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第055話 帰る


 俺達は湖がある広場から離れ、帰るために森を歩いていた。


「なあなあ、あいつって誰だ? 南区の冒険者なのはテッドとの会話でわかったけど」


 先頭を歩くアニーに聞いてみる。


「あれはサイラスっていう南区のBランク冒険者よ。【ハッシュ】っていうごろつきばっかりクランに所属しているわ」


 あれでBランク?


「確かにごろつきだったな」

「あいつは特に自分より弱かったり、女子供には態度が悪いの。ウチのクランは女性が多いからよく絡まれているわね」


 輩だな。

 ギルドは何してんだ?


「危なくないか? 襲われるぞ」

「さすがにそこまではしないわよ。そんなことをしたら普通に捕まるし、レイラさんが黙っていない」

「そこが気になるんだけど、レイラは何て言ってるんだ?」

「特に。『気を付けて』とか『関わらないように』とかね」


 丸くなりすぎだ、あいつ……

 敵を作らないようにするのは良いことかもしれんが、リーダーなら仲間を守れよ。


「悪名高き槐様とは思えませんね。ああいう口だけの無能が一番お嫌いでしょうに」


 俺もそう思う。

 でも、変わっちゃったんだろうなー……

 極端な奴だわ。


「しかし、あんなんがいるとなると、あそこも行きづらいなー」

「私はもう行かない。ちょっと遠いけど、東区の遺跡に行くわ」

「遺跡って?」

「この町の東には昔の遺跡があるの。そこには魔物も出るし、そっちで稼ぐ。リビングデッドは嫌だけど、あの男よりかはマシ」


 リビングデッド……

 嫌な響き……


「お前、あのサイラスとやらをえらく嫌っているけど、何かあったのか?」

「私もあいつもこの町の出身なのよ。昔から何度も絡まれたわ。お尻を触られたこともあるし、死ねばいいと思っている」


 輩だなー……


「俺らはどうしようかなー?」

「もうここには来ない方が良いわよ。うざいだけだし」

「まあなー……」


 ちょっと考えてみるか……


 俺達はその後も森を歩き続けると、森を出て、平原を歩いていった。

 そして、町に戻ると、西区のギルドに向かう。

 なお、毒消し草を加工してから売る予定のアニーはギルドには寄らず、不機嫌そうに帰っていった。


「あ」


 ギルドに入ると、パメラがばつが悪そうに俺達を見てくる。

 俺達はそんなパメラのもとに向かった。


「その様子だと、南の森がどうだったか知っているみたいだな」

「はい……次々と皆さんが帰ってこられまして……」


 まあ、帰るわな。


「冒険者ばっかりで魔物がいねーわ」

「みたいですね。よく考えれば、10日も空けましたから皆さん、一斉に仕事を再開します。実は他所の区でも同じように冒険者で溢れているみたいですね」


 皆が一斉に動けばそうなるか。

 2つの区の冒険者が集まる南の森は特にだろうが、他所も一気に集まれば似たようなことになるだろう。


「まあ、仕方がないわな」

「はい。とはいえ、数日で落ち着くとは思います」


 南の森は微妙だけどな。


「…………パメラ、サイラスがいた」


 アリスがそう言うと、パメラが嫌なそうな顔をする。


「また絡んできましたか?」

「…………うん。とはいえ、私達というより、自分達の狩場を荒らす西区の冒険者全体って感じ。テッドと言い争いをしてた」

「テッドさんですか……あの人も正義感が強いんですけど、気が荒いですからね」


 確かに大人しい感じではなかったな。

 普通にケンカを買ってたし。


「…………私達はそれを見て、即座に退散した。アニーも一緒だったし」

「アニーさんはそうしますか……」

「…………うん。それでアニーはもう南の森には行かずに東の遺跡に行くって。あと、クライヴ達は王都に行った」

「わかりました……皆様はどうされますか?」


 パメラがそう聞くと、ナタリアとアリスが俺を見てくる。


「少し考えたい。殺したらマズいだろ?」

「当たり前です。やめてください」


 パメラが睨んできた。


「いや、俺はそんなことはしない。ただ、ナタリアとアリスを守るように言ってある狛ちゃんは普通に襲い掛かりそう」

「あー、さっきも魔力を出してたね」

「…………だね。あー、この子もこんなにかわいいのに大蜘蛛ちゃんと同じなんだなーと思った」


 2人がそう言いながらも狛ちゃんを撫でる。

 狛ちゃんは気持ちよさそうだ。


「えー……その子もですか?」


 パメラが嫌そうな顔をした。


「戦闘用の式神だからな。大蜘蛛ちゃんの方が強いけど、たいして変わらん」

「そんなのしかいないんです?」

「戦闘用が弱くてどうする? まあ、カラスちゃんはただのカラスだし、AIちゃんは…………うーん、微妙」


 能力的には大蜘蛛ちゃんでも相手にはならないんだけど、戦闘ができる人工知能じゃないからなー。


「そうですか……自重してくださいね」

「そうしたいんだが、俺のスキルってAIちゃんみたいに人工知能を授けることっぽいから狛ちゃんも自我を持っているんだよなー……」


 命令を待たずに勝手に動きそうだ。


「狛ちゃんは3階で女性陣に遊んでもらってますからご主人様を守る番犬と化していますね」


 食うか、寝てるか、遊ぶか……

 どうした、狛犬?

 お前、神の使いだろ。


「ハァ……お願いしますよ」

「わかってるよ。そういうわけでちょっと考えたい。アニーから東の遺跡のことを聞いたりしてみるわ」

「わかりました。こちらでも依頼を探してみましょう」


 いい子だ。

 また奢ってやろう。


「頼むわ。あ、成果。ナタリア」

「うん」


 ナタリアが採取した毒消し草を5つほど取り出す。


「少ないですね」

「ユウマとアリスは釣りをしてた」

「あ、やっぱりですか。まあ、いいです。えーっと、金貨5枚ですね」


 パメラがナタリアに金貨を渡す。


「言っておくけど、いっぱい釣ったからな」

「…………私も10匹は釣った」


 入れ食いだったな。


「全部、食べられないやつだったけどね」


 俺は食えるわい。


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