3-24.幕間・短期履修インタールード
祭りは終わった……はずだけど、校舎はまだ少し賑やかな息をしてる。
他校の生徒が少し残って、少し廊下に異国の香りが混じる。
朝イチ、矢印は昼色。
ある教室で、それぞれの国の子達が集まってそれぞれの魔道具や魔法について話していた。
機巧の子が手を上げ「波信ロープ、張り……どのくらい?」と聞けば、海都の子が黒板に弓なりの線を描いて説明。砂海は頷き、北境の子とうちの生徒が腕組みで「なるほど」とか。
外回廊。混みやすい庭の、植木を半歩ぶん寄せ、矢印シールを一枚足す。すると、その周りにも人が来た。
「これも面白いよねえ」
寮内、夜のサロン会。ローゼリアが中心になって集めてくれた、小さな社交場。
集まった女生徒たちへ、ソフィアと私で色の変わる布でドレスやハンカチを作る提案をすると、賛同者が多数手を上げ、“楽しんで流行りを作ろうの会”が成立。
旨味は見せられた。“黒のハート”を頭上につけていた人が数人、少し揺れて……数日かけて通い続けるうちに紫色くらいまでになった。よし。
ある日の廊下の隅では、サーチェスが北境の青年と二言三言。そして握手。たぶん騎士同士で伝わる何かを話してた。
機巧の子、落ち葉を集める柄の長い熊手みたいな箒に小クランクを付けて怒られる。箒がその場でぐるぐる。ジャンプしてまた別のところでぐるぐる。落ち葉を取り去った運動場に、波線で描いた渦巻のような掃き目が残った。
「その模様、舞踏会まで取っとこう。」
砂海の子が愉快そうに言った。
中庭で、海都の楽団とうちの吹奏楽部員たちが、楽譜を真ん中に、額を突き合わせて話すのを見た。真剣な顔で、でも楽しそうに。
噴水脇。砂海の〈日陰の香〉を振ると、人が自然と集まる休憩所になった。
北境の子が、霜織りをセイロみたいに浮かべると日差しが涼しくなって、気持ちがいい。みんな目を細める。
夕方。庭の曲がり角。遠目に見かけた庭師さんが、植木の葉を丹念に見ていた。目が合うといつもの穏やかな笑み。ほっとして、礼だけを返す。
職員室。秋の舞踏会・導線の初稿を出す。
「舞踏会は交流の最後の締めだ。ハメを外しすぎるな」
「でも楽しむこと」
ディーン先生がいつもの口調であっさり言い、隣のタレス先生が付け足した。私は軽く笑って下がった。
夕方。橙色の日差しのなか、ソフィアがやってくる。
「寮まで一緒に帰る?」
「帰る。単独はフラグ」
手首の紐を結び直す。角を立てない結び。押せばほどける位置——癖になった。
気がつけば、季節はいつのまにか秋へと変わろうとしていた。
次回【舞踏会前の誘い】




