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空の魚  作者: 天野つばめ
17/24

二人なら怖くない

 それでも流れ星を見るとどうしても「今が永遠に続きますように」と願ってしまうのは性のようなものだけれど、俺たちは空を駆け抜ける魚たちに祈るのではなく、水槽の中の魚を卒業して自由になるのだと決めた。魚の精霊、軍神アンタレスと裁きのズベン・エス・カマリのように。3年生になった俺たちはてんびん座流星群、さそり座流星群を穏やかな気持ちで見送った。

「夏休みに東大のオープンキャンパスがあるんだけどさ、一緒に来てくれる?」

 ゴールデンウィーク明け、スイが切り出した。

「通ってた中学と系列の高校が港のすぐ傍で……」

 スイの怯えた顔を見て、スイをいじめた奴等への怒りが蘇る。

「じゃあ俺も行く。お前のこといじめてたやつに百倍返ししてやるよ」

「危ないから、そこまでしなくていいよ。一緒にいてくれるだけでいいから。あの人たちいつも5人でいるし」

「俺が負けるわけねえだろ。昔絡んできたやつ7人返り討ちにしたことあるから」

 スイの不安の表情が少しずつ消えていく。

「誤爆したら俺が犯罪者になっちまうから、お前が裁きたい奴見たらちゃんと俺に教えてくれよ、“裁きのズベン・エス・カマリ”」

「はい、“軍神アンタレス”様」

 スターワールドを作ったばかりの頃、ふざけて呼び合ったあだ名で呼ぶと、スイは笑ってくれた。


 翌日、スイは印刷した地図に赤ペンを何か所か入れた物を持ってきた。

「ここのエリアが廃線になってて、この区画は立ち入り禁止になってないはず。で、ここからここまではバスが通ってるから、タクシーなしでいけるんじゃないかな」

 俺がキョトンとしているとスイは昨日のことかのように言った。

「こーちゃん、本土の廃線を冒険したいって前に言ってたからパソコンで調べてきた。せっかくこーちゃんが一緒に東京来てくれるんだしさ」

 10年前のことをよく覚えているなと思った。そういうところが、友達甲斐のあるやつだ。

 出発は8月13日、ペルセウス座流星群が極大を迎える日。奇しくもその日は、日本から火星探査機が打ち上げられる日だそうだ。2003年に「のぞみ」が通信を絶って以来の打ち上げで成功すれば日本史上初の火星探査成功となる。


 高3の夏、俺たちは2人で大冒険をする。

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