07.ヒロイン判定? 鏡が示した“全部”
規格外。
カッ、と一段と眩しい光が鏡面から放たれた次の瞬間──壊れた玩具のように、真っ白の鏡面がガクガク震え、炎・水・竜巻・砂……あらゆるものが一斉に噴き出した。
教室がどよめく。
「えっ、なんだ? 壊れたのか?」
「違う、出力が規格外だ!」
水は凍り、草の蔓が足元を這う。砂には金や宝石が混ざる。最後に立ちのぼる闇が教室を覆い──ひと筋の稲光に、私は目を細めた。直後、淡く温かな白が舞い散って闇を溶かす。
(なんだ、前回までと同じなのね。ここは変わらない)
魔力は、転生者でも従来のソフィアと同じらしい。
私は、今は見えない彼女の位置を凝視する。
これから、彼女はあらゆる人から興味を持たれる。
その中には、過去に恋人となった彼ら──“攻略対象”も確実に含まれる。
先生が初めて驚いた顔になっていた。混ざり合う魔法の中から現れたソフィアは、無垢の演技へ入る。
暴発は止み、“お片付け”が働く。天井近くで結界が一度だけゴウンと鈍く鳴り、空気がすうっと均される。
「後で工房に回す」
先生がガクガクする鏡を軽く叩き、「残りの生徒の判定は分割実施」とアナウンスする。
ソフィアは“まだ何もわからない”顔。内向きの爪先、組まれた手、「申し訳ない」──謙虚な優等生の印象を教室へ刻む。
「かわいいな」という小さな呟き。
それは確かに“ソフィア”。でも私は、その目の奥の鋭さを見た。
(すごい演技力ね)
頬杖をつき、呟く。
「……どうしたものかしら」
私は、彼女を諭すのはやめた。
──でも、すべてを諦めたわけじゃない。
ふと目が合う。私だけにわかる得意げな笑み。内心、苦笑する。
敵対心を持たせてしまったらしい。本意ではないのだけれど。
(あのね、ソフィア)
聞こえなくても、心で呼びかける。
“友人じゃない”と言ったけれど、情は残る。
繰り返した歳月を、私はずっとあなたに費やしてきた。
あなたが幸せになれた時、私は解放されるのではないか──そう信じてきたから。
しみついた行動理念は、そう簡単には変わらない。
(だから、ハーレムには反対する。でも、あなたが諦めるまで、不幸にならないよう守る)
彼女の安心のために。国の正常な未来のために。
たとえ彼女の夢でも、ハーレムエンドは諦めてもらう。
(協力はしない。でも、火刑台にも上げさせない)
握りしめた手に、白い光が触れた。──瞬間、腕に濡れた感覚が蘇る。
(だって、最後にも願っていたのよ)
どうか、これからも幸せでいて、と。
次回【濡れた手の記憶】




