕は慌ててレイブンから離れた。

 しばらくすると光は形をかえて静かにおさまる。


 美しい黒い鳥の姿が目の前に現れた。

 鳥は大樹の枝に飛び移りこちらを向く。黒い鳥の嘴は黄色で頭の頬の部分には金の差し色が入っていた。まるで九官鳥みたいだな……。


 (レイだよね?)


 (ああ、さっきの魂虫、凄いポイントを貯めてたらしい。喜ばしい事に虫をとばして一気に魂獣になれた。俺って最近ついてるな…54ポイントになった)


 鳥が口を開け嬉しそうに体をふるわす。口からはぴゅるるるーと鳴き声をだし艶々した濡れ羽色の羽をけづくろいしはじめた。しばらくして落ち着いたレイブンをみて話の続きを促す。


 (話は戻るけど!下の花の蜜を吸う時に食虫植物がいたら、それって僕もさっきの蝶みたいにパクリと食べられちゃうかも…だよね?物凄く危険だよね?)


 不安になって僕が聞くと心配しなくていいらしい。なんでもレイブンには鑑定スキルなるものがあるから大丈夫なんだとか。詳しくは後で説明してくれるそうで、とりあえず今は目の前の木に意識をうつす事にした。



 

 (へぇー、これがビオスの木なんだね。凄く大きいね。この林檎みたいな木の実を食べるとポイントが1ポイント増えるんだよね)


 (ああ、ただし増えるのは1つの実から各自1ポイントだけだ。また、別の実を食べれば1ポイント増える。それと丸1個食べなくとも一口でいいからな。ここで木の実を何個か食べてポイントを貯めるぞ!頑張って食べろよ)


 (げっ、木の実、味は美味しいの?不味いと嫌だな)


 僕は文句を言いながら近くの熟れた実にかじりついた。



 この木はあまりに大きく高い。上まで登ってこれる魂獣は小動物系の鋭い爪がある個体か羽の生えた魂獣か魂虫にかぎられる。それらの食べ残しが落下するのを下にいる魂達は、ただじっとまっている。


 おこぼれをもらう為に。


 そういった考えのもの達が集まって丘に花畑が広がり虫達が増える。虫が集まれば、そのポイントを狙う獣も集まる。ひとたび戦いが始まれば勝者と敗者、巻き添えありの魂戦(こんせん)になる。

 敗者の血肉が土に染み込めば、それを根から吸収しポイントにし。また同じく魂石に染み込んでもポイントになる。


 食物連鎖の縮図がこのビオスの丘にあった。



 僕はその後、レイブンの指示通りに危険を回避しながら丘を飛び回り花の蜜や実をとり口に入れた。


 ビオスの実は10コをかじり10ポイント、花から蜜を吸って回収した20ポイント、それぞれが半分レイブンへ呪いの効果で自動で流れた。


 結果、僕は28ポイント。レイブン69ポイントになった。お腹はパンパンで心なしか?飛ぶ速度が遅い。



※※※※※※※※



 私はポポナ、今は、しがない魂草をやっている。しかし、あの二人を無我夢中で追いかけ(速度は遅い)、気がついたらビオスの丘の中。

 飛び回る虫を根のムチでバシバシはたき落としたら、気がついたら大きな岩を背負うヤドカリ姿になっていた。その上には可愛らしい黄色い花がちょこんとのっている。

 これは生前に海辺の森で生活していた時の姿だと思う。つまり、魂虫にランクアップしたらしい。なんと運が良いのか?私は彼らを追っていただけなのに…。


 ビオスの木の上の方に彼らはいるみたいだが私は、この巨体だ。勿論、木には登れない。しばらく、ここでどうしようか?じっと考えていると、上から何かが落ちてきた!


 ポトッコロコロ。


 誰かが食べた跡のある、かじりかけの赤い実。


 ビオスの実だ!私はついている。それを回りのものにとられる前に、さっと腹の下に入れて岩の中に閉じこもる。

 ムシャムシャ…美味しい。体に力がみなぎる。魂ポイントが少し増えた。


 実をかじりながら思う、やっぱりあの二人を追ってきて正解だと。


 しばらくすると、妖精姿の魂虫と黒い鳥の魂獣が二人そろってビオスの丘を出ていった。

 私は慌てて、そのあとを追う。重いからだをゆさゆさと揺らしながら花畑を進む。

 プチプチと他の魂草をつぶしながら外へ外へと移動する。二人が見えなくなったが方向はわかる。追跡スキルがあるから少し離れても大丈夫。焦らない焦らない。


 丁度、丘を抜けきった所で体が光だす。ランクアップだ!

 岩を背負ったヤドカリが可愛い角兎に変化した。 

 魂獣に戻ったポポナは青い目を輝かせ、嬉しそうに二人の向かったあとをたどる。

 やった!これでスピードがました。追いつける。


 そして丘には潰された花たちの道が残されていた。


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