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第054話 どこ世界にもああいうのはいる


 俺達が湖のほとりでのんびりと過ごしていると、何人かの冒険者が声をかけてきた。

 勧誘である。


「ちょっといいか?」


 また来たし……


「何だー?」

「西区なんかより、南区の方が稼げるぞ。ウチに来ないか?」

「行かない。クランリーダーのレイラとは同郷だし、女がいっぱいいるクランの方が良い」


 これはAIちゃんと一緒に考えた断り文句である。

 女性が多いクランというはこの町では珍しいらしく、これを言えば男ばっかりのクランはどうしようもないらしい。

 そして、レイラとの縁をアピールすることでAランク冒険者の圧をかけるという2重の言い訳は非常に有効だ。


「そうか。まあ、気が変わったら言ってくれ。いつでも歓迎する」

「んー、わかった」


 勧誘に来た冒険者は仕方がないといった感じで去っていく。

 皆、そこまで強引に勧誘してくる感じではなく、こんなもんだ。


「AIちゃんの案で上手く断れている気がするが、好色と思われてないかなー?」

「…………確実に思われていると思う」

「実際、間違えてないしね」


 こらー。


「違うっての」

「…………でも、この場にはアニーもいるし、AIちゃんを入れると女4人だよ。誰が見てもそう」

「痴女のせいか」

「…………それは大きいね」


 まだ3人なら良かった。

 ナタリアはともかく、AIちゃんとアリスはチビだし、子供に見えないこともない。


「痴女って言うな。あと、いい加減、毒魚じゃない魚を釣りなさいよ」


 アニーが文句を言ってくる。


「全然、釣れないんだよ。普通の魚もいるのか?」

「確かに毒魚が多い湖だけど、いるわよ」


 いるのか……

 全然、釣れないし、もう毒魚でいいじゃん。


「アリス、どっちが先に食べられる魚を釣れるか勝負な」

「…………いいよ。あ……」


 アリスが俺を見て、頷いたが、奥の方を見て、声を出した。

 なんだろうと思い、振り向いてみると、4人パーティーの男達が森を抜けて、この湖がある休憩地にやってきていた。


「チッ……あんたら、帰るわよ」


 アニーが舌打ちをすると、採取して地面に置いていた毒消し草を集め始めた。

 すると、ナタリアも同じように集め始め、アリスも釣竿をしまう。


「どうしたんだ?」


 俺も釣竿をあげると、アリスに釣竿を返しながら聞く。


「…………簡潔に言う。嫌な奴が来た」


 嫌な奴?


「おいおい! これはどういうことだー!?」


 俺達が片付けをしていると、叫び声が聞こえた。

 もちろん、叫んだのは嫌な奴君である。


「何あれ?」

「…………無視無視。ほら、狛ちゃん、起きて」


 アリスが寝ている狛ちゃんを揺する。

 すると、狛ちゃんが大あくびをしながら起き上がった。

 その姿は犬そのものであり、とても式神に見えない。


「なんだ、サイラス?」


 1人の冒険者が嫌な奴君に声をかけた。


「テッド、てめーら西区の冒険者がなんでここにいるんだー?」


 嫌な奴君もとい、サイラスに声をかけたテッドという男は俺達と同じく西区の冒険者らしい。


「いて悪いか?」

「悪いから言ってんだよ! てめーらのせいで仕事になんねーだろ」

「仕方がないだろ。西の森は立入禁止なんだから」

「ふざけんな! てめーら西区の冒険者のせいでスタンピードが起きて、ただでさえ、10日も仕事ができなかったのに今度はウチに出張ってくるんじゃねーよ!」


 ケンカが起きそうだなー……


「俺達のせいっていうのはどういう意味だ?」

「そのまんまだろ! あれだけの魔物を見逃すなんてありえねー! 雑魚過ぎて森の奥に行けなかったんだろ!」

「関係ない。それにスタンピードの際に緊急依頼を断って逃げたお前に雑魚呼ばわりされたくない」


 逃げたんかーい。

 でも、確かにサイラスとかいう男はスタンピードの際にはいなかったと思う。

 俺は防壁の上にもいたし、町の外に出て、戦っていたから大抵の冒険者は覚えている。

 実際、あのテッドは一緒に町の外で戦っていたのを見た。

 というか、心配そうにAIちゃんを見ていたな。


「てめー! マジで殺すぞ」

「お前が? 笑わせるな」


 おっ!

 ケンカだ、ケンカ。


「ユウマ、行くよ」


 俺が一触即発の2人を見ていると、ナタリアが俺の袖を持って、引っ張っていく。

 どうやら片付けが終わったらしい。


「放っておいていいのか? テッドは西区の冒険者だろ?」

「いいから行こ。私達はこういう時に絡まれやすいの」

「…………サイラスは典型的な差別者。関わるだけで精神的ダメージが大きいから無視が一番」

「というか、冒険者同士でケンカなんてしょうもないことに関わってられないわ。帰るわよ」


 女性陣はケンカが嫌いらしい。

 あと、サイラスも嫌いらしい。


 俺は揉め事を起こすなと言われているので女性陣の言うことを素直に聞き、この場をあとにすることにした。


「おいおい! どこに行くんだ、女共!」


 またもや叫び声が聞こえたので見てみると、サイラスがこちらを見ていた。


「どうします、マスター? カラスちゃんと狛ちゃんが戦闘態勢に入ってますけど……」


 AIちゃんにそう言われて気付いたが、カラスちゃんがサイラスの近くにある木に止まり、狙いを定めている。

 そして、ナタリアの足元にいる狛ちゃんから霊力が漏れ始めていた。


「無視無視。行くわよ…………ほら、あんたも怖い魔力を出さない。後で遊んであげるから帰る」


 アニーがそう言って、狛ちゃんを促し、歩き出す。

 すると、ナタリアとアリスも続いた。


「帰るぞ。ごろつきの相手は警邏の仕事だ」

「わかりました」


 俺とAIちゃんも3人のあとについていき、森の中に入っていく。


「逃げんな、雑魚女共!」


 まだ言ってるし……

 アニーの半分も魔力を持っていないくせに……


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