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親友ポジのタイムリーパーは、転生ヒロインのハーレムを阻止したい 〜台本を閉じる方法〜  作者: 月乃ふくや
はじまり

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06.判定鏡と赤青黄

アンはスキップできないチュートリアル



「本当にどうして……頑固なところだけ、そのままなのかしら」


「えっ、何か?」


 独り言が漏れていたようだ。隣の席の薄茶ショートの少女が首を傾げる。私は慌てて繕う。


「ううん──楽しみだなって」


「あっ、そうだよね!だって、自分の魔法がようやくはっきりわかるんだもん」


 ちょうど、適性と魔力を測る判定鏡の説明が終わり、これから一人ずつ前へ出るところだった。

 この国では属性の正式判定は入学後。

 理由は単純に、国家認可レベルの鏡が少ないから。貴族なら家の鏡で“当て”を持つが、庶民はたいてい白紙のまま入ってくる。


「ドキドキするよね」


「そうね」


「私、家が花屋なの。両親を助けられる魔法だといいんだけど」


「……きっと綺麗な水魔法が使えるわ」


 一瞬きょとん、すぐに笑顔。


「ふふ、励ましてくれてる? ありがとう」


 彼女の名が呼ばれる。駆け足で階段を降りていき、緊張顔で鏡の前へ。

 鏡面が薄い青に輝き、すぐさまシャボン玉がふわりと浮く。


「美しいな。水魔法だ」


「あっ、ありがとうございます!」


 無表情のまま告げる先生。彼女は嬉しそうにお辞儀をして戻ってくる。


「あなたの言った通りになったね!」


(うん、知ってた。それに、この後も)


 入れ替わりで、最前列中央の青髪の青年が立つ。私は鞄の口が閉まっているのをさりげなく確認し、足の裏を床から少し浮かせる。


 次の瞬間──


 カッ、と先ほどより深い青。

 天井に届く勢いの水が噴き出し、全員びしょ濡れ、床は浅い池。


 阿鼻叫喚のなか、当人と先生だけが冷静だ。


「申し訳ありません。僕の魔力が高いばかりに」


「……こちらの想定不足だ。処置する」


 先生が手をひらり。風が走り、制服も床も瞬時に乾く。

 魔法の学園。教室は暴発対策の結界と“お片付け”機能つき。私は鞄と足を床へ戻す。


 青髪の青年が席へ戻ろうとしたところを、赤髪の青年が階段を降りて行く。


(“おい貴様、待て”ってね)


「おい貴様、待て」


(ほら)


「なんだい、君は」


 教卓前で向き合う青と赤の二人。


「俺は、アレス・プロミネンス」


 赤髪が名乗った途端に、ざわつく教室。「侯爵家だ」「プロミネンス……」


「そうか、僕はブルーノ・オーシャンだ。それでは」


 またざわめき。「聞いた名だ」「貴族か?」「違う、平民。でも入試トップ。アレス様抜きで」


 ……うん、人の噂は一番説明が早い。


「おい、そのまま戻る気か? この俺に水をぶっかけておいて」


「意図したわけじゃない。鏡の耐容量の問題だ」


「それで済むと思うのか」


 ガタン。アレスがブルーノの襟を掴み、教壇にぶつける。


「やめなさい」


 先生がため息で割って入り、二人を離す。「戻りなさい」でブルーノは席へ。続けて先生は言う。


「プロミネンス、さっきのことは学校の不手際だ。彼の問題にして突っかかるのはやめなさい」


「チッ……」


「で、次の判定はプロミネンス。お前だが」


「ふん、俺はいい。飛ばせ。あの程度で池になる鏡の耐久じゃ、俺が映ったら教室が炭だ」


「……それもそうだな。わかった。──では次、サーチェス・ブラウン」


 舌打ちで戻るアレスと入れ替わり、短髪の黄色い髪の青年が前へ。すれ違いざまに、テーブルを蹴るアレスの胸を「おい」と小突く。


「やめろ、迷惑だ」


「サーチェスか、うるさいぞ」


「いいから、やめておけ」


 侯爵子息をたしなめる彼は、ブラウン伯爵家の次男だ──アレスとは幼馴染。これは私が過去に仕入れた情報。


「すまない」


 サーチェスが蹴られた席に声をかける。


「いいえ」


 答えたのは、ソフィアだ。

 その控えめな反応にすら、苛立ったアレスは突っかかる。


「なんだ、不満か?」


「いえ、そんな」


 怯えの肩すくめ──だが、私の目には“可憐な演技”。

 サーチェスが再度制し、アレスは渋々ソフィアの隣へ座る。サーチェスは背筋をただし鏡の前へ。


「申し訳ない。お待たせした。よろしく頼む」


 礼儀正しさに、好ましく感じたのか、鏡は金色の光で応える。

 そして──


「……え。いや、これは……」


 ザラザラと滝のように積もる金の砂──砂金。


「あの」


「土属性だな」


 先生は表情を崩さず告げる。


「……一時間もたない魔法の砂金だ。受け取っておけ」


「はあ……」


 一時間でももつなら買い物し放題──と皆が思ったろうが、真面目な彼ならしないという信頼もすでに教室の中に生まれていた。だから、突っ込みはない。


 以降は淡々と過ぎた。欠伸を噛み殺す私。

 やっとソフィアの名が呼ばれ、静かに身を起こす。


 ソフィアが退屈そうなアレスの後ろを通り、ゆっくり教壇へ。

 高鳴る息を鎮める背中に、大聖堂の花嫁が重なる。


 いつもここから、彼女の運命は加速度的に変わっていく。



(……さて、今回は)


 私は目を細める。


 その時、カッ、と一段と眩しい光が鏡面から放たれた──


こういう判定される系の話、好きなんですよね…


次回【ぶっ壊れ判定】明日7時半頃投稿します

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