07S.シャロンのアニマス
宗平君が子供の頃に「使い魔」の母親が、自分の胸の中から、大きくて丸いゴーレムの「アニマス(根源)」を出して、彼に見せてくれたことが、有りました。それは、彼が初めて見た、ゴーレムの「青いアニマス」でした。
母親が言いました。「宗平ちゃん、これがゴーレムのアニマスよ。とても綺麗でしょう。この子は或ることで、自分の体を失ってしまったのよ。だからこうして、私の体内に、保管して居るのよ。マスターは、自分のゴーレムで有れば、アニマスを取り出した後に、自分の体内に、保管することが、出来るのよ。何体もね。強くて優秀なゴーレム程、アニマスが大きくて、とても綺麗な〝青白い光″で、輝いて居るの。」と、語りました。
それから「ゴーレムの体は、普通は岩石と土塊から出来た、岩の塊のような怪物だけれども稀に、私達のような人型をした〝上位種のゴーレム″が、生まれることが、有るのよ。」と、言いました。「その上位種のものは、全てのゴーレム達を、マスターの代わりに、使役することが出来るの。そして全てのゴーレムの攻撃を、無効化することも出来るのよ。凄いでしょう。言わば〝スーパーゴーレム″のような存在ね。だけど残念だけど私は、まだ、それを見たことが無いわ。」と、言いました。
そして「その〝上位種のゴーレム″は、特殊な使い魔のみが、生み出すことが、出来るのよ。」と、言いました。「それは宗平ちゃんのような、淫魔と使い魔の両方の力を、併せ持つ者の、ゴーレムの中から、生まれるらしいの。もし、それが誕生することが、有れば、それは大変、素晴らしいことよねぇ。」と母親は、目を輝かして言いました。
また母親は「宗平ちゃんの誕生そのものが、極めて稀なケースで有ったのよ。」と、言いました。それは「使い魔と淫魔」は、別種の魔人類同士に成るので、中々ツガイには、成り難いのでした。しかし宗平君の両親は、極めて相性が良い為、稀なケースとして、彼が生まれたらしい。どうやら彼と、シャロンらは、稀なマスターから生まれた、極めて稀なゴーレムと、言えそうでした。
宗平君は一時期、人間界で、父親と姉の3人で暮らしたときが、有りました。そのときは、3体のゴーレム達も一緒でした。しかし母親の里に帰るときに、旧シャロンのみを、その家に置いて帰りました。その理由は、子供の頃の宗平君は、旧シャロンの容姿が「不気味で怖かった」為でした。長い間、旧シャロンを、そこに置いて行って、しまったのです。
旧シャロンは、マスターが傍に居なく成ると、直ぐに動けなく成りました。そして元の空気注入式人形に、戻りました。それから折り畳まれて、押し入れの奥の方に、片付けられたのです。数年も経つと、暗くて湿気も多かったので、虫が湧き、カビが生えて、ネズミに齧られて、ビニールが劣化して、ボロボロに成りました。この家に、戻ったのは、父親が亡くなったときでした。十数年近くが、経ちました。
宗平君達は、部屋の後片付けをすると、遅く成ったので、姉と2人で休んで居ると、押し入れの奥の方から、ガサゴソと、何かが這い出て来そうな、音がしました。そして障子が開くと、中から出て来たのは、ゾンビのように、ボロボロに、変わり果てた「旧シャロン」でした。姉は、飛び上がる程に、ビックリしました。しかし彼は、それが、旧シャロンで、有ることが、直ぐに分かりました。旧シャロンが、彼を見ると「マスターお久し振りです。」と、挨拶をしました。
宗平君は、旧シャロンの、その声を聴いたとたんに、涙が込み上げてしまいました。彼は自分が、何と言う悪いマスターで有ったのかと、そのとき思いました。自分の大事な「ファミル(眷属)」を、十年以上も、ほっと居たのです。彼は暫く、旧シャロンを、抱きしめたまま、泣きました。
そのときは、日が暮れて暗く成りました。宗平君は、旧シャロンを、抱き抱えると、裏庭に連れ出して、地面に寝かせました。そして彼女の胸の中に、手を差し入れて、暫く探りました。そして「彼女のアニマス」を見つけて、取り出しました。ゴーレムのアニマスは、その所有者のみにしか、扱うことが出来ませんでした。
