2-21.消灯と余韻
塔の炎は静かに落ち着いた。
エルヴィスは“事後処理”——現場の検証をしないといけない、と、さっき別れて、今はひとり。
「ソフィアちゃん、あの」
子どもたちを連れたシスターが来て何度も礼を言い、列へ戻っていった。私は小さく首を振り、火の粉の上がる星空を見上げる。
(……守れた。届いた)
胸の内側がじんわりと温かい。
けれど、同時に、針の先で刺されるみたいな痛みもあった。人波が薄くなっていくのに、彼の姿が見えない。
今日、唯一、あの騒ぎの場に出てこなかった。
(……フィン、先輩)
今夜は、誓いの人垣の後ろに一瞬だけ見えた。
苦しげに胸に拳を当てて、立ち尽くすのを。
でも、すぐに見えなくなって、それきり。
「……最近、本当に会えてない」
思い出すのは、図書塔の階段で会った時の息遣い。
短く細かった。
広場の端では、ローゼリアが両手を胸に当て、アレスと話している。
ブルーノとサシャは穏やかな顔で笑い合い、サーチェスは塔にお辞儀をしてから、最後の見回りへ。
アンも軽い火傷をした人へ水を起こして手当をしていた。
「……明日、様子を見に行くわ」
自分に言い聞かせるように呟く。
私の誓いは、もう変わってしまった。
ならば、考えなければいけないことが残っている。それは義務としてではなく、私個人の想いとして。
胸を押さえる。とりあえず今は、と治療の手伝いに足を向けようとしたところで、木立の陰に、風向きを確かめるように空を仰いだ庭師の姿が一瞬だけ見えた。
祭りの夜は、静かな深呼吸のあとで、ゆっくりと終わっていった。
✳︎
明け方、店を畳み、妖精の道へ戻る囁き屋のフードを、誰かがちょんと叩いた。
「おや、旦那」
「悪気はないのは分かってる。ただ——ほどほどに頼む。何かあると、頑張りすぎる子がいる」
風が、いたずらの匂いをさらっていった。
次回【フィンを訪ねに】




