14.図書館の窓の下・届かない足〜ソフィアside〜
ソフィア視点での塔の窓
短いおまけ話です
桜色の髪が、汗で濡れたこめかみにぺたりと張り付く。
「連れ出すのは私のはずだったのに」
夕刻、帰寮時間を告げる鐘が一度、鳴ったところで、私はノートを閉じた。
(次は誰から行くか、よね)
アレスはこの前、温室でサボっているところに出くわして、「起こすな」と怒られるファーストコンタクトをすませた。
ブルーノとは購買前でノートを選んでいるときに会って、「黄色い歓声をあげない女子」を一応は演出しておいた。
——ここまではシナリオどおり。問題は、この先。
残る候補は山ほどある。温室、鍛錬場、飼育小屋、裏庭、街へ降りる道——どこに行けば誰と会うか、いくらでもある。
でも細かい日付や時間までゲームには載ってなかった。
(“最初の一歩”は、外さないほうがいい)
人混みを避けて、時間があれば本の海へ潜る平民の秀才。
授業と食事以外は、たいてい図書館最上階の静域——それが、ブルーノ・オーシャンという人だ。
(場所が読める相手から、確実に押さえる)
そう決めるまでに少し迷ってしまったけど、そのロスを取り戻そうと、できるだけ急いで階段を駆け上がる。
帰寮時間を告げる鐘が重ねて鳴ったころ、ようやく、私は最上階の一番奥にたどり着いた。
——だけど。
「……あれ?」
いるはずの図書館の奥には、誰もいなかった。
がらんとした机。
呆然としていると、ふと、開いた窓の下から、風に混じって男女の声が上がってきた。
——「オーシャン君は優しくて、丁寧で……」
耳慣れた名前と、女の子の声。
そっと窓辺まで歩き、身をかがめて覗き込む。
図書館裏の芝。距離を詰めて立つ二人——ブルーノと、水魔法のクラスメイトの女子。
「……」
どうしてあのふたりが。とか、いろんな疑問は湧くけれど。
喉から出かかったため息を、ひとつ飲み込む。
「次。私──ソフィアは諦めないわ」
小さくそう呟いて、私は窓からそっと身を離れた。
はい!スタートとブルーノ君編は一旦ここまでです
面白ければブクマ・評価いただけると喜びます♪
次回【アン、第二のフラグいじりへ】




