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7 無限回廊ってどんな所?



 冷気のあるエリアからだいぶ離れた森の中。

 若草色の短い髪でトンボのような薄い羽を背中に背負った手のひらサイズの妖精と、それを乗せた大きめバナナサイズで、それを横にたおした感じの石付き魂草(こんそう)は長い時間、ゆっくりと浮遊移動して進んでいる。


 二人は、ただ無言で移動していてもあれなので、この中庭や回廊の事を話していた。


 (へえ~ここ全体を無限回廊って呼ぶんだ~知らなかった。この森は中庭(なかにわ)なんだっけ?こんなにでかいのに中庭って言うんだね。そういえば鬼の門を中心に左右に長い回廊が見えたけど…あれが回廊本体?)


 (ああ、あそこに新たな世界に生まれ変わる為の入口の扉がいくつもある)


 (いくつもあるの?)


 (それはそうだろう?世界の数だけ扉がある。自分で選んだ扉の中で、新しく生まれ変わる予定の世界へ行く為の事務手続きをするんだ)


 (えっ、事務手続きをするの???)


 (そうだ、何を驚いているんだ。当たり前だろう?その時にサインをするんだが…人型のランクで魂人(こんぴと)状態じゃないと出来ないんだ。だから、ここの魂は必死にポイントを貯めて人型を目指す)


 僕はフムフムと感心するようにうなずく。


 (それに余計な混乱を招かないようにか、あの回廊部分は魂人以外のランクのものを弾くんだ)


 (えっ、じゃーこの姿で僕は回廊に入れないの?)


 (そうだ、お前も俺も見えない壁に弾かれる)


 (ああ、だからか…門から入ってきた人みたいな者は回廊に歩いて行って、それ以外の獣などは森にかけこんだのか、今思えばあの光景は必然だったんだね)


 そうか、改めて教えてもらうと自分で目にしたものの実情がわかる。


 (そういう事だ。死んだ魂は自動的に門の前に現れる。その場から動けない物がそこに、いつまでもあったら邪魔でしかないだろう?だからあの鬼たちは、動けない物を片付けるアルバイトをしているんだ)


 (えっ?アルバイトなの…まさか…給料をもらってるんじゃないよね?)


 レイブンは魂草の状態で表情はわからないげど、何を言ってるんだという感じで答える。


 (勿論、もらってる。そうじゃなきゃ、あんな面倒なことをしないだろう。昔、門番担当の者と話しをて聞いたからな…間違いないぞ。きちんと(たましい)ptを日給でもらってるそうた。だから、門番もたまに変わるしな)


 僕は新たな情報に驚くばかりで、レイブンに腰をかけたまま声をあげては感心する。


 (本当は、こんな説明なんて魂の記憶スキルが有れば必要ないことなんだぞ。それがあれば、前回、いや前々回のここでの記憶は死んでここに来たとたんに自動的に思い出すんだからな。まあ、俺にとっては良い鴨…じゃなかった良い契約だからな)


 レイブンが今、僕に良い鴨って言ってたよね。これ絶対に魂の記憶スキルを取得した方がここでは有利なんだ。でも、なんで僕は前回、そのスキルを取らなかったのかな? そんな有能なスキル絶対に必要だよね。


 (ちなみにスキルはどうやっ…て)


 僕がレイブンに振り返り話の続きをしようとして、いきなり強い衝撃に襲われる。



 がきっーーーーーーーん! ドン!!



 痛っ!何があった?レイは何処……。


 僕とレイブンは、何か棒のようなもので野球のバットをフルスイングするようなかたちで地面に叩きつけられた。驚きと痛みで一瞬動けず次の攻撃に備えて体を丸くして身を守る。だが、いくら待っても次の攻撃はこない。


 その後レイブンが低空非行でフラフラと僕に近いてきた。


 (うっ…ダメージを受けたけど幸い、ポイントを奪われる程ではなかったみたいだな……おい、お前も大丈夫だよな?とられたか?ポイントを!!)


 僕は痛む体を起こし辺りを見回す。何が僕らを襲ったのか?全くわからない。敵らしい姿もなく、だだ、そこには森が広がるばかりだ。


 (まって。今ステータスを確認した。大丈夫そうだよ。実際の衝撃は地面にぶつかったものが大きかったみたい。それにしても敵は何処?)


