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3話 【無名の結社】について

2024年5月27日


 無名の結社の創設理由は『この狂った世界を元に戻すため』それに加え『kill's vampireの確保』だ。具体的な活動内容は街で暴れる反社の確保だ。特に最近はキルズ確保に力を入れている。


「みなさんお疲れ様でーす」


 石竹ミミは肩にかけてたカバンを長机に放り投げるように置いて席に座る。


 蝶光(ちょうびかり)高校出身、 石竹(せきちく)ミミ17歳、結社最強のハッカー。ハッカーという役目は今の時代必要不可欠なものだ。反社の動向を探るにも、逆にハックしてくる反社に対抗するためにも。


 ミミは一見パソコンになんて全く興味がない女子高生という見た目だが、以外にもパソコンのスキルレベルは高い。防犯カメラをハッキングしてキルズの動向を追うこともよく行っていることだ。


「お、ミミお疲れー。今日は遅刻しなかったな」


 蝶光高校出身、 蒼薔薇(あおばら)クゼツ18歳、結社最強の格闘家。格闘家、その名の通り近接での殴り合いなら最強。それは吸血鬼の力によって常人よりも遥かに強い力を有しているキルズにも通用する程だ。


「私だって毎日遊んでばっかじゃないですよ」


「いや結構遊んでばっかだろ、お前」


 短く切られた青髪に、お姉ちゃんと呼ぶより姉貴と呼ぶ方が似合いそうな風貌のクゼツは呆れ顔でつっこむ。


「……さて、全員集まった事だ。部活動という名のキルズ確保の為の作戦会議を開始する」


 蝶光高校出身、虹色(にじいろ)ヒカリ4月の早生まれで18歳、結社最強の策略家。キルズに対してはまだ成果を挙げられていないが、他の凶悪反社を捕らえた作戦は全てヒカリが考えた策である。それは一部の反社達が警戒するほどだ。しかしヒカリの所属する結社の情報は何も無かった。


 今彼女達がいるのは学校の空き教室。彼女達無名の結社は『新古今和歌集研究部』という、高校生なら誰一人興味を示さない部活の中で結社の活動を行っている。部活動のために空き教室を自由に使っていいということを利用して結社の本拠地としている。


 もちろんこんな名前にしている理由は誰にも知られたくないからである。


 彼女達のような結社は基本隠密に隠れながら、秘密裏に活動をする。”それが連合に入っていない“結社なら尚更だ。


 結社というのは普通『世界平和結社委員会』(WPAC)という多くの結社が参加している連合に入る。この連合内で他の結社と連携して反社を捕らえたり、物資の補充などを受ける。結社に比べて反社の数は数倍にも及ぶため、単独で行動するのは難しい。


 だからこそ、彼女達はより一層自分達の正体がバレないように行動している。


 しかし、そんな彼女達はとある()を持っている。


 【幽霊の力】、この力により、彼女達はそこにいるのにいないかのように影が薄くなっている。学校で知り合いとすれ違っても話しかけられることはない。教師から指名されることもない。前に、キルズとすれ違った時にキルズが見向きもしなかったのはそもそも歩いていたことすら認識していなかったからだ。


「次にキルズが狙うであろう宝石はこれだ」


 そう言うとヒカリはホワイトボードに一枚の写真を貼る。


「6月1日、セレニティホールで展示される宝石『エターナルナイト』、先月有名な反社が盗みに行くと宣言し、ネットで話題になっていたが、結局それは失敗。そんな宝石を彼女達が狙わない訳が無い」


 無名の結社、省略し結社は、それなりにキルズのことを調べていた。なのでキルズがこの宝石を盗みに来るというのは予想できた。


「まぁあいつらなら来るだろうな、それで?」


 ヒカリとは長年の付き合いであるクゼツは慣れた様子で会議に参加している。


「あぁ、キルズが来ると予想し、私達は捕らえる為に会場に張り込む」


「張り込むって言っても、私達全員がいたらあいつら来ないんじゃないんですか?」


 ミミはツインサイドの赤髪を揺らしながらツリ目でヒカリを見る。


「そうだな、いくら目立ちやがり屋の奴らでも、私達全員がいれば来ない可能性が高い」


 確かに結社は幽霊の力によって見つかることは無いが、それが最初から警戒している場所ならば話は別だ。警戒しながら会場に入ってくればさすがに気付かれる。


 そう結論付け前回のスターファイヤの時はキルズが侵入してから少し遅れて建物に入ったが、結局無様に逃げられてしまった。


「だから今回は交代で、一人づつその場にいてもらう」


「一人でか、まぁ上手く潜む事は出来そうだが、結局逃げられるんじゃないか? なぁ? ハナもそう思うよなぁ?」


「……ね」


 蝶光(ちょうびかり)高校出身 白雅(しろみやび)ハナ18歳、結社最強の暗殺者。口数は少ないが実力は確か。暗殺における能力はチーム一で、今までも何人もの凶悪な反社達を葬ってきた。それを成すのに使用している武器はナイフ。いつだかシロの部屋で持っていたものだ。


