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34話 最終決戦(1)

 『(きた)る九月二十二日、《混沌の塔》に参る

              kill's vampire────』





 9月22日


 快晴の天気。完成した《混沌の塔》は朝日に照らされ輝いていた。その塔の元には大勢の人々が朝から集まっていた。そのほとんどが反社だった。


 一方結社はその現場を遠くから見守っていた。何か行動を起こせばすぐに制圧にかかる準備はできていた。


 10時。ついに《混沌の塔》の入口が開かれた。高さ510m、地上100階、地下5階。《平和の塔》と全く同じ構造の塔の中に多くの反社が入り始めた。


 オープニングセレモニーは12時からで、そこにkill's vampireが参上するらしい。


 ヒカリ達『無名の結社』は幽霊の力を使って《混沌の塔》の中に潜んでいた。


「開始まであと二時間か、キルズの動きはどうだ、ミミ」


 クゼツはノートパソコンを膝に置くミミの方を見る。今日は珍しくミミも同伴していた。ミミ曰く今日くらいは一緒にいたいらしい。それを聞いたハナはミミをからかい、からかわれたミミは機嫌が悪かった。


「今のところまだ動きはないですよ、他の反社達も多少の争いは発生してますがトラブルは起こってませんね」


「disasterは、流石に見つからないか」


 今日disasterが来るとヒカリが言っていた。ならばdisasterが来ると想定しておいた方がいいだろう。事前に見つけることができればこちらとしては有利になれるが……。


「はい、あの人達を見つけることは不可能ですよ。なんせ伝説なんですから」


「まぁいい、とにかく私達はここで待機だ」





「さぁぁぁてと、そろそろいきますかー」


 《混沌の塔》から数百メートル離れたビルにいるキルズは、その塔を眺めていた。いつもの白い仮面を被り、ビルを降りる。すでにほとんどの反社は中でその時を待っていた。


 ビルから飛び降りたキルズの三人はあっという間に《混沌の塔》に到着した。


「うわぁおー、すごいねこれは」


 多くの結社が待ち構えていた。その数ざっと数えて百人以上。さらにその多くが反社達から危険視されている結社だった。


「わざわざこんなに集まってもらって、すごい歓迎されてるねー」


「歓迎などではない。宵花シロ。お前達を捕まえにきたのだ」


 結社のリーダー格のような人が言った。右手にはWPAC専用の拳銃が構えられていた。


「一歩でも動けばすぐに撃つ」


 黒く長い髪が靡く。彼女は輝いていた。そして、圧倒的強者感を放っていた。しかし、


「そんな脅し、無意味だってことは分かってるでしょ、そこを退いてくれません? 邪魔なので」


 アゲハには彼女もただの結社のひとりにしか見えていなかった。一歩踏み出したアゲハに向かって一発発砲した。


 慈悲などなく、ヘッドショットを狙った弾丸はアゲハが顔を傾け避けた。


「kill's vampire、お前達は何がしたい、disasterになって、これ以上この世界をどうしたいんだ」


「世界を変える。それだけですよ」


「世界を変える? ふっ、はっはっはっ! やっぱり反社ってのは愚かだな。これ以上世界を壊したどうする? お前達は人類を滅ぼそうとでもしているのか?」


「disasterならそれぐらいのことはするでしょう」


「それはdisasterでもなんでもない。ただ自殺願望のある者だ」


 アゲハは結社にゆっくりと歩み寄る。


「そうですか、だったらこの銃で私達を止めればいいんじゃないんですか、そちらは百人以上、私達はたったの三人ですよ。

 さぁ、これなら、確実に殺せますよ」


 アゲハの(ひたい)に、銃口が当たる。覚悟が決まってるアゲハの顔を目の前にして、彼女はたじろいだ。


「ふっ……そうですね、ならお望み通りっ!」


 ゼロ距離射撃、不可避の攻撃を、彼女は放った。しかし────


「────こんな攻撃じゃ、私達は倒せない」


 アゲハは弾丸を避け、彼女を気絶させた。その瞬間を見た他の結社達は全員、戦う気を失った。なぜなら今アゲハが気絶された結社は、WPACの中で最強の結社だったからだ。


 無意識に道をあけ、巨大なビルの入口を開けた。キルズは中へ入っていった。


「何者なんだ、キルズってのは……」


 一人の結社がそのような事を呟いたが、それは全員が知りたい謎だった。





 《混沌の塔》内部へ入ったキルズの三人は迷うことなく最上階へ向かう。エレベーターの中は静かで、それと同じくらい三人の心は静かだった。これから最後の戦いをするとは思えなかった。


「いよいよですね」


「なんだか実感が湧かないんだよね、ここまで来たのに」


 アゲハは自分の手を見て言う。


 姉に見つけてもらうために反社をしてきたが、ついにここまで来た、あるいはここまで来てしまった。


 エレベーターはゆっくりと速度を落とし、停止した。扉が開くとざわめき声と多くの人の姿が見えてきた。


「おお! キルズが来たぞぉ!」


「新たなdisasterの誕生だ!」


「キールーズ! キールーズ! キールーズ!」


 その場にいる全ての反社が沸いた。


「いやぁまさかこんなに期待されているなんてね」


「素顔も見せない私達に期待を寄せるとは、反社も落ちたものですね」


「最初から反社なんてそんなものですよー」


 多くの反社がひしめき合う中、エレベーターから伸びた白いカーペットを三人は歩く。その先には一つの椅子が置かれていた。非常にセンスのない、格好悪い装飾が施された椅子だった。


 拍手喝采を浴びながら、キルズは椅子の元まで来た。


 アゲハを真ん中にして三人は並んだ。すっと手を挙げてアゲハは静寂を求めた。


 静かになった後、さらにたっぷり時間を置いてからアゲハはちらりと外を見る。報道用ヘリコプターが何機も飛んでいた。恐らくこの空間の音も聞こえているだろう。


『始まるぞ』


 多くの結社は結社の臨時本部からその光景を見ていた。


「皆さんご存知の通り、私達はkill's vampireです。そしてお察しの通り、今日、私達は重大な発表をします」


 白い仮面の少女の顔は見えないが、きっと笑っているだろう。反社は「おお!」と歓声を上げた。


「さてその発表は何か? 知りたいですよね? まあまあそう慌てないで、教えますよ、今すぐに」


 それはついこの間決めたものだった。この世界をさらに壊滅に導き、disasterになるために考えたことは。


「私達、kill's vampireがリーダーとなって、反社の連合軍を創設します。これは任意で入るものではありません。強制です」


「強制だぁぁ? クソガキが、調子こいてんじゃねーよ。妙な力を持ってるだけで、あんまりイキんなよ」


 全ての反社がキルズに賛同している訳ではなかった。この中にもキルズを気に食わないと思っている者もいる。しかし今まで何も声が上がらなかったのには理由があった。それは簡単なことだ。


「うん。だったら死んでください。この連合に参加しないという反社は全員反逆者とみなし殺しますから。でも参加してくれるという人は安心してください、これからはさらに自由に動くことができますし、邪魔な敵共(結社)も滅ぼしましょう」


 これを聞いた反社は雄叫びを上げた。またテレビやネット中継を見ていた民間人は泣き叫んだ。そして、結社は、ビルに突入した。

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