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9話 コスモス展覧会(1)

2024年8月9日


 日本最大級の展覧会が開催されている会場【コスモス】には、キルズの四人がいつものように盗みを働きに来ていた。


 しかし今回は以前までとは違い、展覧会がまだ開催されている時間帯に一人の観覧者として来ている。もちろん変装をしているためたとえ顔が割れていたとしてもバレることは無い。まぁ普段から仮面をしているため顔がバレていることは無いが。それほど精密な変装マスクを付けている。


 なぜ今回は変装をして侵入しているのか、その理由は単純で警備が厳重過ぎるからだ。それほど今回の宝石はレベルが違う希少価値がある。それもそのはず、『赤星(あかぼし)の石』、別名、火星の石。その名の通り火星の石で出来た宝石だからである。


 これを盗もうとすること自体愚かな行為である。


 しかしそれを行うのがキルズである。


「あれだね、火星の石とやらは」


 セレブの格好をする四人、アゲハは宝石を見ながら三人に言う。


「じゃ、様子見ながら盗んじゃいますか」


「……アゲハちゃん、急いだ方がいいかもしれません、さっきから周りの雰囲気に違和感が────」


 ミナが周りに違和感を感じたその時、突如扉が閉まった。


「あまり私達を見くびらない方がいい、さらに今回は日本最大級の展示会だ、そう易々と盗むことは不可能だ」


 四人は声のした方を振り向く。閉じられた扉の前には無名の結社のリーダーと、クゼツが立っていた。


「結社……どうしたんですか、二度も私達を逃したというのに、またのこのことやってきたんですか?」


 アゲハは邪悪な笑みを浮かべ結社を見る。いまだに変装をしているためいつもの仮面は付けていない。


「あぁそうだ、私達はお前達を捕まえるか、私達が死ぬまでお前達を追い続ける」


「へー、ほんと威勢だけは良いですよね、自分はなんにも出来ないくせに」


 アゲハは結社をバカにするような目で見る。


「脳筋バカには言われたくないセリフだな」


 結社は武器を構えるが、キルズには無意味だということは分かっている。


「さてと、じゃあーやりますか? 【吸血鬼の力】を持った私達と」


 アゲハはそう言い終えると変装していた服を脱ぎ捨て、いつものマスクを顔を見れない速度で付ける。戦闘を開始しようとしたその時、突如クゼツは吹き出す。


「ぶっ! おいおいおたくのリーダーはそんな簡単に力のことを話しちゃうのかー? いつだか私をバカだとか言ってたけど、そっちも同じじゃねぇか。な? シロちゃん?」


 そう目を合わせながら言われたシロは嫌な顔をする。


 6月、セレニティホールでシロと戦ったクゼツはその戦闘を忘れずにいた。敗因は突然のキスによる動揺。そんな負け方を二度もするほどクゼツは弱くない。次シロとタイマンした時、どちらが勝者になるのかは予想出来ない。


「脳筋バカさん? ごめんなさーい、今日は試合にすらならないよてーなので、そんな煽りは意味ないですよー、てか普通に効かないし」


 シロはニッコリ笑顔でそう言い返す。


「まだ余裕ぶるか……お前らなんでそんな変装しててキルズってバレたのか分かってるか?」


 クゼツは監視カメラを指さして続ける。


「あの監視カメラを通じて私達の仲間がお前達を入口に入った時から監視している。あのカメラにはちょっと特殊な機能が付いててな、変装していようがキルズだってことは分かんだよ」


 アゲハとシロは興味のない話を聞く時のようにどうでもいい表情をしている。シアは無表情で、結社の二人を見る。ミナは相手を見定めるかのような表情をしている。


「つまりな? お前達と今対峙するまでに、こっちも色々対策できたんだよ」


 クゼツがそう言うのと同時に、建物の外からヘリコプターの音が聞こえてきた。何事かと思いアゲハとシロは外を見る。


「ほー、随分物騒なヘリコプターですねー、まぁこの時代なら呼ぶこともできますか、どうするんですか? まさかあのでっかい機関銃でも撃つつもりですか?」


 今機関銃を撃てば、キルズに命中させることはできるが結社にも当たることになる。つまり撃つことは自分を犠牲にしてまでキルズを殺す()()をするということだ。


「まさか、あれは“お前達を逃がさないための道具”に過ぎない……そろそろか」


 ヒカリは後ろの壁につけられている時計を見て、意味深にそんなことを言う。時刻は11時58分を指していた。


「そろそろ? 12時に何かあるんですか?」


 ヒカリにつられてキルズの四人も時計を見る。


 ────────その時。


「シアちゃん危ない!」


 どこからか飛んできたナイフを、アゲハは防ごうとしたが。


「うッ!」


 ナイフが左腕に刺さり、血が流れ落ちる。


「アゲハちゃん! 大丈夫ですか!」


 ミナは心配そうにアゲハの元へ駆け寄る。幸い、腕にナイフが刺さったものの、傷は浅く重症ではないらしい。


「うん、私はだいじょぶ、それより、このナイフはどこから」


 ナイフを抜きながらアゲハは飛んできた方向を見る。


 ────いつからそこにいたのか、本当に分からなかった。


「結社?」


 そこにはロングヘアーの無慈悲に人を(あや)めていそうな雰囲気の少女がいた。


 もちろんキルズが攻撃されるまで気が付かなかったのは結社の力、【幽霊の力】があったからだ。


「そこの結社さん、シアちゃんを狙ったのは偶然ですか? それとも、殺す気があったんですか?」


 アゲハは傷を負った腕を押さえながら珍しく強い口調で言う。


 もしもアゲハがナイフを防がなかったら、ナイフは確実にシアの頭に当たっていただろう。それは言うまでもなくシアを殺していた。


「…………どうしてそう思ったのかは知らないけど、そうだよ」


 ハナは袖口から新しいナイフを取り出す。それは何の変哲もない、ただのサバイバルナイフだった。


 ハナはナイフを顔の近くに持ってきて、笑った。


「狂った妹は、()()()()()()()


 狂っているのはお前の方だろと言いたくなるような、狂気じみた赤い眼光をシアに向けていた。


 ハナと目が合ったシアは死んだはずの人間を見る顔をする。それはつまり、目の前にいるハナは、紛れも無く自分の姉だということを認めたということだ。


「どうして、お前が結社に」


「妹が反社だからだよ」


 それ以上の話し合い不要なのか、ハナは自分の後ろにある扉から部屋を出ていった。さらに、いつの間にか他の結社もいなくなっていた。


 シアは明らかに動揺していた。アゲハとシロはシアに姉がいた事、さらにその姉が自分達の敵である結社であることに驚き、情報を処理しきれていない様子だった。


 この状況を作る事が、結社が考えていた作戦だった。もちろんこれはキルズを捕らえるための準備段階に過ぎない。捕らえる作戦はここからが本番だ。

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