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短編ホラー

三ヶ月の雑音

作者: 川浪 オクタ
掲載日:2026/01/24

 人が死なないホラーが読みたい、という投書は、珍しくはなかった。


 担当している作家は、人をよく殺す。

 物語上の必然としてではなく、配置の問題として。

 話によっては、最後には誰も残らない。


 私はホラーが好きではない。

 ただ、仕事だから担当している。


 投書を伝えると、作家は少し考えて言った。


「三ヶ月ほど、あなたを観察させてほしい」


 理由は聞かなかった。

 彼は事実をそのまま使わない人だ。

 組み合わせれば、現実味は消えると知っている。


 三ヶ月前、最初に殺したのは、作家のファンだった。

 設定を教えてほしい、文字数を増やしてほしい、

 住所やプロフィールも知りたい。

 電話とメールが続き、待ち伏せされた。


 場所は海に近かった。

 風が強く、人はいなかった。


 雑音が止んで、頭が静かになった。

 こういう時だけ、自分が生きている気がした。

 帰宅して、溜まっていたメールを処理した。

 原稿の確認も、いつもより早く終わった。


 しばらくして、彼女の恋人が現れた。

 説明する気力がなかった。

 話は長くなりそうだった。


 結果は同じだった。

 二人は、お互いを殺したことになった。

 詳しい調査は行われなかった。

 そういう場所だったから。


 それから、何も起こさなかった。

 仕事は回り、原稿は届いた。

 殺さない、というより、必要がなかった。


 作家からの通知は不規則だった。

 スマホを確認する回数が増えた。

 電子タバコを吸いに席を立つ回数も増えた。

 パターンがないものは、対処が難しい。


 三週間ほどして、空白が気になり始めた。

 手帳には時刻だけが残っていた。


 このページだけクシャとなってしまった


 雑音が止まらない。

 耳鳴りのように、ずっと鳴っている。


 止めればいい。

 分かってる。


 三ヶ月目が近づいたころ、作家から連絡が来た。


「進行には問題ありません。

 今までの行動パターンから補えます」


 それだけだった。


 その日の原稿は、妙に既視感があった。

 登場人物の行動が、自分に似ている気がした。


 彼は、私を見ていたのだろうか。


 行方不明になれば、

 家族への説明が必要になり、

 担当している作家には後任の担当がつく。


 原稿は、滞りなく届くだろう。


 後任の担当者は、

 全員生存ルートの話も良い出来ですね。というだろう。


 私は今もどこかにいる。

 それを、彼が知っているかどうかは、重要ではない。

 本当は、知っていてほしかった。


 作家からの音は、止まらない。


 自分の心臓のように小刻みに

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