旧シャロンのアニマスは、驚く程に大きくて、そして「青白くて綺麗な色」で、光り輝いて居ました。宗平君は、その美しい輝きに、驚きました。昔、彼に見せてくれた、母親のゴーレムの、アニマスの輝きの比では、無かったのです。彼は、このゴーレムは「特別な存在で有る」と、そのとき初めて知りました。
もう暫く、そのアニマスを、見たかったのですが、近所の目も有るので急いで、宗平君の胸の中へと、収納しました。旧シャロンのアニマスが、彼の体内に格納されると、その古びた素体は、直ぐに瓦解して、消滅しました。
旧シャロンのアニマスは昔、母親が、彼に自慢げに見せてくれた、母親のゴーレムのアニマスよりも、遥かに大きくて、綺麗な光を放って居ました。この母親が言うには、ゴーレムの強さは、アニマスの「大きさと、輝き」で決まると、言いました。何時の間にか彼女は、とても「強いゴーレム」へと、成長しました。
シャロンのアニマスを、体内に収納した宗平君は、暫く彼女を新しい素体には、移行させませんでした。置いて行ってしまった、彼女へのお詫びも有り彼は、自分の体内で、暫く彼女を、育成することにしました。
ゴーレムのアニマスを、初めて自分の身体の中に、収納した宗平君は「アニマス」と、言うものを少し、理解出来るように、成りました。それはゴーレムとは、マスターに取っては、恐ろしい存在ではなく、どちらかと言えば「自分の魂の分身」のような、子供のような、自分の化身でした。マスターが、恐れる存在では、無かったのです。その後、彼はシャロンと共に、彼女の新しい素体選びを、始めました。今の彼女に、良く似合う「上等で綺麗な素体」を探したいと、思いました。
シャロンが、求める素体の条件とは「第1に女性態」で有ること。彼女の、アニマスの属性は「女型」で有るからです。そして1番大事で重要な条件としては、①マスターが、好きに成ってくれる、素体で有ること。②マスターのお気に入りで、有ること。「これが絶対条件だ。」と彼女は、言いました。その為、宗平君の好みで、選んだ素体が「彼女とモナの素体」でした。
宗平君は、決めるときに「シャロンの素体」を、どちらにしようかと、迷うときに、彼女が「私は、こっちが良いので、あっちのものは、私の新しい友達として、マスターが、もう1体のゴーレムを、あの素体を使って、創って欲しい。」との願いを、叶えたときでした。彼女は「ジェイミーには、フローラルと言う、同じ背丈の友達が居るので、自分にも自分と同じ、等身大の友達が欲しいから。」と、彼女は希望を、述べました。それから彼女とモナの「新しい素体」を購入して、現在に至りました。
シャロンが、新しい素体に移行して、アニマスとの一体化が完了すると、以前とは、比べようが無い程の、綺麗で可愛い「大変美しいゴーレム」に、変わりました。宗平君は、彼女が生まれ変わると、彼女には、とても優しく接するように、成りました。それと1日に何回も、彼女を強く抱き締めることが、彼の日課に成りました。それは以前よりも、美しく成ったからでは無く、旧シャロンの最後の姿を、見たからでした。「自分のゴーレムを絶対、あんな〝酷い状態″に、してはいけない。」と言う、戒めからでした。
宗平君達の歓迎会も終わり、新しい屋敷が、与えられました。「ゴーレム使いの里」の「族長の広場」の近くで「ガルガンディア・ガルンの屋敷」の隣に、建って居たものでした。それは良く似た、双子のような屋敷でした。屋敷の周囲には、ガルンの大きくて強力な、6体の岩石ゴーレムが、守護しました。向かって左側の館が、族長の館で、向かって右側が「宗平君と鹿島瑠璃の館」に、成りました。この館の中の護衛は、宗平君の「4体のゴーレム」達でした。
シャロン達は、宗平君の部屋に有る隣部屋の「控えの間」が、待機所に成りました。彼女達は、ゴーレムなので食事もしないし、水も飲まず、排泄もしませんでした。そして、呼吸もしないし、睡眠もしない。彼が就寝中の時は、必要に応じて活動停止をして、待機モードに成りました。シャロンとモナは、淫魔系ゴーレムなので、数日に1回位の割合で、宗平君とネトリをして、彼女達の体内に、彼の「体液(淫魔液)」を、吸収することにより、半永久的に活動する力を、得て居ました。