 僕は注意深く近くを見るが遠くが見えるスキルを持ってしても、攻撃元が…全く分からなかった。


 (まあ、落ち着け!俺も油断したが敵の正体はわかってる。無闇に飛び回るなよ。そうだ、そのまま俺の近くにこい、そこでいいからじっとしていろ!)


 レイブンは自分達が飛ばされてきた方向をにらみながら、なにやら思考タイムに入ったようだ。このまま、この場所にいて再度攻撃されないか非常に心配だ。呑気に考え事するより逃げた方がよいのでは?僕はその考えを伝えたがレイブンは否定した。


 (これは、あの樹木の仕業だ。大分大きい個体だがあれは魂草だ。よくよく見ればうっすらと光っている。本物の中庭の木に擬態しているタイプだ。あのタイプは、その場からの移動に時間がかかるから、お前は動くなよ。その方が安全だ)


 レイブンの話を聞き成る程と思う。

 つまり待ち伏せタイプの魂草の擬態に僕らは、まんまとひっかかった?


 (でも、ポイントを奪われる程のダメージじゃなかったと言う事だよね)


 それに同意するようにレイブンは体を揺らす。


 (ああ、元々小さな虫、魂虫を狙ってたんだろうが生憎、俺の三日月石胴体にぶつかったからな……俺は称号、()()()()の効果(浮遊中は致命傷を負わない)で無傷だ。お前に当たらなくて良かったな。もし当たっていたら、また魂石からやり直しだろう?)


 からかうように言われ確かにと思いゾッとした。


 レイブンの体にかばわれた。直接当たらなくて良かった。それにしても魂草というだけでも色んな姿があり驚く、どうして何だろう?だって樹木は草じゃないじゃん。でも、この場所の大まかなランクでは草も木も植物なので、ひとまとめに魂草となっているみたいだ。


 誰が命名したのか…凄いおおざっぱだと思う。


 (とりあえず、あれは俺たちではポイントを奪えない。相性が悪いからな…それとも、何か属性魔法スキルとかもっているか?)


 僕は魔法のスキルなんて持っていないと首を横に振った。その後、その場から二人で離れる。


 次からは、移動はレイブンが担当、回りの警戒は目の良い僕が担当することと、きちんと役割分担した。レイブンが言うには鈍い光を放つ物は基本魂らしいので、次は決して見逃さないようにする。


 僕も二人になったことで少し気持ちが緩み緊張感がなくなっていた。これからは気を引き閉めて探索?をしたいと思う。


 そして今現在、相も変わらず僕は浮遊するレイブンの上にお座りしている。


 (レイブン)


 (なんだ)


 (えっと、さっきの続きの話なんだけど…)


 (はぁーん?)


 気だるそうにレイブンが返事を返す。


 (魂の記憶スキルってどうやって取るの?)


 (スキルか…スキルを取ろうと強く念じれば、取得できるものが頭に浮かぶぞ。でも今は止めろ。人型を保てるようになってポイントが余った時に取るのが正解だ。そうしないと…)


 (そうしないと、どうなるの?)


 (スキルを取得した途端に魂のポイントが減ってランクダウンする。あっという間に魂石に逆戻りだ)


 小馬鹿にしたようにレイブンは僕に教えてくれた。安易にスキルを取ると身動きが出来ない状態のあの魂石に逆戻りだ。


 ないわ。


 (ちなみに、魂の記憶スキルの取得ポイントって、どれくらいいるの?)


 素朴な疑問を彼になげかけた。


 (そうだな…確か俺が昔、スキルを取った時は…確か…500ptだったかな)


 (ご、ごひゃく…)


 僕はガックリとうなだれる。


 高い。高額な買い物じゃん。これで何故僕が大変な苦労をしても、前回、そのスキルを取得しなかったのかがわかった。あれだ、もったいない精神だ。日本人独特の精神。


 たぶんだけど僕は毎回、このスキルの取得を見送り何度も生まれ変わりをしていたんだ。このスキルの重要性に全く気づかずに…。


 今回はレイブンと出会えたから良いけど、また、この場所に来る事は必ずある。その時にレイブンみたいな案内人に巡り会えるとも思えない。


 ああ…多分500pt貯めるのは物凄く大変で…でも、これは必須スキルだよね。このサバイバルな、あの世ですごすためには…。



 レイブンに会った事で僕は決意する。


 魂の記憶スキルを取得する事を。

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