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親友ポジのタイムリーパーは、転生ヒロインのハーレムを阻止したい 〜台本を閉じる方法〜  作者: 月乃ふくや
悪役令嬢ローゼリアの改稿編

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33.勉強会の休息日と、試験対策と王太子

サシャいい子でいいなぁ。




 そんなことがあった翌日。


 アレスとソフィアが“密室でふたりきりで”過ごした、という噂は抑えられた。

 けれど、アレスとソフィアがふたりで魔法の特訓をしていたこと自体が、一部の噂好きの生徒の間で話題として残った。


 そして、ローゼリアは学年を問わず他家の令嬢たちに囲まれ、朝から放課後まで、私たち勉強会メンバーが近づける隙はなくなった。


「大丈夫ですわ、ありがとう」


「テレーゼ様の魔法の手つきを見て、アレス様がご指導なさっただけだそうですから」


「きちんと報告は受けておりますのよ。ですからあまりご心配なさらないで」


 心配しているのか、それともこの機会に馬鹿にしにきたのかわからない周囲の令嬢たちに、そんな説明を何度も繰り返すローゼリアは忙しそうだ。

 けれど、その表情に必要以上に暗いものは感じられない。 

 遠目にではあったけれど、いつ見ても凛とした態度と笑みを崩していない彼女を、私たちは感心しながら眺めていた。


 一方、彼女と話したあと自分の席に戻っていく令嬢たちは──


「ローゼリア様、思ったより、あまり気にされていませんでしたわね」


「まあ、噂の女生徒は、全属性魔法の適性はありますけど、肝心のその魔法はうまく使えない子という話ですから」


「婚約者の余裕ってこと?」


 なんて、それぞれ少しつまらなさそうに言い合っていたが……


「意外と自分も男性遊びなどされてるからあんな余裕があるんじゃない」


「平民と公爵令嬢が肩を並べて、ねぇ?」


 中には、さらに失礼なことを話しながら離れたところでたむろする意地悪げな顔の女生徒たちが、私たち(主にブルーノ)に視線を向けてくることもあった。


(こっちは二人きりにはさせてないってのに、好き勝手言ってくれるわ)


 彼女たちは、こちらが軽く睨みかえすと、口元を隠しながら慌てて去っていく。


「くだらない」私は頬杖をつく。「ああいう人たちって、他に楽しいことないのかしら」


「とりあえず、噂が落ち着くまでは四人で集まるのは難しそうだね」

 

 私とサシャで話し合った。


「アンはどうする?」


「そうね……ついでだし、私もちょっと別の用事をすませてきたいんだけど、いいかな」


「そうなの? わかった!」


「ごめんね」


「ううん、大丈夫だよ」


 にっこり笑うサシャ。

 けど、その直後に、彼女は「……けど、ちょっと寂しいな」と少しだけ眉を下げて頬杖をつく。


「えっ?」


「えっ?」


 思わず私が聞き返すと、きょとんとして同じように聞き返してくる。

 少し迷ったけど、声を控えて尋ねた。


「久しぶりに、ブルーノ君とふたりで勉強できるし、いいんじゃないの?」


「ふえっ!? なっ、何言ってるの」


「いや……あの、私、結構、強引にここに入れてもらった自覚はあるから。ずっとふたりに申し訳ないなって思ってて」


 ──私の本音だった。


 ローゼリアの成績を確実に上げたいから、ブルーノのところに連れてきた。

 だけど、あまりふたりの関係が良いわけではないのも知っていた。

 だから、緩衝材になってくれそうなサシャがいるときを選んだ。


 そういう、意地の悪い手を使っている自覚もあったのに。

 窺うように顔を見ると、サシャは普通に


「そんなことないよ?」


 とあっけらかんとして言った。


「私は、あまり勉強の難しい話はできないけど、アンがローゼリア様を連れてきてくれてから、ブルーノ君も張り合いがありそうで楽しいし、聞いてても面白いよ」


「そ……う?」


「うん! だから、そんなこと気にしないで」


 朗らかに笑うサシャは本当に気にしていない様子だ。私は肩の力が抜ける。


「……ブルーノ君は、幸運な人ね」


「え?」


「ううん、なんでもないの……ありがとう」


 ブルーノにサシャを差し向けた時は、彼に熱を上げていない女の子なら誰でもいいかな、というぐらいに考えていたのに……。


 思えば、彼は過去周回でもかなりスムーズにソフィアと仲良くなっていったし(チョロ…いや素直な人だったからかな)、その間、血生臭い事件や事故も卒業直前の例の日以外は無事に超えて問題にならなかった。


(本当に幸運な人かも)


 私は、サシャと仲良くなれた彼をちょっとだけ羨ましく思った。






 





 それから、久しぶりにひとりきりの放課後。


 私は、期末試験の過去の問題を持っている上級生をあたっては、お願い事や困りごとを聞く代わりにそれを譲り受けて……といったことを繰り返していた。


「えっと……ああ、さっきので、もう“くれる”人は全員回ったのね。あとは、もうお金で売ってくれる三年生の先輩のところくらいしか当てがないわ……」


 まあ、別に、もう充分と言えば充分なのだけど…。

 

 私は何度も時間をループしているから、当然、試験の問題そのものも“知って”いる。だけど、その記憶を頼りに事前準備をし過ぎると、私たちが試験問題を盗み見たんじゃないかとか面倒な誤解を招く可能性がある。

 だから、証拠として“正当な準備”を積んでおく必要がある。


「この前、スカーレット家を怒らせたかもしれないって父さんに手紙を出してからずっとお小遣い減らされてるんだけど、仕方ないか……」


 自分で書いたメモを見ながら呟きつつ、三年の教室がある方へ向かおうと廊下の角を曲がった瞬間、視界の端で翡翠色の光が弾け──顔を何かにぶつけた。

 「ぶっ」と呻きながら、後ろにすっ転ぶ。


「な、なに──」


「あ、すまない、ぶつかってしまって」


(ぶつかった?)


 ちょっと余所見はしていたけど、さっきまで進行方向には誰もいなかったのに。


 混乱する頭を──というか、ぶつけた顔面を押さえながら立ち上がろうとした私。


 差し伸ばされた誰かの手をありがたく握ろうとして──その瞬間、その声の主を思い出し、ハッと手を引っ込めながら、顔を上げた。


 肩まで伸ばされた橙色のウェーブがかったボブヘアに、同じ色のおっとりとした優しそうな目。すっと通った鼻筋と品の良さを感じる口元。


 王太子、エルヴィス殿下がそこにいた。



次回【アン、王太子にお茶に誘われる!?の巻】

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