表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友ポジのタイムリーパーは、転生ヒロインのハーレムを阻止したい 〜台本を閉じる方法〜  作者: 月乃ふくや
アン始動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/75

13.サシャの一歩、アンの一手

サシャの一歩の舞台裏と、ちょっと進む関係と、それを塔から見下ろすアン



 ——数日前、悩みを打ち明けた日のこと。


「そうだったんだ……」


 アンは笑わなかった。同情でも軽蔑でもなく、ただ頷いてくれた。


「しんどいわよね」


 少し低めの声に、私はほっとして続けた。


「才能がないのに、居続けていいのかなって」


「そんな。貴族はともかく、私たちみたいな平民で魔法が使えるだけでもすごいことでしょ?……それに、素養なんて関係ないわ。今は弱くても、これから鍛錬で身につければいい」


「うん……。でも、私が一生懸命鍛錬しても、きっとオーシャン君やテレーゼさんの半分くらいのレベルしか……」


 乾いた笑いがひとつこぼれると、アンは眉を寄せて、遠くを見る目で呟いた。


「まあ……うちのクラス、おかしいくらいレベルが高い人が多いから、比べたら——ね。気持ちはわかる」


「ふふ。うん」


 “わかる”と言ってもらえただけで、少し軽くなった。


「んっ……よし。愚痴はここまで! 聞いてくれてありがとう。おかげで、もう──」


 大丈夫、そう言おうとしたときだった。


 次の彼女の言葉に息を呑んだ。


「無理に『大丈夫』って言わなくていいわ、サシャ」


 口調はあっさり。けれど、軽くても、どこか真剣な色も混じった声だった。


「え……」


「ひとつ案があるの。聞く?」


「そんなのあるの?」


「ええ。あのね」


 人差し指を唇に当てて、声をひそめる。


「一年生だけでの実技練習は本来ダメだけど、“見張り役”が一緒なら、先生に申請して許可してもらえる場合があるの。

 まあ、見張り役にも条件はあるけど……“彼”なら、確実に通る」


 私は、そんな抜け穴あるんだ……と思いながら、聞き返した。


「彼?」


「ええ、ブルーノ・オーシャン君に——魔法の使い方を指導してもらえばいいのよ!」


 ——盛大に一拍、間を置いてから……


「そんなの無理!」


 ガタンと椅子を鳴らして立ち上がってしまった。周囲の視線に気づき、四方にぺこぺこ頭を下げて座り直す。


「で、できないよ……」


「え、どうして?」


「天才に『教えて』なんて頼めないよ……相手にされない」


 ——もしくは、馬鹿にされるだけ。そんなの嫌。

 授業中の冷たく見えた眼鏡の奥を思い出して、肩がすくんだ。


 けれど、アンは当然のように言った。


「そんなことないわよ」


 って。


「同じ一年、同じクラスよ。雲の上の人なんかじゃない。頼む前から“相手にされない”って決めつけないでさ」


「そ、れは……」


 返事に戸惑ったのは、アンの言う通りかもしれない、と思ったから。

 噂と印象だけで線を引いていた自分に気づいたからだった。


「言ってみるだけでも、言ってみたら?」


「……うん」


「ちなみに、彼は、だいたいいつもこの奥よ」


 最後に、いたずらっぽくウィンクを残して、アンは去っていった。





 ——そのあと、一晩かけて自分でも考えた。


 実家の両親のこと、私自身の焦り、彼に向けていた劣等感と、勝手に引いていた線……。


 翌朝、思い切ってオーシャン君に声をかけた。緊張で少し上ずりながら、でも、一生懸命に。


 彼は、最初に近づいたときこそ怪訝そうな顔をしていた。けど、きちんと話を最後まで聞いてくれて——そのまま、ディーン先生へのペア練習の申請にも、一緒に来てくれた。


 どうしてそこまで、と聞いたら——


『自分も“地元の先生に教えられて救われた側”だから』


 その一言で、“怖い”という思い込みが恥ずかしくなった。そして、嬉しかった。


 


 自分の胸の内側をそっと抱きしめるみたいに、視線を落として、言葉を探す。


「──実際に接してみたら、本当だった。

 オーシャン君は優しくて、丁寧で……ああ、こういう人だから教え方も上手なんだって。……知れて、よかった」


 すると、彼はわかりやすく真っ赤になって、それを見た私もとたんに頬が熱くなるのを感じた。



〜とある女生徒 side 終〜



✳︎ ✳︎ ✳︎



 ——同刻・塔の窓〜アンside〜


「——とりあえず、ひとりめ」


 塔の窓から見下ろす図書館裏。遠目にも、突然もじもじし始める二人がわかる。


 指先で窓枠をなぞりながら、私はひとり、頬杖をついて呟いた。


次回【ちょっとソフィア】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