09S.ゴーレム使いの里
宗平君は、美穂を伴い里に帰りました。関係者には、彼女のことは「僕の妻だ。」と、紹介しました。美穂は、まだ此処に来てから、何も理解が出来ないようでした。しかし、嬉しそうな顔でした。「鹿島瑠璃」は、彼女を見ると、懐かしそうな顔を、しました。そして美穂に、話し掛けました。
「淫魔化した人間を、久し振りに見ました。リーリス様は、貴方のことを歓迎します。〝右側神の世界″に、就いた人間をリーリス様は、とても大事にします。人間も魔人も元々は、同種で有り、ゴーレムも同じで、土塊から創られました。神が創ると人間と呼ばれ、魔神が創ると魔人と呼ばれました。ゼビスの神の軍団は、1/3を失い、その補充を、人間を精進させて、基準を満たした者を、充てようと考えて居ます。サタナス様も同じ考えで、前戦では数の劣勢で撤退したので、今度の決戦では、数を上回る人数で、望みたいと考えて居ます。」
「芹澤美穂」は、ここに来てからは「瑠璃の管轄」に、入りました。瑠璃も長い間、人間界で育ったので、話し相手が、欲しかったのです。瑠璃は、彼女のことを普通に「美穂ちゃん」と、呼びました。美穂は、瑠璃のことを「おねぇ様」と、呼びました。彼女は、そのまま「瑠璃の補佐」をする「デュデス(役割)」を、与えられました。
美穂は、宗平君の眷属の中では、1番非力で最弱でした。しかし他の眷属には、誰も真似出来ない、大きな利点を持ちました。それは「魔人の子供」を、産むことでした。彼女は、彼の眷属の中では唯一、宗平君の子供を産むことが、出来ました。彼女は、その日から「公平君の第1婦人」に、成りました。
シャロンは美穂が、この里に来たときは、少し複雑な感情を、持ちました。しかし彼女は、ランクの上がった「ゴーレムの上位種」と成ってからは、以前のような嫉妬を込めた眼で、彼女を見ることが、無くなりました。モナは、初めて見る「人間淫魔」に大変、興味を持ちました。
それから美穂も、宗平君達が住む館に、部屋を与えられました。彼女は「彼が傍に、居てくれれば、何処でも良い。」と、思いました。自分は、何時の間にか、彼の妻の座に、就きました。今では、定期的にマスターの淫魔液の供給も出来たので、以前のような、飢餓状態に成ることが、有りませんでした。
あの飢餓の苦しみを、知った彼女に取っては「もう二度と、あの苦しみだけは、味わいたくない。」と、思いました。彼女は、その苦しみから逃げるように、人間を辞めました。彼女は、もう二度と人間界には、戻れませんでした。しかし不思議と後悔は、有りませんでした。マスターの傍に居られれば、苦しまずに済む。ただ、それだけの理由で彼女は、此処に来ました。
「ゴーレム使いの里」の統治も、順調に進みました。瑠璃の身体は、元のロリ巨乳態に、戻りました。どうやら完全に変わった訳では、無かったようです。彼女が、元の姿に戻ると、この里の「使い魔」の評判が、急激に良く成りました。使い魔達は、皆ロリ巨乳好きが、多かったようで、瑠璃は一躍、里の人気者に、成りました。皆一様に、彼女のことを「ルーリー様」「ルーリー様」と呼んで、慕われました。
宗平君も姉が、元の姿に戻ったので、大変喜びました。「姉は、あの姿が一番似合って居る」と彼は、最初から思いました。それから「ジェイミーとフローラル」は、宗平君のゴーレムでしたが、最近は「瑠璃ちゃん」「瑠璃ちゃん」と、彼女の名前を、呼びながら、グルグルと、彼女の周りを飛び回って、一緒に居る時間が増えました。
どうやら彼女達の活動エネルギーを、瑠璃からも、補充が出来るように成りました。これで、この2体は「鹿島瑠璃の専属の護衛」が、可能と成りました。
宗平君は、思いました。「原初の魔神リーリス」は、女型属性を持ちました。そして、その姉は、リーリス様の唯一の「ドペル(分体)」でした。ドペルとは「本体に、良く似た存在で有る。」と、言われました。その為「リーリス様も本来は、あのような姿を、して居るのかも知れない。」と、思いました。それから彼らの、ここでの統治者生活も大分、軌道に乗りました。
後は、この里の先に有る「魔界の森」と、称される「バフォメトンの森」の統治も、始めなければ、成りませんでした。宗平君も瑠璃も、余りこの森についての知識を、持ちませんでした。そこで、この里の族長で有る「ガルガンディア・ガルン」に聞くことに、成りました。ガルンは、さすがに族長だけのことも有り、森のことを、良く知りました。
「魔界の森」は、正式には「バフォメトンの森」と、呼ばれました。その森の名前で有る「バフォメトン」とは、そこに住む「魔女達の創造主」で有る、魔神の名前でした。その姿は、両性具有で大きな乳房を持ち、黒山羊の頭と、黒い翼を持つ、太古の魔神でした。錬金術を行使して、その森を創ったと、言われました。
向かって右手を上げて居ました。これは「溶解させる」と言う意味が有り、向かって左手は下がって居ました。これは「凝固させる」と言う意味が、有りました。これが錬金術の基本的な考え方でした。「溶かして(分解して)固めよ」「分析して統合せよ」「解体して結合せよ」と言う意味を、その姿で表しました。
