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第006話 野宿


「あの程度か……大蜘蛛ちゃんの相手にすらならんかったな……」


 俺は大蜘蛛ちゃんを消すと、戦闘が終わった崖の下を見下ろしながらつぶやいた。


「いや! いやいやいや! 何ですかあれ!? バケモノにも程があるでしょう!」


 AIちゃんが必死に首を振りながら言う。


「まあ、弱かったら式神として使えんからな。だが、それにしても弱い魔物だったな」

「いや、まあ……Dランクですからね。でも、あれほどの数を瞬殺は恐ろしいです」


 雑魚がいくら集まろうが変わらんわ。


「言っておくが、式神の力的にはお前の半分もないぞ」

「え? マジです?」

「それは母上の趣味の…………いや、これはいい。とにかく、それは母上から教わった式神だから母上に準拠した能力を持っている。大妖怪である妖狐の力は大蜘蛛とは比較にならん」

「わ、私にそんな秘めたる力が……」


 AIちゃんが驚愕しながら自分の両手を見る。

 その姿は可愛らしくて非常に微笑ましい。


 うーん、使いこなせなさそうだ……

 とはいえ、学習機能があるのだからどうとでもなるだろう。


「とにかく、この世界の兵の力も魔物の強さもだいたいわかった」

「どうでした?」

「兵はそこそこだな。あんな重そうな鎧のせいで動きが鈍くなっているのはバカかと思ったが、練度も士気も高そうだった。それにあのひらひらした服を着た女は強いな。魔法とやらも見たが、殺傷能力も速度も一流と言っていい」


 あの馬車に乗っているのが王族か貴族かはわからんが、上流階級だろう。

 そんなお偉いさんを守る護衛といった感じだな。


「あれは侍女ですね。メイド服と言います」


 ふーん……


「護衛を兼ねた侍女ってところか……そう考えると、あの馬車に乗っているのは貴婦人かスケベジジイだな」

「どうですかねー? オークはどうでした?」

「俺の相手ではないが、一般人には厳しいだろうな。要は積極的に人を襲ってくる猪や熊みたいなものだろう? 十分に脅威だ」


 あいつらもあんな重そうな鎧を脱げば、もっと楽に戦えただろうに。

 どうせあの力の前では鎧など意味がない。


「この世界はそういう魔物が練り歩いている世界なのです」

「危険な世界だな……」

「いや、あの化け蜘蛛を見る限り、マスターがいた世界の方が怖い気がします」


 どうかねー?

 まあ、比べるものでもないか。


「とにかく、ああいうのを狩る職業もありそうだな」

「ありますね。傭兵や冒険者、他にも兵士に仕官するのもありです」


 仕官はないな。

 俺が仕えるのは自分の国の陛下であり、将軍様である。

 というか、宮仕えはめんどくさいし、一兵卒は嫌だ。

 二度目の人生は楽に生きたい。


「その辺は町に行ってから考えるか」

「そうしましょう。では、案内を再開します」

「そうだな……」


 俺は最後に座り込んでいる侍女をじーっと見た。


「お好きですねー……」


 AIちゃんがジト目で見てくる。


「勘違いをするな。あれだけの魔法を使えるのに探知能力は低いなと思っていただけだ」


 そこまで距離が離れているわけではないのにこちらに気付くそぶりがない。


「得意不得意があるのでしょう。きれいな方ですね」

「まあな。それとあの服が気になる。俺達と随分違わないか?」

「あー、私達は和服ですもんね。目立つかもしれません」


 うーん、それも町に行ってから考えるか。


「まあいい。行くぞ」

「はい。こちらになります」


 俺とAIちゃんはこの場を離れ、元の場所まで戻ると、再び、森の中を進んでいった。


 しばらく歩いていると、周囲が暗くなり始めたため、焚火を起こし、腰を下ろす。


「野宿か……」

「仕方がないです。野宿がお嫌なら先程、名乗り出れば良かったんですよ」


 それはない。


「野宿の経験がないわけではないし、野宿でいい。町はここからどれくらいだ?」


 俺は先程捕まえた蛇にその辺に落ちていた枝を突き刺し、焚火で炙りながら聞く。


「明日には森を出ます。そこからは歩きですと数日はかかるかと思います」


 結構、距離があるな……


「転生だが何だか知らんが、町中で生まれ変わりたかったわ」


 生まれ変わったって言うのかは怪しいけど。


「普通は別の人に生まれ変わると思うんですけどねー。もしかしたら転生ではなく、転移かもしれません」

「俺もそっちの方な気がするな」


 生き返って若返って、異世界に転移した……こっちの方がしっくりくる。


「うーん、そういうこともあるんですかねー?」

「知らん。それに転生にしろ、転移にしろ、俺にはわからない話だし、どっちでもいい」

「それもそうですね……ところでマスター、それ食べるんです?」


 AIちゃんがちょっと嫌そうな顔で炙っている蛇を指差す。


「お前は食べなくてもいいだろうが、俺は食べないと死ぬ」

「いや、蛇ですよ、それ?」

「蛇は小骨が多いが、美味いんだぞ。それに霊力も回復するから良いこと尽くしだ」


 精力も増強する。

 いらんが。


「毒とかありますって」

「あっても問題ない。俺は小さい頃から訓練を積んでいるから耐性がある。それに毒は美味いんだぞ」


 フグとか蜂とかも美味い。


「ワイルドですねー。さすがはキツネの大妖怪のお子さんです」


 ワイルド?


「あ、そうだ。お前、言葉を教えろ。たまによくわからない言葉を使うだろ」

「そういえば、そうでしたね。では、マスターに言語や単位などをインストールしましょう」


 いんすとーる?


「なんだそれ?」

「まずなんですが、このままでは現地の人に会っても言葉が通じません」


 あー、異国どころか異世界だもんな。

 通じるわけがない。


「確かにな……」

「私が翻訳をしてもいいですが、不便でしょう? ですので、マスターの脳に叩き込みます」


 叩き込むって……


「それは大丈夫なのか?」

「問題ありません。ですが、起きている時にやると、マスターの脳が大変混乱しますので寝ている時にしておきます。そういうわけでその蛇を食べ終えたらお休みください。見張りは私がしておきますので」


 ふーん、まあ、便利だな。

 勉強とかしたくないし、任せるか。


「じゃあ、頼むわ」


 俺はもう良いだろうと思い、蛇にかぶりつく。


「まだ焼けていないのでは?」

「半生くらいが美味いんだよ」

「小骨は?」

「いい感じの歯ごたえだな」


 うん、美味い。


「キツネさんですねー……」

「お前の方がキツネだろ。尻尾を出せ。枕にする」


 母上に似ているんだから多分、出せるだろ。


「出し方がわかりませーん。教えてください」

「俺が知るわけないだろ。俺はあの化け狐とは違って、普通の人間なんだから」

「あんなバケモノを簡単に出しておいて、普通? 普通って何ですかね?」


 知らない。

 俺は自分という物差ししか持っていないのだ。


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