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第093話 はよ帰れ。余計なこと言うな


「レイラ、俺もよくわからんが、AIちゃんが使っているこの式神は母上のやつらしくて、リンクできるんだと。この前の魔族の件では一応、ナタリア達を助けてくれたらしい」


 俺は2人の間に入って説明した。


「よくわからんなー……まあ、何でもありの化けギツネか」

「槐……一人で寂しく死んだお前が何故、ここにいる? ここは異世界じゃろう」


 もう少し、言い方を柔らかくしろよ。


「お前のところの好色ギツネと一緒だ。死んで転生した」

「ウチの子を愚弄するか!?」


 母上が怒ったが、4人の女共がなんとも言えない顔をしている。


「レイラ、お前らのしょうもない言い争いに俺を巻き込むな。母上も落ち着いてください。そして、帰れ」

「おぬしは落ち着いておるのう……槐じゃぞ」

「悪いが、子供の頃に死んだ奴なんか知らん。天霧の者とも交流があったが、悪い感情を持ってない」


 変なのはいなかったと思う。


「私が気になったのはそこじゃ。槐はおぬしが子供の頃に死んでおる。もう100年も近い」


 あー、なるほど。


「レイラ、お前、いくつだったっけ?」


 前に聞いた気がするが忘れた。


「今の私か? 28歳だな」

「誤差があるな……」


 槐が死んだのは90年以上も前だ。


「貴様、ユウマに何かしたか?」


 母上が爪を立てて、睨む。

 やっぱり丸いけど……


「知らんわ。なんで私がお前のところのガキをどうにかしなければならんのだ? 心底興味ない」


 まあ、お互いに面識ないしな。


「ユウマが死に、異世界に旅立った。ここは納得しよう。いや、意味わからんがな……だが、そこに貴様がおるのが気に食わん」

「だから知るか。私も死してもお前やお前のガキなんかに会いたくなかったわ。会えるなら……」


 レイラが暗くなった。

 会いたい人は別にいるからだろう。


「母上、私もですが、槐は死に、第2の人生を歩んでいるのです。あのクズ槐は死んだんですよ」

「おい……」

「しかしな……こいつは本当にゴミクズだぞ」

「おい……」


 レイラ、うるさい。


「槐はその人生を反省し、レイラとして生まれ変わってからは違う人生を選んだんです。信じられないかもしれませんが、こいつ、慕われてて、人徳もあるんですよ」

「ハァ!? こいつにそんなもんがあるわけないじゃろ。こいつの子供や部下を見たことがあるが、誰もこいつと目すら合わさなかったぞ」


 嫌われてるなー……


「それを悔いてこうなったんです。こんな腑抜けた蛇女は放っておきましょう」

「お前、こやつの下につくのか? 如月の当主じゃろ?」

「私もまた、死んだのです。前世は前世、今世は今世です。適当に生きます」


 俺がそう言うと、母上がナタリア達を見る。


「適当のう……根本は変わっておらんようじゃが」

「黙れ。いいから帰れ」

「ふん! 槐、覚えておけ! 私の一族に手を出したら地獄の炎で燃やし尽くしてやるからな!」

「地獄か……私はなんで地獄に行かなかったんだろうか……」


 ダメだこりゃ……


「母上、槐は無視です」

「そ、そうか……」


 母上も言い返してすらこないレイラを見て、呆気にとられていた。


「ささ、お帰りを。私の一族を頼みます」

「それ、3度目じゃぞ。まあよい、帰るか……夫婦喧嘩をしておるお前の息子夫婦を止めねばならん」


 何してんだよ、名前も覚えていない俺の子……


「帰れ、帰れ。夫婦は愛するもので喧嘩をするものではないと伝えてください」

「そんなんじゃからあんなに子供が……いや、まあいいか」


 いいの、いいの。

 はよ帰れや。


「ほら」

「うるさいのう……のう、ユウマ」


 母上が小声になった。


「何ですか?」

「前から気になっていたんじゃが、あの娘は何じゃ? 痴女か?」


 母上が呆れた表情でアニーを見る。


「ああいう服ですよ」

「お前の女じゃろ? 他の男に見せてもいいのか?」


 違うってのに……

 こいつら、人の話を全然聞かんな。


「人それぞれでしょう。私は柔軟なんです」

「そうじゃな……柔軟じゃな。柔軟すぎて孫の年齢より下の子供がおる」


