4 旅は道連れ世は情け。
生い茂る森の中その声が響いた。
(おい、お前。そこの魂草!)
(お前の事だよ。聞こえているだろう?返事しろ!)
どこからか僕の頭に直接、言葉が聞こえてきた。
(誰?僕に話しかけてるの?)
回りをキョロキョロ見てみるが相手が誰だか全くわからない。もしかして僕の頭の上に落ちてきた黄色いタンポポが喋ってる?
(タンポポさん?あなたが話しているの?)
すると、馬鹿にするような返答があった。
(はぁ~違う、そいつじゃない!俺はお前の斜め上にいる。とにかく、その黄色い花の下から完全に出てこい!話はそれからだ!)
声の指示に従い、頭上のタンポポを自分から生えている触手でゆっくりとどかした。すると視界が開け、頭上に何やら浮いているのが見えた。
かなり大きめのバナナのような形の石。それがフワフワと横倒しになり僕の頭上で浮かんでいる。
なんだあれ!
ブーメランっていってもいいのかな?厚みがあるし表面がゴツゴツしているから石だよね。
(魂石、喋る魂石だ!しかも、変な形)
ずっと、まともな接触を求めていたから凄く嬉しい。
(ねえ!ねえ!君、君も僕と同じ魂石なの?)
頭上の石は僕の近くに浮遊しながら、ゆっくりと近づいてくる。そしてそれはピタリと止まり返事をした。
(あぁ?確かに俺は今、魂石だな…直ぐに人型になる予定だけどな。ていうか…お前はランクアップしたから魂草だろう。それより上手くやったな!見知らぬ他人の魂戦からアッサリポイント奪ってやんの。やるじゃねーか)
その三日月型魂石が浮遊しながら僕の目線までふよふよと降りてきた。
(ランクアップ…あなたは?僕と同じく死んでここに来たんですか?僕、突然ここに来て、よく分からなくて…ここは何なんですか?)
僕はすがりつくようにたたみかける。唯一会話のできる相手に言った。その魂石は嫌そうに、やや後ろに下がる。
その間も常に浮いたはまま。
(おいおい、お前、まさか魂の記憶スキルなしかよ!そんなやつがいるんだな~。はぁ~あきれるわ!それにしてもサクッと魂石から魂草になれたんだから運はいいのか…ということは…こいつを利用してフムフム…)
三日月型魂石はブツブツと何か言っているが最後の方は、よく聞こえなかった。
もう一度、その人に話しかけようとしたが、その声はさえぎられる。
(よし!俺の名はレイブンだ!ここの事が分からないようだから、お前に色々と教えてやる。レイでもレイブンでも好きに呼べ)
思ってもみない返答に僕は喜んでレイブンに返事をする。そして名前を名乗ろうとして自分の名前を忘れてしまっていた事を思い出した。僕、お店に寄って車にひかれ…家族の顔はまだ思い出せる。でも家族の名前は全く思い出せない。自分の年齢は?性別は僕って言ってるのだから男だよね。うっ、思い出せない。
えっ、何で怖い。
時間の経過とともに記憶がどんどん曖昧になる。
僕は不安に押しつぶされる心のまま、この言葉の通じる相手を今、逃したら、このまま何処にも行けなくなると強く感じた。
(あの!ありがとうございます。よろしくお願いします。それで…ここは何処なんですか?)
(まあ、まて!俺もただで教えてやるほど善人じゃないからな)
僕はその言葉にガックリとする。
(お金?僕、何も払えるような物を持っていないんです)
弱々しく言う僕にレイブンは何でもないようにニヤリと笑う。石なので表情はわからないけど、そんな感情が読み取れた。
(難しい事じゃない。お前がこれから手に入れる魂のポイントの半分を俺にくれればいい。それが代金だ!)
(そんな事が出きるんですか…他人にポイントの譲渡が?)
(ああ、できる。でも詳しく話す前に契約だ。その後に知りたいことをゆっくり教えてやる)
僕は右も左も分からない、この場所で訳の分からない状態(石?草?)から、逃れるすべがあるならば是非にすがりたい。だから、その条件を勿論のむことにする。
彼に言われた通りに。
(お前は俺に、この世界の事を教えてもらう代わりに、これから得た魂のポイントの半分を俺、レイブーン・フリューゲル・クローバー・ルルリヤに渡す。期限は、お前が一番大きな中庭町に着くまでだ!)
(それでいいか!!)
何かの力がのった強い言葉が僕の心に重くのしかかる。
一番大きな中庭町とは?
それ以外にこの森に町があるの?
色々と聞きたい事がある。でも、多分契約とやらをしないと教えてくれないんだろう事は明らかだ。今さら嫌とは言えない雰囲気と、その勢いに押されるように返事をした。
(はっ…はい)
すると突然、僕とレイブンが同時に一瞬光った。光は直ぐに消えておさまる。
(えっ、何? 今、光ったよね)
(契約成立だな!)
何となく彼と契約をしてしまった僕は、これからレイブンと、しばらく短いようで長い時間を一緒に行動する事になる。
流されるままに契約した僕は不思議なことに全く嫌な気分ではなかった。
むしろ安堵していた。




