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三ヶ月の雑音

作者: 川浪 オクタ

 人が死なないホラーが読みたい、という投書は、珍しくはなかった。


 担当している作家は、人をよく殺す。

 物語上の必然としてではなく、配置の問題として。

 話によっては、最後には誰も残らない。


 私はホラーが好きではない。

 ただ、仕事だから担当している。


 投書を伝えると、作家は少し考えて言った。


「三ヶ月ほど、あなたを観察させてほしい」


 理由は聞かなかった。

 彼は事実をそのまま使わない人だ。

 組み合わせれば、現実味は消えると知っている。


 三ヶ月前、最初に殺したのは、作家のファンだった。

 設定を教えてほしい、文字数を増やしてほしい、

 住所やプロフィールも知りたい。

 電話とメールが続き、待ち伏せされた。


 場所は海に近かった。

 風が強く、人はいなかった。


 雑音が止んで、頭が静かになった。

 こういう時だけ、自分が生きている気がした。

 帰宅して、溜まっていたメールを処理した。

 原稿の確認も、いつもより早く終わった。


 しばらくして、彼女の恋人が現れた。

 説明する気力がなかった。

 話は長くなりそうだった。


 結果は同じだった。

 二人は、お互いを殺したことになった。

 詳しい調査は行われなかった。

 そういう場所だったから。


 それから、何も起こさなかった。

 仕事は回り、原稿は届いた。

 殺さない、というより、必要がなかった。


 作家からの通知は不規則だった。

 スマホを確認する回数が増えた。

 電子タバコを吸いに席を立つ回数も増えた。

 パターンがないものは、対処が難しい。


 三週間ほどして、空白が気になり始めた。

 手帳には時刻だけが残っていた。


 このページだけクシャとなってしまった


 雑音が止まらない。

 耳鳴りのように、ずっと鳴っている。


 止めればいい。

 分かってる。


 三ヶ月目が近づいたころ、作家から連絡が来た。


「進行には問題ありません。

 今までの行動パターンから補えます」


 それだけだった。


 その日の原稿は、妙に既視感があった。

 登場人物の行動が、自分に似ている気がした。


 彼は、私を見ていたのだろうか。


 行方不明になれば、

 家族への説明が必要になり、

 担当している作家には後任の担当がつく。


 原稿は、滞りなく届くだろう。


 後任の担当者は、

 全員生存ルートの話も良い出来ですね。というだろう。


 私は今もどこかにいる。

 それを、彼が知っているかどうかは、重要ではない。

 本当は、知っていてほしかった。


 作家からの音は、止まらない。


 自分の心臓のように小刻みに

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