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6  森を抜けたらそこは湖だった!

 僕達は冷えきった空気の中、霜のおりた木々の合間をぬけ大きく開けた場所にたどり着く。どうやら、ここは、そこそこの大きさの湖のようだ。


 (レイブン!レイブン、レイ!ねえ聞いてる?)


 凍った湖の上空を高度をあげながら、三日月魂石はぐんぐんと空高く飛ぶ。


 僕は急に高さが増したので怖くなりレイブンに話しかけるが返事がない。何かに集中しているようにみえた。でも、返事がないと不安になる。


 (レイ!レイっ聞こえてる?)


 (うるさいな…よし、ここら辺だな。風向きと高さは充分か…)


 レイブンがそう答えると、いきなり三日月魂石の体を逆さまにした。突然の彼の行動は意味がわからない。掴んでいたツタの部分が滑り落ち、ポイっと僕は湖の上に投げ出された。


 (ぎゃーーーーーーーーーーー!!!助けて!!)


 ひどい、ひどい裏切りだ!!


 僕は、ぎゅーんと速度を増して落下する。


 スピードを上げながら…。



※※※※※※※※


 私は見た。


 氷におおわれた湖面の遥か上空から落下してくる魂草をあれは三日月魂石と共に移動していた魂草に違いない。

 それは湖の中心にあるキラキラ光る凍りに包まれた立派な魂草の上に落ちた。


 ガシャーン!バリバリ!


 静かな湖に音が鳴り響く。


 落下した玉葱型の魂草は普通のカボチャ程の大きさがあり、潰されて粉々になった凍れる魂草の背丈は成人男性の腰位の高さがあった。しかし茎が細く華奢だった為に一撃でそれは粉砕した。


 その戦いは非常に衝撃的で、こんな魂戦(こんせん)は、いまだかつてみたことがない。 


 なんと無謀で大胆な戦略。


 私は唖然としたが直ちに現場へズリズリと近づいた。勿論、この戦いのおこぼれを拝借するために。



※※※※※※※※



 体が痛い。


 当たり前だ。あんな高い所から落ちてただじゃすむはずがない。何だか体が熱くなってきた。心なしか、回りが眩しい…あれ!この感じ知ってる。ランクアップだ。

 不自然な痛みと共に体が作り替えられる。


 体の大きさは変わらない?手!足!あれ?羽がある。羽を動かすと、ふわりと体が浮いた。

 飛べる、凄い、多分だけど僕は妖精になったんじゃないかな。


 グリーンアンバーの瞳を持つそれは、人間の成人男性の手のひらサイズの体で目をぱちくりさせた。

 僕は自分の妖精の体をゆっくりと観察する。


 髪は若草色のショートボブ、少し女の子みたいだけど、どうやら性別はないみたい。

 羽は透明で薄く淡い紫と水色のステンドグラスのようなつくりになっていた。光に反射するとキラキラと美しい。

 服らしい物は素材が分からないがとても柔らかく、深い緑のチュニックには植物の葉のもようがあり、肩の部分の短い袖とチュニックの裾の部分が濃い紫葡萄の色で綺麗に縁取られている。足は土色のズボンで覆われていて、その先に可愛い裸足がのぞいている。


 多分だけど、この妖精の体は歩くには不向きだと思う。そのような華奢な足だった。



名前 なし(僕)

職業 なし

種族 虫(魂虫(こんちゅう)※ポイントが少ない魂の宿った虫)

レベル ※※※

呪い(※レイブンに呪われている)

魂pt 13pt


スキル 念話 超視力 ステータス 小さな幸せ


称号 優柔不断な頑固者



 ポイント増えてる。嬉しい~種族が魂草から魂虫にランクアップしてる。だけど、妖精って虫なの?世界によっては虫扱いなのかな?不思議。


 僕が色々と自分の状態を確認していると上から声がかかる。


 (よお!上手くいったな高さと角度の計算がバッチリだ。俺にも5ptが入ったから無事にランクアップして魂草になれた)


 (えっ?全然変わってないじゃん、どこが魂草なの)


 僕が飛んできたレイブンに近付き、彼の周囲を飛び回りながら、その姿を確認する。


 ブーメランのような向きで地面と水平に飛ぶ三日月型魂石は今までと何も変わらないように見えた。


 (よーく、ここを見ろよ。ここだよ、ここ!!)


 じっと見ると、三日月型の胴体部分に小さな花が咲いている。白くて可愛いシロツメクサのような花がちょこんと咲いていた。


 (確かに草が生えてる。これで一応、魂草扱いなんだね。それにしても、いきなり上空から落とすなんてひどいよ!死ぬかと思ったよ。ま……魂だから死なないかもけど…)


 (あっ、悪い。でも正直に話したら反対しただろうが…それに無事に短期間で魂虫(こんちゅう)にまで、なれたんだから感謝して欲しいな)


 (確かにそうだけど。それでも凄く怖かったから、次は怖いのは無しでお願いしたい…)


 (まあ、その魂虫の姿じゃ~同じ手は使えないから安心しろ)


 レイブンは上機嫌な声で僕に言ったが全然安心できない。僕はレイブンの三日月型魂草の上にちょこんと座り足をブラブラして下をみた。


 (あれ?何か見たことある草だ)


 僕が粉々にした凍れる草の欠片を下にいるタンポポのような魂草が根をクネクネして抱え込んでいる。


 (おい、あれ取りこぼしたポイントがないか漁りに来たんじゃないか?)


 レイブンに言われ僕はハッとする。この子、僕が最初にポイントを偶然に奪ったタンポポちゃんじゃないか。


 (えっ僕たちに、ついてきちゃったの?タンポポちゃん?)


 (まあポイントは残ってないから、ほっとけばいいか、次のターゲットを探す前に場所を移動するぞ。この冷気はさっきの凍れる草のスキルだと思うが流石に体が冷えてきた。俺は今、魂草状態だからここにあまり居たくない。さっさと移動するぞ)


 (はーい!僕もさっきから寒かったんだ)


 (それにしても、お前自分の羽で飛べるようになったのだから俺からおりろよ)


 (えー!やだー僕クタクタで一歩も動けない。物凄く働いたし!)


 僕がじと目で見つめるとレイブンは渋々僕を乗せたまま、その場をあとにした。



 静かになった氷の湖、中央には魂のポイントを刈り取られ0ptになった動かない鈍く光る石。それを残しゆっくりだがズリズリと黄色い花が彼らを追いかけて、その場を立ち去る。



 そして冷気と静寂が湖をつつみこんだ。

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