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ウワサの婚約破棄とは存外楽しいものですわね

作者: アーク

わたくし、マリー・アンナ=ノーデンは今最高に愉快な心持ちをしておりますの。


本日、成人祝いと婚姻披露を兼ねたパーティーにおいてルドルフ王太子殿下から婚約破棄を言い渡されましたの。


え?


普通、落ち込むものではないのか、ですか?


そうですわね、普通、生まれた時からの婚約者であり、殿下の為に血反吐を吐く思いで妃教育や礼儀作法を身に付けた令嬢ならば、魔法学園に特例の編入生として現れた男爵令嬢がわたくしが長年尽くしても手にする事の出来なかった殿下の心を射止めたとあれば、ええ、憤慨して、未来の国母らしからぬ振る舞いをしてもおかしくはないのでしょうね。


殿下に擦り寄る金髪碧眼で華奢な姿の、―――キャロライン・ヴァネッサ男爵令嬢は目尻に涙を浮かべてわたくしが彼女に対してどれほど酷な振る舞いをしたか、と語って同情を誘っておりますが、


そも学園にてわたくしは特進クラスであり、キャロライン嬢は普通クラスと、クラスが違う事を、殿下もご存知の筈ですわよね?

全くの別棟で授業を受けておりますし、顔を合わせるとしても昼時のランチタイムくらいしかありませんわよ?特進クラスのある棟と普通クラスのある棟は距離にして1時間程離れておりますし、授業の合間の休憩時間(約25分程)にやったのだ、と言われましても…。


殿下はその程度の単純な計算も出来ない程に愚かでしたかしら?


後ろで頭を抱えていらっしゃる国王陛下の姿が痛ましいですわね。


「マリーさま、どうか罪をお認めください!!そうしたら私も、マリーさまを赦す事が出来ます!!」

「貴女がわたくしの名前を呼ぶ許しを与えた覚えはなくてよ、キャロライン男爵令嬢」


わたくしは冷ややかに彼女の姿を見る。


キーキーと熱くなっているふたりの様子に、王妃様が大きく溜息をついてわたくしに声を掛けてくださいました。


「マリー。貴女の特殊能力(スキル)を愚息とそこな男爵令嬢に見せておやりなさい」

「宜しいのですか?では、失礼して…」


この世界には魔法が存在します。

魔法は火、水、風、土、光、闇と言った種類があり、生まれた時からいずれかの魔法の才能を神から与えられる、と言われています。


ですが、全くの能無しも稀にいます。

ええ、わたくしです。


わたくし、魔法()一切使えませんの。


だからこそ、魔法属性において稀有な光属性を持つ男爵令嬢に惹かれたのかもしれませんわね。


ところで、殿下も教育課程で学んだ筈だと思うのですが、―――能無しの中には稀に、特殊能力(スキル)持ちがいるのです。

能無しでも、特殊能力(スキル)があれば魔法を使える者と変わらぬ程重宝されるのです。


「確かマリーの特殊能力(スキル)【好感度の可視化】、だったか?それがどうしたと言うのですか、母上」

「黙って見ていなさい、愚息」


まずは、殿下の方から。わたくしは慣れた手つきでソレを開示する。


【ルドルフ・ワーグナー】→【マリー】 35%

【ルドルフ・ワーグナー】→【キャロライン】 100% キャロライン・ヴァネッサによる魅了の術式による()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「…は?」


殿下は何とも言えないぽかんとした顔で、間抜けな言葉を口にする。


本来わたくしに向けられていた好感度がキャロライン男爵令嬢に補填されて目の前で愉快に恋に恋をしている御二方を作り上げたのだとするならば、随分と殿下に想われていましたのね、わたくし。


キャロライン男爵令嬢が編入するまでは、殿下とわたくしは他の令息令嬢から羨望の眼差しを受けているな、とは思っておりましたが。


さて。


結果は見えておりますが、男爵令嬢の方の好感度も可視化しておきましょう。


【キャロライン・ヴァネッサ】→()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「そんな!!こんなもの、嘘よ!騙されないでください、殿下!!」


学園の問題行動として既に王家の耳にも入っている情報を嘘だとおっしゃるなんて、面白い方ね。


「殿下の想い人が娼婦紛いの女でも宜しいならば、わたくしは構いませんわ。婚約破棄、謹んでお受け致します」

「はやまらないで頂戴マリー。わたくしは【解呪】の特殊能力(スキル)持ちよ。愚息に掛けられた魅了の術式なんて直ぐにでも解けるわ」

「お心遣いは嬉しいのでございますが、王妃様。殿下(アレ)は既にあちらの令嬢と肉体関係を結んでおりますわ」


わたくしには婚姻まで清い関係を、と言っておきながらこの体たらく。魅了の術式に掛かっていたとしても、避けようと思えば避ける事が出来た筈ですわよね?

魅了や洗脳は、本人が無意識下で拒絶する行動は出来ないと先人の研究論文で分かりきっている事実。


【キャロライン・ヴァネッサ】

【種族】()()


あら、この情報開示は―――


「マリー!マリー!マリー!!あんな尻軽に騙されて軽薄王子と化した馬鹿王太子なんて捨てて皇宮(実家)に帰っておいでなさい!!」

「やはりシャルロットお義姉様でしたか」


お兄様の妻であるシャルロットお義姉様は、お兄様と大きく歳の離れたわたくしを実の娘の様に溺愛しておられる【ステータス開示】の特殊能力(スキル)持ちの御方です。


お兄様が呆れた顔でわたくしを抱きしめて離さないシャルロットお義姉様を見ております。


『ルドルフ王太子殿下はダメよ!!』


とむかしから仰っていましたが、シャルロットお義姉様は何かご存知だったのでしょうか?


「…おかしい、おかしいじゃない!!【好感度可視化】も【解呪】も【ステータス開示】も、ホントならアタシの能力じゃない!!なんで悪役令嬢とモブふたりがその力を持ってるのよ!!!」


彼女、何を仰っているのかしら?


魔法と特殊能力(スキル)の両方を持つ人間なんていないでしょうに。

この世界に生まれた人間は魔法か、能無しか、特殊能力(スキル)持ちだと言う事は幼子でも知っている事実だと言うのに、―――嗚呼、乱れた私生活と【聖女】と言う謳い文句が【好感度可視化】【ステータス開示】によって剥がされ明かされた事で混乱していらっしゃるのね、可哀想に。


―――ひとまず、わたくしは祖国には帰らずこの国に留まり殿下と男爵令嬢の沙汰を待つ事に致しますわ。


シャルロットお義姉様に号泣されましたが、大騒ぎとなった今回の件、後始末まで見届けねば面白…気が治まりませんもの。


この騒動に区切りが付いたら祖国に戻るのも良いし、この国で研究者として働くのも良いですわね。

王妃様とは良好な関係でありましただけに、家族になる可能性が限り無くゼロとなってしまった事は些か悲しゅうございますが、祖国に戻った場合は外交の機会で会う事もあるでしょうし、この国の研究者になれば研究室の管理は王妃様がなさっていますし、良き友人となれる可能性はありますわね。

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