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無影灯

フィクションなのです。

誰がなんと言おうとフィクションなのです。

…フィクションなぁのでぇす。

気楽に読んで欲しいのです。


「太陽光などの再生エネルギーは限界です!

特定の国にお金が入るだけです。

私はこの現状を何とかしたい!」


テレビに映る大林議員の演説を聞きながら、

俺はコーヒーを吹き出しそうになった。


都会の隅にある殺風景な廃ビルの一室。

コーヒーで汚れても、

さほど目立たない部屋だが、

俺は綺麗好きなんだ。

自分の周りは…できるだけ汚したくない。


しかし、先生、いい仕事してるぜ。

笑った。たまにはテレビでも

観てみるもんだな。

大林先生、ふはは、

この前まで再生エネルギーを

推進しまくってたのに。


俺の名はスト。

正式なコードネームは

ストーンブレイク。


悪の組織の幹部だ。

国の運営、政権の維持には

どうしても、邪魔な奴らってのがいる。

そこで俺たちの出番だ。


俺は綺麗好きだしな。

邪魔な奴らから光を奪う方法は…


いろいろある…


詳しくは言えないが。


悪の組織の一員…

という認識はある。


クソダサいコードネームも、

クソみたいな仕事も

悪の組織にいる以上、仕方ない。


悪の組織=ブラック企業…

ブラックってイメージがあるかもな。


とんでもない。


漆黒だ。


ただ、大きい仕事が終わったあとは

最高なんだ。

福利厚生がしっかりしている。

長期休暇もあるし、

身元を変えるため、整形もできる。

もちろん無料で。一流の外科医が来る。


例えるなら鎬紅葉しのぎくれはレベル。

私、戦い以外は失敗しませんので。

と宣言できるほどの一流ドクターだ。


バキとかエンタメを

知らない奴には何を言ってるか

わからないと思うが、

思ったことをありのままに伝えるぜ。


俺は異世界転生しなくても

スライムのような件だった。

つまり、ガッツリ鍛えても、

生まれついての体質なのか

スライムのようなだらしない顔だった。

コンプレックスをもっていた。


それがどうだ。組織のおかげで、

いまや大塚明夫の声が似合う

イケてるオッサンに変身した!


…む、いかんな。休暇中に

スマプラ(スマゾンプライム)で

アニメをみすぎた。

アニメと声優にくわしくなってきた。

軍の入隊時に沼らなくて

本当良かった。


しかし…

しかしだ。俺の生まれた、この小さな国。

アニメは最高だ。

まぁ、人間的に素晴らしい奴も多い。

だが、しかし…

隣のデケェ国に取り込まれない

…わけがない。

国の軍隊を辞めて正解だ。

今のうちに用意しとく俺らは勝ち組確定。


バン!


「おやびん!大変でやんす!」

ドアを開けて飛び込んできたのはエイト。


ウチの組織では、

最強の武力。最弱の知能。


俺のことをオヤビンと呼ぶのは

この脳筋だけだ。


「おぅ、どうしたハチ」


俺は逆にハチと呼んでる。

落語みたいで笑えるからだ。


「まともな奴ぅ!まともな議員!

大林とかいうちゃんとした奴が

出てきたでやんす!」


「ああ、さっきニュースで見たよ。

愚民どもにとっては光に見えるだろうな。

希望の光が二つに増えた」


「許せないでやんす!

バカにする奴でやんす!

オイラたちの政党がお金を

もらってる国をォ!」


「エイトさん。移動が速すぎます。」


興奮するエイトのうしろから、

ゆっくりとナインが現れた。


俺の知る限り史上最高に

優秀な部下、ナインだ。


「エイトさん。落ち着いて。

大森議員は特定の国と言っています。

そう、焦らないで。

すみません、ストさん。

エイトさんにネットニュースを

見せたら興奮しちゃって」


「ふはは、だと思ったよ。気にするな。

ハチは任務以外は常時不安定だ。」


「裏切りでやんす!

さっそく大林の家族、

友人を痛めつけるでやんす!」


「エイトさん、

大林先生は敵じゃないんです」


「え!?…ん!?

…そうなんでやんすか?」


「ワハハ、やるな!ナイン!

ハチが落ち着いた。

さすがは心理学部の先生だ。」


こんな感じで今、飼っている手下は

エイトとナインだけ。

ワンからセブンは、もう死んだ。


「元ですよ。医学部で

少しかじった程度です。

専攻していれば、

テンもイレブンも説得できて、

仲間になれたかもしれません」


ああ、そうだった。

テンもイレブンも2日前に

死んだんだった。


「え?あの2人、

裏切り者だったでやんすよ!?

消しちゃダメだったでやんすか!?」


「いえ、気にしないでください。

エイトさんは

しっかり仕事されましたよ。」


「へへへ!しっかり仕事っす!