 めんどくさい家庭だな。

 そうしたのはかつての俺だけど。


「それは申し訳ありませんね」


 全員、覚えてないから知らんわ。


「まあよいか……あ、夫婦喧嘩を見たチビが泣き出した。まったく……多すぎるんじゃ。帰る」


 母上はぶつぶつ言いながら目を閉じた。

 しかし、すぐに目を開けると、目をぱちくりとさせる。

 その仕草だけでAIちゃんだということがわかった。


「大丈夫か?」

「はい……急に乗っ取られましたよ。ウイルス対策を強化し、セキュリティーを万全にしないといけません」


 頑張れ。


「何だったんだ、あいつは……」


 レイラも呆れている。


「悪いな。過保護なんだ」

「まあ、そういう奴だがな……それに向こうが私を嫌っているのもわかる。昔、妖だから祓おうとしたし」


 えー……人の親に何してんだよ。


「まあいいや。AIちゃん、俺とレイラが微妙に時代が違うのはなんでだ?」

「マスターは亡くなってすぐに転生されましたが、別に他の人もそうとは限りません。というか、マスターは特殊すぎて私にもわからないところがあります」


 うーん、俺は転生かどうかすらも怪しいしな。


「まあ、どうでもいいか」

「はい。マスターはマスターですし、不思議現象を検証する意味はないと思われます」


 まったくだ。

 俺からしたらAIちゃんもこの世界の魔法も不思議だし、考えるだけ無駄か。


「あっさりしているな、お前……」


 レイラがまたしても呆れる。


「俺は柔軟なんだよ。それよか、調査はどうだ?」

「いつもの森だな。というか、お前が魔族を撃退し、謎の鏡を壊したんだろ? 問題ないっての」


 念のための仕事だからやる気がないようだ。


「まあ、働いてくれ」

「仕事だから働くさ。あ、そうだ。区長がお前のことを呼んでいたぞ。早めに来てくれってさ。なんだ? パメラを孕ませたか?」


 俺がこの世界に来て、まだひと月ぐらいだぞ。

 どう考えても早いわ。


「スタンピードの件で王様から褒賞金だってさ。あと、お姫様を助けたやつ」

「あー、あれか。そんなのもあったな。王に謁見しに王都に行くのか?」

「異世界とはいえ、一国の王だろ? 断るのは失礼に当たる」

「それもそうだな……」


 レイラも元貴族だからその辺のことはわかっている。

 いくら嫌われ者でも礼儀を知らないと当主にはなれないのだ。


「帰って区長のところに行ってくるか」

「国王案件なら早い方がいいぞ。お前らはどうするんだ? ユウマについていくか?」


 レイラが4人に確認する。


「私は行きますよ」

「…………私も。実家に顔を出す」

「皆が行くなら私も行く!」

「うーん、どうしようかなー?」


 ナタリア、アリス、リリーは即答したが、アニーは悩んでいるようだ。


「どうした? 何かあるのか?」

「いえ……クランを空けていいものですかね?」


 あー……今は俺達しかいないもんな。


「誰かがいた方がいいとは思うが、私が残るから大丈夫だ。どうせ調査の仕事がある」

「そうですか……」

「そうだなー。うーん……アニー、やっぱりお前もユウマと一緒に王都に行け。そんでもって王都に行った連中に西の森が解禁になったことを説明して呼び戻してこい。ジェフリーがうるさいんだ」


 ギルマスはそうだろうな。


「それもそうですね……わかりました。私も王都に行ってきます」

「うん、頼んだぞ。ユウマ、リリー、問題は起こすなよ」

「ユウマはわかるけど、私も!?」


 俺も同じ感想だよ。

 リリーはわかるけど、俺は問題を起こさない。


「この前王都で会った時、はしゃいで迷子になってただろうが」

「あ、はい……」


 心配な奴。

 カラスちゃんでもつけておくか。


「まあ、王都は都会だから楽しめ。じゃあな。私は仕事に戻る」


 レイラは手を上げながらそう言うと、森の奥に行ってしまった。


「どうする? 帰る?」


 ナタリアが聞いてくる。


「そうだな。区長の話を早めに聞いた方がいいだろう」

「じゃあ、ちょっと早いけど、帰ろっか」


 俺達は採取した薬草を回収すると、森を出て、町に戻ることにした。


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