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 この国、アストランカ王国では、上位から順に王族、準王族(王族の婚約者のことを指す)、公爵、侯爵、伯爵・辺境伯、男爵、子爵、平民という身分が存在する。


 そんなアストランカ王国のある森に、一人の少年がいた。

「うわーっ、スゲー!さすがに強そうだなあ、Aランクの魔物は!」

 少年、エリック・フォン・ド・フランソワは呟いた。

「よし、今日も依頼をこなしていくぞ!」

 なぜ、エリックがここで魔物討伐をしているのかというと——。


「エリック。お前も今日で成人だ。今後について話がある」

「……?ああ、俺が三男だから、仕事はどうするのかということですね」

「そうだ。例としては騎士であったり、文官になったりする者が多かったと聞く」

(うーん、俺としては冒険者になりたいんだよな……。でも絶対に反対されるだろうな)

「何かなりたいものはないのか」

「……冒険者になりたいです」

 少し考え、エリックは正直に言った。

「は……?」

 彼の父であるフランソワ公爵は自分の息子の言葉に目を見開き、混乱した。

「冒険者、だと?」

「はい。平民として、一から」

 その息子の次の言葉にとうとう幻聴かと疑う公爵。だが、これは幻聴などではなく紛れもない事実であった。

「……………………わかった。何かあればいつでも頼れ。一応戸籍は公爵家に残しておくが、平民としていきたいのであれば自由にすると良い」

 しばしの葛藤ののち、渋々だが許可を得たエリックは、清々しい笑顔で公爵に手を振り、家を出て行った。


(やったぜ……!父上が認めてくれるとは思っていなかったが、認めてくれたな。これで、このチートな能力を存分に試せる!)

エリックは、王都の街道を歩きながら、そう考えていた。


エリック・フォン・ド・フランソワには前世の記憶があり、地球という惑星の日本という島国で暮らしていた。

そしてその国には「異世界転生」という言葉があり、エリックはまさにそれをしたのだ。

そのエリックには神の加護があり、加護を使用することができる。つまり、神の愛し子であった。その加護は質も量もとんでもないもので、前世でいう「チート」な令息に転生したのだった。

そのため、前世で幼いころからあこがれていた冒険者というものになろうと思っていたエリックだが……。


エリックにはある問題があった。

身分である。

エリックは公爵家三男であるため、冒険者になることは良いことではなかったのだ。

跡継ぎの長男、スペアの次男がいたので良かったが、貴族令息が冒険者というのは醜聞がたちかねない。

だからエリックは、今まで誰にも伝えないでいた。


——が。

今日、エリックは十六歳の誕生日を迎えた。

この国では十六歳になると成人とみなされている。三男であるエリックは、家を継ぐわけでもないので、何かしらの職業に就くか、縁談を受けるかしなければならなかった。

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