表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/242

第064話 意外……


 西区の区長はパメラの親父さんらしい。


「パメラから聞いてないのかね?」


 区長が苦笑いを浮かべたまま聞いてくる。


「聞いてないな」


 なーんだ、探ろうと思ってたが、パメラの身内かい。

 下手に出て、損したわ。

 というか、若いメイドに案内させたのはパメラが言ったからだな……

 どうもAIちゃんが余計なことを言ったせいでパメラ達は俺の人間性について誤解しているように思える。


「どうも最近、冷たくてね……ハァ」


 区長がため息をついた。


「女の子なんてそんなものだ。いつまでも父親にべったりではない。俺の妹もそんな感じだった」


 妹はある日を境に父親を避けるようになった。

 なお、俺の娘がどうだったかは記憶にない。


「頭ではわかっているんだけどね」

「別に嫌っているって感じではなかったぞ。なあ?」


 AIちゃんに振る。


「そうですね。フォローされてましたし」


 庇ってたな。

 『お前、愛人か?』って聞かなくて良かった。

 間違いなく、嫌われる。


「そうかね? なら良かった」


 区長はほっと胸を撫で下ろした。


「このことは皆、知っているのか?」

「ギルドの人間は知っていると思う。冒険者は知らないんじゃないだろうか?」


 じゃあ、他の人間に言わない方がいいな。

 口止めもしていないようだし、隠しているようにも見えなかったが、言いふらすのも良くないだろう。


「ふーん、わかった。それで話というのは?」

「君はせっかちな人間なのかな? 本当は夕食でも共にしながらゆっくり話そうと思っていたのだが……」


 あー……だからパメラが夕方にでも案内するって言っていたんだ。

 仕事が終わった後、自分が家に帰るついでに一緒に行く感じ。

 まあ、そっちの方が良かった気がする。


「いや、単純に仕事が早めに終わったから暇だっただけだ」

「そうかね? まあいい。では、話をしようか。まず確認だが、君があの大蜘蛛を出したのは本当かね?」

「そうだな。俺は転生者なんだが、そういう術者と思ってくれ。このAIちゃんにしても式神だ」

「実を言うと、パメラからそういう話を聞いている。しかし、これが人ではないのか…………にわかに信じられない」


 区長がAIちゃんをじーっと見る。

 区長に見られているAIちゃんは目をぱちくりさせると、首を傾げた。

 確かに人の子供にしか見えない。


「これは特別製だ。それと転生した際にスキルを手に入れたからその影響もある」


 キツネの式神は母上に教わったやつだから他の式神とはちょっと違うのだ。


「ギフトか」

「ギフト? たまにその言葉を聞くけど、転生者が持っているスキルのことか?」

「そうだ。転生者は特別な力を授かっていると言われている」


 言われている……


「曖昧な言い方だな」

「正確に確認したわけではないからな。そういう人間がいるってことだ。そもそも転生者は色々と議論がなされている。一部の研究者はただの記憶障害で片付ける者もいる」


 まあ、俺も他人に自分は前世の記憶があるって言われたら鼻で笑っただろうし、そういうことを考える者もいるだろう。


「ふーん、俺的にはその辺はどうでもいいな。事実がどうあれ、俺のやることは変わらん」


 今世は仕事や責任に追われずに楽しく生きよう。

 まあ、暇すぎるんだけど……


「そうかね? 君のやりたいこととは?」

「今は仲間と冒険者をやりながら適当に過ごすことだな。異世界の生活は何もかも新鮮だ。文化も料理も全然違う」


 慣れてきてはいるが、いまだに驚くことは多い。


「ほう? それは興味があるね」

「お前も死んで転生してみるか?」

「それはさすがにやめておくよ」


 区長が苦笑した。


「だろうな。さて、式神だったな? 気になるのは危険性か?」

「そうだね。皆が助かったと思うと同時に今度はあの大蜘蛛が牙を剥くのを怖がっている」


 だろうな。

 ありすぎる力は疎まれる。


「正直、あの程度でビビるのは情けないとしか思えんな。大きさは脅威だが、毒もないし、魔力もそれほど高いというほどでもない」


 魔力じゃなくて霊力だが、説明がめんどくさいので魔力ということにする。


「かなりの魔力を感じたと聞いているが?」

「その程度ということだ。まあ、危険性はないぞ。式神が術者に逆らうことはないからな」


 多分ね!

 俺のスキルのせいで人格が芽生えたからわからない。

 ましてや、大蜘蛛ちゃんのあの性格はちょっと……


「うーむ……」

「実際に見せてやろう」


 そう言いながら懐の中から護符を取り出す。


「それは?」

「これは護符だな。前にジェフリーから見せてもらったことがあるが、こっちの世界にも似たようなものがあるだろ」


 昇格試験の時にジェフリーが魔法を防ぐ護符を持っていた。

 あれはちょっとすごいと思ったな。


「確かにあるな」

「式神はこの護符を使って呼び出すんだ……見てろ」


 護符に霊力を込め、テーブルの上に置くと、護符が光り出す。

 すると、護符が手のひらサイズの大蜘蛛ちゃんに変わった。


「蜘蛛……小さいな。いや、蜘蛛としたら十分に大きいんだが……」


 区長がテーブルの上でまったく動こうとしない大蜘蛛ちゃんをじーっと見ている。


「動かないな……命令を待っているのかな?」

「クッキーを見てるだけです」


 あっそ。


「大蜘蛛ちゃん、食べていいぞ」


 そう言うと、大蜘蛛ちゃんがテーブルの上にある皿のところまでかさかさと動く。

 そして、一枚のクッキーを背に乗せると、かさかさと動く。

 すると、テーブルの端に持っていき、食べだした。


「大蜘蛛ちゃん、甘いものが好きなのかな?」

「血肉より糖分って言ってますね。女の子なんで」


 お前、メスかい……

 知らんかった…… 


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(1)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[良い点] 小さい大蜘蛛ちゃんがかわいいw
[良い点] 今までで一番読みやすい 主人公が根っこは俺様系だけどサバサバしてて順応性も高いからかな
[良い点] さすがユウマさん 式神だろうと女の子しか周りに置かない! ハーレムキングの器だぜ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