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親友ポジのタイムリーパーは、転生ヒロインのハーレムを阻止したい 〜台本を閉じる方法〜  作者: 月乃ふくや
文化祭準備編

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47.第一回委員会直後〜第二回委員会の裏で

アンがどうやって文化祭協賛に食い込んだかの裏側回です



 一回目の委員会が終わったばかりのあの日、私はローゼリアにお願いした。


「アン、あなたには恩があります。わたくしに返せることでしたら喜んでしますのよ」


 そう言ってもらえたことに、ほっとした。「ありがとうございます」とお礼を言ってから、話す。


「文化祭の安全面で、マークス商会として“協賛”したいんです。生徒会長──殿下に正式にお話を通したいのですが、私がいきなり商談めいたことをするのは礼を欠きます。ご紹介いただけますか」


 アレスの目が険しくなる。口を開こうとした言葉を先回りする。


「もちろん、決めるのは生徒会と先生方です。私の父は“生徒の決定に従う”が方針。押し売りはしません。先ほど通信室で父に魔導水晶を繋ぎ確認しました」

「あくまで、必要だと私が思ってのわがままです」


 ローゼリアはほんの少しだけ目を伏せ、次いで頷いた。


「わかりましたわ。殿下へは、わたくしから段取りいたします」


「助かります。それと──」


 私は横目で、今にも噛みついてきそうな顔のアレスを見て、口角だけで笑った。


「中庭での“未遂”の件を蒸し返されたくなければ、侯爵家のご子息にもお付き合いを」


「……っ」


 アレスが言葉を飲み込み、後ろでブルーノが噴き出し、ローゼリアは「まあ」と笑みを浮かべた。







 そして、その翌日には、ローゼリアとアレスの仲立ちで生徒会室に向かっていた。エルヴィス殿下は「彼女なら知っているよ、聞こう」と爽やかに。それから話を最後まで聞く姿勢を崩さなかった。



「なるほど。『委員の仕事を助ける仕組みを“先に”敷く』のか。いいね。怪我人が出るよりずっといい」


「──ありがとうございます。テントや舞台設営や魔道具製作に必要な材料以外では、〈矢印シール〉〈監視具〉など…」


「面白いものがあるんだね」


「父が祭りの迷子対策で昔作ったものです」

 

 探してもらったら、巻き取り芯に眠っていた。廃盤になっていたもの——でも、こういう時に役に立つ。

 殿下がぺらりと矢印シールを持ち上げ、フィン先輩が何かに気づいたように鼻先を近づけて首を傾げた。


「ほんの少しだけど魅了魔法の気配がするね…?」


「デザインと色味を工夫したところに、魅了(闇)魔法を聖魔法で薄めたものを、ほんの一振りしているんです。魔道具規格の許容範囲で。よくある“魅了系コスメ/アクセ”と同じです」


 フィン先輩が納得したように頷いて目を細めた。


「なるほどね、“良いところを伸ばして見せる”やつだ。艶はグロス程度。口紅じゃなくてリップクリーム。——通るね」


 彼らしい比喩だ。


「はい。あとは、異常検知用に〈監視具〉……見張り鈴や見張り石とも呼びます。膝丈くらいの高さに設置すれば乳幼児の迷子発生や犬猫などの小動物の侵入にも反応できます。搬入には〈固定座標ロープ〉を」


 私は続けた。


「その代わり、実証試験の枠で今、転移石を生徒会の皆様に預けていますが、文化祭の間は、混み合いますし、混乱を避けるためにも禁止したほうがよいかと」


「うん。では、それで行こう」


 殿下は顧問へ視線で合図し、うなずきを受けた。


「あと、毎年、購買が渋滞するんだよね。そこで詰まると全部遅延する。そこにも助けを」


「父も気にしていました。なので、うちの工房から若手を数名、常駐させます」


「頼もしいね。紹介しておいてくれる?」


 それからすぐ私は父に連絡をとり、リックを呼んでもらった。





「——ところで、マークス嬢」


 帰る直前、殿下が私を呼び止めて尋ねた。


「私と話すのは嫌じゃなくなったのかい?」


 衒いも誤魔化しもない直球の問いに、私は思わず瞬きした。ほんの一拍だけ置いて、口の端だけで笑う。


「いま優先すべきは私の安全じゃありませんので」


 二度パチクリ。それから、橙の瞳が柔らかく細まった。


「なるほど——理解した。……ありがとう」


「はい。それでは文化祭に向けて」


「ああ、みんなが安全に楽しめるよう、手を尽くすとしよう」


 それから二度目の会議で、リックと紹介されたとき、ソフィアの目に一度睨まれたのも、私は静かに受け止めた。



✳︎ ✳︎ ✳︎



 そして、ほぼ間を空けず、私は顧問名義で協賛申請書と物品目録を掲示板に出した。協賛の透明性を示すためだ。

 それでも、生徒たちの間で噂が広がるのは自由。

『マークスが協賛に入るって。委員会にも出入りするらしい』『あの購買ヘルプはマジで助かる』『でも、コネじゃん』



(……これでいい)


「転移石を禁止させるためだけにここまですんのは過剰だったんじゃねーの?」


 昼休み、覗いてみると、購買の搬入口の外。 裏返した木箱に座ってお弁当を開けながら、リックが怪訝そうな顔を向けた。


「矢印シールなんて、地味すぎて売れなかったって倉の二段目に死蔵されてたやつだろ? そんなんまで引っ張り出してきてよ」


「目的は転移石だけじゃないわよ」


 私は答える。


「正直、全員と繋がった時点でもう出会いのイベントをバラす作戦はほぼ破綻してるようなものだったしね」


「じゃあ、何のためだよ? お嬢、前まで、マークスの名前で目立つのは絶対御免だっつってたのにこんな派手に立ち回ってさ」


「今だって御免よ。けど、ひとつに集約される悪意の矛先ほど鋭いものはないでしょ?……あの子に向くものが、ほんの少し削れればいい、それだけ」


 リックが瞬きする。


「はー……邪魔も守りも同時進行——背負うほど刺さるぞ、その矛。前にスカーレット家絡みで一悶着あった時みたいに、会長たちの評判に触らねえ?」


「学生の噂に、根拠なんてないわよ。あなたの仕事ひとつでいずれ黙る。それに、手続きは正式に踏んで、公で突かれるような隙は作ってない。なによりスカーレット家とプロミネンス家、二家からの紹介よ。うちの商品は堅実だし、文化祭でわざわざ大きく宣伝しなくても、終わる頃には、勝手に会社の名が上がる」


「一応、そういう計算はしてんのな」


「私のわがままで、看板を振り回すんだから多少はね」 


「……つまりまた、か。意に介してねえのは“自分の評判だけ”」


「え、何か言った?」


「“聞こえねぇ”よ」 


次回【実行委員、地味に忙しいらしいです】


(投稿時、次回のあと空欄でしたよね!すみません…!実はこの後に入れたくなった話をギリギリまで悩んでいて、その名残でした^^; 失礼しました。ちゃんとまた本日19時半にUP予定ですのでよろしくお願いします。)

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