「その心配は無い、もしもキルズと対峙することになった場合、すぐに警報スイッチを押せ、そうすれば入口の全てに電気シャッターが降り、警備員数十人が来る手配になっている」


「手配?」


「あぁ、【セレニティホール】の支配人兼今回の展示会の目玉である『エターナルナイト』の持ち主のウィンダー・ヴァイルさんとは既にコンタクトを取っている、対策はできている」


「ヒカリ先輩、いつの間にそんなことしてたんですか……」


 ヒカリの早すぎる行動にミミは驚愕を通り越して唖然としていた。


「なるほど、対策はできている、か……」


 クゼツはヒカリならそれぐらいやっているだろうという態度を見せる。


「まぁだが、恐らく奴らは一人で来るだろう。あくまでも勘だがな」


 ヒカリは両手を組み顎を乗せて目を瞑る。


「勘か。んじゃ奴らは一人で来るってことか。ヒカリの勘は当たるからな」


 ヒカリは策略家においても優秀だが、勘という運のような力も加わってさらに高度な作戦を考えられる。


「それじゃあ本格的に会議を始めていく」


 ヒカリのその言葉に、室内の緊張はさらに高まった。これから話し合うのは結社にとって大事な戦いの話だ。キルズに一度敗北し、二度も敗北するなど許されない。絶対に捕らえる為に、ここ最近で最も真剣に思考する。





 会議が終わった帰り道。


「作戦当日まであと一週間もない、全員準備は怠るなよ」


「もちろんですよ、私もこれ以上奴らを野放しにしたくないので」


「お、ミミ〜珍しく気合い入ってんなー?」


 昇降口から出て、校門へと歩く。グラウンドには誰もいなかった。反社が増えた以降、運動部系の部活は極端に減少した。なぜならもはや大会を開催することすらままならないからである。そんな余裕はこの世界にないのである。


「いつも気合い入れてますよ……」


 ミミはいつものように呆れたように受け流す。しかしその目はいつもと違った。


「そうか? 私には結社なんかより友達と遊びたいといつも思っているように見えるぜ?」


「そんな訳ないじゃないですか」


 苛立ちを含むミミの少し大きな声に、三人は立ち止まりミミを見る。


「反社は、私にとって害虫なんですよ、殺さないといけない生き物なんですよ。結社の活動をどうでもいいなんて全く思ってません」


「クゼツ、からかい過ぎ」


 口数の少ないハナから注意されたからか、クゼツは反省するように謝る。


「すまんミミ。少しふざけが過ぎた」


「いえ、別にいいですよ…………あと私友達いないですし……」


 しょんぼりしているクゼツはいきなりのぼっち告白に驚く。そして、親友に話しかけるような言い方でフォローする。


「何言ってんだよ! 私達がいるじゃないか!?」


 ここで目をキラキラ輝かせて「クゼツ先輩!」、と、言うことは無かった。


「…………そうですかっ」


 頬を赤く染めミミは顔を逸らす。何もそれだけで恥ずかしがる必要なんてないだろ、と言おうとしたがそれを言うとまたミミが怒りそうなので言わないことにした。


「それじゃ、また明日」


 校門まで来て、帰り道が違うヒカリは一足先に別れた。


「おう、またな」


 去っていくヒカリの背を見て、クゼツは片手をあげる。





「ただいま」


 と言ってみても、『おかえり』は返って来なかった。両親はここよりかは治安の良い街に住んでいるため別居ということになっている。


 暗い廊下を歩き、リビングに入る。整理整頓されて清潔感のあるそこにはもちろん誰もいない。ヒカリの帰るところはとあるマンションの一部屋。今は一人暮らしである。そう、今は。


 リビングの電気をつけることもなくヒカリは自室に入る。制服を脱がずそのままチェアに座りパソコンを開き、今日の会議の内容をまとめる。


 ヒカリの心には常に余裕というモノが無かった。前月キルズに敗北した後、気分転換にクゼツミミハナと遊んだが、内心そんな気分では無かった。今頭の中にあるのはどうすればキルズを捕えることができるのか、それだけである。


 パソコンのキーボードに手を置いたその時。「ぐー」とお腹がなった。


「……はぁ、何か食べるか」


 ノートパソコンを閉じ立ち上がる時、一枚の写真が視界に入った。


 それは、数年前親愛なる妹と撮った写真だ。


 今はいない、妹との。


 ヒカリは椅子に座り直し、一度閉じたパソコンの画面をまた開いた。

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