06S.リーリスの再臨
瑠璃達が「ゴーレム使いの里」に到着すると、そこには現族長で有り、宗平君の弟で有る「ガルガンディア・ガルン」が、待って居ました。「ガルガンディア」とは、里の言葉で「族長」を指す、言葉でした。宗平君は、里の言葉で「ガルガンディー」と、呼ばれました。その意味は「族長を補佐する者」と言う、意味でした。
この里の代表的な魔人は「使い魔」と、呼ばれました。岩石で体を構成された、強力なゴーレムを作り出して、それを伴い戦うことが、出来ました。淫魔よりも格段に、攻撃力が高くて、防御力も優れました。
この里の「使い魔」達は、フード付きの魔術師達が、良く着るような、布製で防御力の高い戦闘服を、日常的に着用しました。彼らの容姿は、一様に「ゼビスの人類」と、同じような姿でした。彼らは、人間のように食事をして、人間のように排泄しました。人間のようでしたが、彼らは「とても強い力」を持つ、魔人類でした。「ゼビスの人類」とは「中央神ゼビス」が創った、人間のことを言いました。
里の「使い魔」達には、2種類のものが存在しました。1つ目が、支配者階級で有る「古の使い魔」と、呼ばれる者でした。それは「右側神サタナス」の、直々の配下で有る者達の子孫で有り、生物のように、自己繁殖が出来ました。
そして2つ目が「大地の使い魔」と、呼ばれる者でした。彼らは、里の奥まった所で「聖なる大地」と、呼ばれる林のような場所が、有りました。そこの地中から、たくさんの触手が伸びて、その先端が膨れると袋状に成り、そこから「大地の使い魔」の胎児が実って、生まれました。
子供が発生しない管の先端からは、何かの粘液のようなものが出て、それを容器で、溜めて置くと、やがて一杯に成りました。それを生まれたばかりの、赤ん坊のミルクとして、飲ませました。この「聖なる大地」一帯からは、不思議な心臓の鼓動のようなものが、地下付近から、響きました。そして、その音を胎児達は、子守唄代わりに聞きながら、育ちました。
この場所は「右側神サタナス」が、自ら「使い魔」の数を増やす為に、創られた岩場で有り「大地の使い魔」の数が少なく成ると、この大地の管から、その胎児が生まれて、彼らの人口調整をしました。彼らは、自分達の力では、繁殖が出来ませんでした。
この「大地の使い魔」は2対1の割合で「男型」の者が多く、生まれました。それは戦闘に成ると、男型の方が、有利に戦えるからでした。また「女型」も、生まれました。しかし彼らは、自己繁殖しないので「疑似の生殖器官」は、有りましたが、子作りは出来ませんでした。彼らは「古の使い魔」のように、男女でツガイと成り、同じ「大地の使い魔」の子供を引き取り、疑似親子と成り、家庭を持つ者も居りました。
数は、少ないのですが女型の「大地の使い魔」には「疑似の生殖器官」が、有りました。妊娠はしませんが、ネトリは可能でした。女型は、それをすると快楽を、得られました。しかし男型は、勃起も無く、快楽も有りませんでした。どちらの「使い魔」も、ゴーレムの構築能力に於いては、同格でした。この2系統は、対立関係も無く、概ね関係は、良好でした。
ガルガンディア・ガルンは「宗平君達を歓迎する。」と言って、里の広場を、案内しました。そこには、この里に居る全ての「使い魔」達が、集められました。瑠璃は「これで全員か。」と、彼に聞くと宗平君は、弟で有る「族長のガルン」に聞いて、確認をしました。
「ガルガンディア・ガルン」は、全員で有ることを、承認しました。瑠璃は、それを聞くと、広場の前方に有る、族長の席の背後に有る、どこよりも高い位置に、配置された「統治者の椅子」と、呼ばれる「里の玉座」に向かい、そこに座りました。その玉座は、未だ嘗て、この里では誰も座ったことのない「神聖な場所」でした。
その席に、瑠璃が着席すると「使い魔」達の間で、どよめきが起こりました。気に入らない者達が、多数居るようでした。すると周りが一瞬で、嫌悪な雰囲気に変わりました。すると突然、上空に暗雲が広がり、瑠璃の着座した辺りから、途轍もない邪悪なオーラが、拡散しました。そして周りに、複数の落雷が落ちました。
その途轍もない威圧感に驚き、宗平君の小型ゴーレムで有る、ジェイミーとフローラルが恐れ慄き、彼の内ポケットに、逃げ込みました。上位種で有るシャロンとモナも、怖気づき、彼の後ろ側に逃げました。
何時の間にか、瑠璃の居た場所には「原初の魔神リーリス」が、頭上に現れました。魔神が「統治者の椅子」の近くで立って居ると、その黒い外骨格の仮面が、中央より左右に開くと、不機嫌そうな「真っ赤な顔」をした、女の顔の鉄仮面が、表れました。その仮面の眼の部分から、人間のような目が浮き上がると、それが別の生き物の眼に、変わりました。
