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親友ポジのタイムリーパーは、転生ヒロインのハーレムを阻止したい 〜台本を閉じる方法〜  作者: 月乃ふくや
悪役令嬢ローゼリアの改稿編

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30.勉強会発足〜ブルーノ・オーシャンside〜

久しぶりのブルーノ君、問題なくあの子と仲良くしているようです


そこへの乱入w



 壁を天井まで埋め尽くす棚と本。


 もとは石造りのただの冷たい塔だが、長い毛のカーペットを床に敷き詰め、足音を吸収するように作られたこの図書館は、いつでも静かで落ち着いた空間を演出している。


 そして、夏も冬も、紙を傷めないよう温度と湿度が一定に保たれているため、知る人ぞ知る穴場の安息所かもしれない。


 そんな落ち着いた環境で、本の匂いに囲まれて、文字と見つめあい、中の世界に没頭していく……それが心地よいのに、時折やってくる女生徒の声援などで邪魔されると、せっかくの自分だけの聖域が侵されたような気分にさせられて、僕は入学してからずっと不快だった。


 ひとりでいたいと、何度、ため息をついたかしれない。


 だが、最近はそう思うことばかりでもなくなっていた。


 なぜなら──


「ブルーノ君」


 控えめな声に顔を上げる。丸いアクアマリンのような瞳、薄茶色の短い髪。向かいの席から、サシャが口の横に手を添えながらできるだけ周囲に気を遣った小さな声で聞いてくる。


「ごめんね、この魔法の性質変化とその論理がちょっとよくわからなくって……聞いてもいいかな?」


「構わないよ。見せてくれ」


 そう答えると、彼女はパッと表情を綻ばせる。本を持って席を立ち、机を回って僕の横に来る。


「ここの説明文なんだけどね」


「うん。ああ、これは……」


 指で示した本の中の一文をのぞき込みながら思う。


 こうして、この同級生とともに勉強に励んでいる今の時間も、ひとりの時か、それ以上に、落ち着く時間になっている……と。

 

(できれば、いつも、こういう穏やかな時間が続いてほしいものだね)


 まじめな顔で聞くサシャに説明をしながら、感傷にふけっていたその時だった。


「──あっ、いたいた、サシャ!」


 顔を上げる。館内とあって一応は控えめながら、でも、少し慌ただしい雰囲気で女生徒が駆け寄ってくる。サシャが「アン!」と、相手を呼ぶ。聞き覚えのある名。僕自身は接点はあまりないが、サシャが「ブルーノ君のところに行けばいいって、背中を押してくれた友達」と話していた人だろうと推察する。

 前髪を眉よりも高い位置で切っていて、まったく隠れていない額に汗がにじんでいる。下からここまで走ってきたのだろうか。


(なにをそんなに慌てることがあるんだろう)


 そんな疑問を抱きながら、走ってくる彼女の背後を見て——そこで眉をしかめた。


「ごめんね、勉強中に。ちょっと、お願いがあって──」


 息を切らしながら、彼女が半身を避ける。


「いま二人でしているこの勉強会に──彼女も混ぜてほしいの」


「ロ、ローゼリア様!?」


 サシャが素っ頓狂な声を上げたのは無理もない。


 硬い表情の真っ赤な髪の女生徒──他人に無頓着な自分でもさすがに覚えている──ローゼリア・スカーレット。

 以前、アレスに絡まれたあとで、近づいてきた彼女から「貴族でもない者が、気安くアレス様に近づかないでくださいませ」なんて言われたことがあった。


「なぜです? あなたは庶民の僕たちを嫌っていたように思う。わざわざ僕たちと共に勉強なんてしたいと思う理由がわからないが……」


「っ……」


「ごめん、提案したのは私。ブルーノ君の力……知恵を借りたくて」


 答えづらそうに唇を引き結んだスカーレットの代わりに、サシャの友人がそう言った。


「僕の? 何に?」


「次の期末試験の成績で、アレス・プロミネンスを抜く。そのための勉強法を間近で見させてほしいの」


「は?」


 思わず声が漏れた。彼女たちを見つめ返す。

 すると、それまで黙っていたスカーレットが力強く顔を上げたかと思うと、僕とサシャをしっかりと見て、こう言った。


「戸惑われるのは当然ですわ。しかし、わたくしは本気です。ふたりの力をお貸しなさい」


「ローゼリア様、言い方……。ちゃんとお願いしてください」


「していますが?」


「……ハァ…」


「謝礼は必ずいたしますわ」


 サシャと一瞬、ふたりで顔を見合わせた。

 サシャが、おずおずと口を開く。


「なにか事情があるんだよね、アン。……ローゼリア様、私は大丈夫です。だけど」


 そして僕に気を遣うような視線を向ける。

 僕は一瞬迷ったが、少し悩んだ挙句に一つだけため息をつくと、抑えた声で言った。


「……別に、同じ学生同士、勉強をするくらい僕も構わない。大勢で勉強するほうが学びになることもある」


「そう言ってもらえて良かったですわ」


 否定しなかったのは、サシャが受け入れたからだ。にも関わらず、ツンとした態度を崩すことなく当然のように頷くスカーレット。


「ただし条件がある。勉強会は週2回、質問は要点のみ」


「わかりましたわ」


 まだ互いに、越えられない壁がありそうだが……それでも、軽く睨み合う僕たちを前に、仲介してくれた彼女がほっと胸をなでおろすのが見えた。


次回【悪役令嬢ルート、改編ど真ん中】

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