この魔神は、最近「右側神サタナス」からの誘いも有り、ダルタニアの中心に、聳え立つと言う「神塔(バーベルの塔)」に、移動しました。その為、この森林地帯までが「魔神リーリスの管轄」と、成りました。その森までが、新たな「淫魔界」に、入る予定でした。
この森に生息する、代表的な魔人類が「バフォメトンの森」の魔女でした。彼女達は、両性具有の魔人でした。身長が皆、均一で有り、高さが160cm前後でした。極端に背が高かったり、低かったりが、有りませんでした。両性具有者と、言われましたが、見た目は、若い娘のような姿でした。
胸は、全員膨らんで居ました。しかし股間には「男型の生殖器」が、有りました。「女型の生殖器」も、保持しており、陰嚢の裏側に、ひっそりとした膣穴のみが、有りました。そこには大陰唇も小陰唇も無く、ただ秘穴だけが、有りました。それは伸縮性が有り、指2本位で有れば、楽に飲み込むことが、出来ました。
髪の短い魔女は、美少年のように見えました。美少年のように見えても、胸が膨らんで居ました。何で膨らみが有るかについては、理由が有りました。それは淫魔のように、相手の体内に「体液」を放出して、それをエネルギーに変換後、自分の活動エネルギーとしました。そして使った後の、余った養分を乳房に貯め込んで、相手に飲ませる為に、乳房が有りました。此処の魔女達は、淫魔と同じようなことをして、生きました。
胸の膨らみは、無くすことが、出来ませんでした。「男型の生殖器」を、任意の力で、一時的に消すことは出来ました。それが無くなると「女型の生殖器」が、急激にそのものに、変化しました。大陰唇も小陰唇も有る、普通のそれに成りました。この魔女が「人間界」に、侵入するときは、必然的に「女性形態」での活動と、成りました。
この魔女は、攻撃系の魔法を得意としており、主に自然現象系の魔法が、使えました。それは風の玉や、火の玉を飛ばしたり、電撃や真空刃も飛ばしたりが、出来ました。短時間で有れば、空中を浮遊したり飛んだり、そして格闘術にも、秀でて居ました。稀に、創造主のような「アルケミス(錬金術)」を、使える者も居りました。
それから此処の魔女達は「魔法使いの杖」を、使いませんでした。直接自分の人差し指を、相手に向けて、魔法を発動しました。「バフォメトンの森」の魔女は、何処かの「魔法使い」のように、大きな帽子を被ったり、箒に跨って飛んだり、杖を振り翳して、何でも魔法が使えたりする訳では、有りませんでした。
この森の支配者階級は、その昔「魔神バフォメトン」が直接、錬金術で生み出した、魔女達の子孫でした。その為その魔女達は「錬金の魔女」と、呼ばれました。その他の魔女は「大樹の魔女」と、呼ばれました。「ゴーレム使いの里」にも居る「大地の使い魔」と同じような、人工的に生み出された魔女達でした。この「大樹の魔女」は、生き物でしたが、生物のように繁殖することが、出来ませんでした。
「大樹の魔女」とは、一体何処から、生まれるのでしょうか。それは「太古の魔神バフォメトン」が、その昔「大樹の魔女」を多数、生産する為に、錬金術で造って設置した「魔女の大樹」から、生み出されました。その大樹が自動的に、この森の魔女の数を、調整しており、魔女の数が減ると、その分その大樹から魔女が、生まれる仕組みに、成りました。
「ゴーレム使いの里」でも「古の使い魔」と「大地の使い魔」の対立が、有りました。そして此処「バフォメトンの森」での「錬金の魔女」と「大樹の魔女」との対立は、かなり深刻なものでした。この「淫魔界」は、何処かの国の、悪魔界や地獄界と同じような場所でした。破壊や殺し合い、騙し合いは、当たり前の如くに、行われました。
族長のガルンが「バフォメトンの森」に関する、不思議な話しを、聞かせてくれました。この森の或る場所には「不可侵領域」のような場所が有り、そこには小さな館が在りました。周りを塀で、ぐるりと囲まれて居るような、場所でした。館の中には、美しい若い娘が1人居て、ペットのような生き物達4匹と、仲良く暮らしました。
そのペット達の1匹は、中型犬のような姿をして、もう1匹も中型の猫のような姿でした。この2匹は、いつも女の子を守るような、素振りを見せました。後の2体は、一羽がオウムのような、白い鳥の姿でした。この鳥の頭には、黄色いトサカが有り、怒るとトサカが広がり、相手を威嚇しました。
この鳥は、いつも彼女の右肩に止まり、対面者を見て居ました。そして最後の1匹は、鱗の有るトカゲの姿でした。いつも彼女の腕の中に、抱かれて居ました。この少女の名前は「リアンナ」と言い、この館の主人でした。
彼女達は、この「バフォメトンの森」に、初めの頃から存在しました。しかし彼女達が、この森のものに干渉したり、その塀の内側から、こちら側に来たりすることは、有りませんでした。魔女達も「あの館には、干渉してはいけない」と言う、何か大きな存在から、命じられて居るようでした。また館の住人達も「こちらのものには一切、関わってはいけない。」と、命じられて居ました。「この物語には、干渉しない。」と言う、不思議な存在でした。