そしてカメレオンの眼のような動きを始めると、特に不満気に、どよめいて居た辺りの「大地の使い魔」の集団が次々と、藻掻き苦しみました。内部から破裂する者や、突然火だるまに成り、焼け死ぬ者、逃げ出して突然、ゴーレムの最後のように瓦解して、憤死する者が、多数現れました。
「原初の魔神」の「リーリスのクビキ」が「ゴーレム使いの里」で、初めて行われたのです。クビキが、長い時間続いて一段落すると、魔神の「赤い仮面」が黒く成り、外骨格の仮面が、左右から閉じました。すると魔神は今度、腰に装着された、禍々しい光を、放つ黒い片手剣「聖剣・黒威の剣」を引き抜くと、一同目掛けて、切り付けました。
それは一瞬の出来事でした。それを受けた者は、例え「古の使い魔」でさえも、内心不満気に、反対する者で有れば、全て切り殺されました。また恭順の意が有る者は、何故か無事でした。これから敵対するであろう「邪魔な使い魔達」が、全て居なく成ると「魔神リーリス」は、目的を達成したのか、突然消えて、先程「統治者の椅子」に、座って居た瑠璃が、現れました。そして瑠璃が「統治者の椅子」から、何気なく降りて、地上に立つと「使い魔」達の、彼女を見る目が変わりました。
それを見た宗平君は、思いました。「姉は〝魔神リーリスのドペル(分体)″でした。ドペルで有る姉は、何時でも何処でも、姉の居る場所で有れば、一瞬で魔神リーリスと、入れ替わることが、出来たのです。姉が、自分らの傍に居ると言うことは、即ち〝原初の魔神リーリス″が、傍に居る。」と、言うことでした。彼が思うことは、弟のガルガンディア・ガルンも同じでした。彼も、その弟のガルンも「姉には、絶対逆らわないことだ。」と、心に誓いました。
周りに、邪悪なオーラが無くなり「魔神リーリス」が、居なく成ると、安心したのか臆病な「ジェイミーとフローラル」が、宗平君の内ポケットから出て来ました。彼の周りを暫く、飛びました。そして安心を確認すると、急いで瑠璃の元へと、飛びました。「瑠璃ちゃん、大丈夫だった。あの魔神様に、連れて行かれたのかと思ったよ。」と言って、心配そうに、彼女の周りをグルグル、飛び回りました。
シャロンとモナも、ゴーレムでしたが、生まれて初めて、恐怖を知ったようでした。シャロンは、瑠璃のことを昔から良く知って居ましたが、彼女にそのような秘密が、有ることを今回、初めて知りました。彼女は驚きの顔で、瑠璃を見ました。それから、宗平君とガルンと瑠璃の3人で「里の統治」について、話し合うことに、成りました。
「ゴーレム使いの里」には「古の使い魔」と呼ばれる、淫魔界で言う処の「はぐれ淫魔」に、相当する「右側神サタナス直々の配下」の眷属が、居ました。サタナス直々の配下とは「右側神サタナス」と共に戦った、天界の1/3の天使の末裔でした。
その直々の配下の末裔達が、代々「ゴーレム使いの里」の統治を、担って居ました。そして「右側神サタナス」が、配下の使い魔達を増やす為に、新たに「聖なる岩場」を創り、そこから生まれた使い魔達が「大地の使い魔」と、呼ばれました。彼等は、戦闘要員のようなものでした。
その「大地の使い魔」達も、何世代と生きる内に、知恵を身に付けて、言うことを、聞かなく成りました。また力も強く、数も多いので、益々統治が難しく成りました。その為「新たに始まるで有ろう〝魔神リーリスの統治″を、将来的に邪魔するで有ろう者達の、処分をした。」と言うことは、極めて有効な手段でした。
「魔神リーリス」に、処分された使い魔のたくさんの遺体は、暫くすると全て、消滅しました。今の里は、何事も無かったかのように、静まりました。宗平君達の「歓迎の宴」は、後日に延期されました。
シャロンとモナを、食い入るように見て居たガルンは、宗平君に言いました。「兄貴よ、あれは兄貴のゴーレムなのかい。ゴーレムを、あんなに綺麗な娘に、変えることが、出来るものなのかい。もしそれが出来るので有れば、僕にも教えて貰いたいものだが。」と、希望を述べました。
彼は「ガルンよ。僕は、君も知っての通り、土塊からは、ゴーレムを作り出すことが出来ない。あれは市販の人形を長い間、操ってアニマスを発生させて、僕の父さんが、性欲処理人形として、使い出したのが始まりなのさ。その後も頑張って使役を続けて居たから、誕生した稀な存在なのだよ。」と、言いました。
「僕が、淫魔系使い魔で有ることも影響したのか、シャロンは、上位種のゴーレムに変貌した。そして2体目のモナも、彼女の影響で同じように、変貌することが出来た。」そう語る宗平君は、かなり自慢気に話しました。そして彼は「ガルンよ。今度、良いシリコス素体が入ったら、君にも提供して上げるから、ガルンも使役してみると良いよ。」と話すと、弟のガルンは、目を輝かして喜びました。
彼は、弟のガルンに、そのような話しをしたら昔、族長の娘で有る母親が、息子の彼に、語った話しを、思い出しました。それは、ゴーレムが持つ「青いアニマス」についての話しでした。