オヤビンもナインも、

大林先生を消したい時は、

いつでも声かけて欲しいでやんす!

希望の光を消すのは大得意でやんす!」


「おい、ハチぃ。

お前はフィジカル最強だが

ロジカルが足りねぇな」


「フィジカルはカラダってことでやんすね!

えっとロジカル?あ!ロジカルも

知ってるでやんす!

魔法でやんすね!」


「それはマジカルだ。」


「エイトさん。ロジカルとは論理、

いえ、わかりやすく言うと、

ちゃんとした筋道すじみち

理由や順序を考えることです。」


「筋道?」


「ああ、そうだ。筋道だ。

俺たちは影で働くよな?」


「そうでやんすね。だからオイラは

街に行ったり、スマホ持ったりは

しないでやんす!

目立たないのが影でやんす!」


「そうだな。偉いぞ。

影ってのはよ、

強すぎる光が

ひとつだと濃くなる。

影が濃すぎると逆に目立つんだ。

俺たちには都合が悪い。

わかるか?

大林先生じゃなく、

今、本気で国を変えたいって議員

Tって奴がいる。

強い光なんだ。ひときわ輝いてる」


「あ、良いタイミングをみて

消すリストにいる先生でやんすね!」


「そうだ。だが、その良い

タイミングってのが難しい。

消す前に輝きすぎる、

人気が出すぎると、

仕事の難易度が跳ね上がる。

だから無影灯で保険をかける。

知ってるか?無影灯。」


「新しい政党でやんすか?」


「エイトさん、無影灯は手術室にある

照明です。たくさんの光で影を

薄くする仕組みです。」


「たくさんの光は影を

濃くするとおもうでやんす」


「ああ、同じ方向だとな。

だから、いろんな角度から分散させるんだ。

すると影が無くなる」


エイトは首をかしげた。


「まぁ、あれだ!

要するに大林先生は味方だ!

スパイみたいなもんよ。

気にするな。」


「了解でやんす!…影がなくなるなんて

不思議でやんすねぇ〜」


「影が薄まるだけで完全に

なくなるわけじゃないですよ。

目立たなくして仕事の邪魔を

しないようにするだけです」


「おぅ、さすがだな医学部。」


「無影灯は影を完全には消せませんが…」


一瞬、ナインの目が鋭く光った。

…気がした。


「光そのものを断てば、

影は生まれないんです…」


「わはは、光が無くちゃ、

なんにも見えねえぞ」


「大丈夫です。今でも、愚民たちには

なにもミエテませんから。」


その声にはやや熱が

こもっている気がしたが、

俺は笑って流した。

そう流してしまったんだ。


数日後…組織の会議。

廃ビルでの

リモート会議は、老害への

面倒くさい挨拶まわりもなくした。

いい時代になったもんだ。


報告によると

昨日、壊滅した支所が3つもあった。

面倒くせぇ。

今日から忙しくなりそうだ。

どこも人手不足だってのに。

クソみたいな時代だ。


会議終了後、仕事の仕込みのため

外出しないといけなくなった。


廃ビルを出ようとした瞬間だった。

俺は一瞬、背後に殺意を感じた。

遅かった。


「ヴぁ〜」


脾臓にエイトのナイフが

深く入り込んでいた。

言葉がでない。


「おやびん……

おいら濃い影でやんす。

でもナインさんと一緒だったら、

ナインさんと。

おやびんには、ありが…」


くそ、ばかハチ公。

会話のポイントはズレてんのに、

殺しのポイントは絶対ズレねぇ。

「ありがとう」も

聞こえねえってんだよ

バカヤロウ…

ああ…走馬灯もなしかよ…


暗くなっていく視界の隅に

無表情なナインの顔があった。


ーーー


「悪の組織 幹部の失踪」なんて

ニュース…あるわけがない。

あったら、そいつらは二流だ。


大林議員失踪のニュースもない。


ただ、大林議員の勢いが失速して

話題にもあがらなくなった。


そして、壊滅状態の組織では、

ひそかにささやかれる話がある。


ワンからセブンは死んでいなかった。


ナインたちが『整理』したのだと。


今も小さな国の影で、

彼なのか、彼らなのかは

淡々と動いている。


もし、希望の光が現れたとき、


それは人々を救う光なのか、


それとも新しい無影灯の一部なのか。


って話しはどうでもいいか。


もう異世界にも、

現実世界にもいない俺。

真実を見極めるのが面倒くさい愚民たち。


光があろうとなかろうと、

影も形もないような者には…


関係の無い話だ…


________

__________

つまずいたって

いいじゃないか

俺だもの

_____________________

最後までお読みいただき、

ありがとうございましたッっ!!

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