表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/242

第040話 敵


「マスター、森が見えてきましたよ!」


 AIちゃんが言うように前方には森が見えている。


「敵の攻撃があるから気を付けろよ」

「はい!」


 AIちゃんは頷くと、俺の背中に抱きついてきた。

 そのまま飛んでいくと、森の中にいる魔物の数が徐々に減ってくる。


「マスター、あそこです!」


 確かにカラスちゃんとリンクしてみた場所だ。

 つまり……


「下か!」


 俺は魔力を感じ、AIちゃんを抱きかかえながら蜂さんから飛び降りた。

 すると、蜂さんが謎の光線に貫かれ、消滅する。


「あー! 蜂さんがー!」


 それどころではない。

 次は俺達の番だ。


 俺はすぐに懐から護符を取り出す。

 すると、予想通りに光線が飛んできたので護符で結界を張った。


 光線は結界に当たるが、貫くことはできずに止まった。

 しかし、当たり前だが、俺達はそのまま森に落ちていってしまう。


 途中、木の枝に当たったりして、結構痛かったが、何とか着地というか、地面に落ちた。


「いたた……」


 背中を打った……


「大丈夫ですか!?」


 傷一つないAIちゃんが聞いてくる。


「大丈夫。しかし、よく考えたらお前を庇う必要はなかったわ」


 抱いていたAIちゃんを庇うために余計に枝に当たり、着地にも失敗してしまった。


「本当ですよ。むしろ盾にするぐらいでいいです」


 いや、小さい子を盾にするのは難しい。


「まあいい。それよりも誰かいるな……」

「はい。確かにすごい魔力を感じます。おそらくですが、さっきの光線を出した者でしょう」


 あれも魔法かね?


「行くぞ。こっちだ」

「はい!」


 俺は立ち上がると、大きな魔力を感じるところに向かって歩いていく。


「魔物が消えたな……」


 周囲には魔物の魔力を感じない。

 感じるのはでかい魔力一つだけだ。


「私達への対処に力を注ぐつもりなのでしょう。どうやら今回のスタンピードは人為的に魔物を発生させていたようですね」


 俺もそう思う。

 そして、魔力を隠していないところを見ると、こっちに来いって言っているな。


 俺達がそのまま歩いていくと、少し開けたところに出る。

 そこには一人の男が立っていた。


 男は青白い肌をしており、とても健康的には見えない。

 しかも、髪が白く、おじいちゃんみたいだった。

 だが、顔つきや肌は若い青年っていう感じであり、よくわからないが、これまで見てきた人間とはどこか違っている。


「やはりあの時の貴様か……俺の魔法を防ぐとはたいしたものだ」


 男がフッと笑う。


「誰だ? 知り合いだったら悪いな」

「いや、俺が一方的に知っているだけだ。お前は気付いていないだろう」

「あー、昨日の……」


 今気づいたが、昨日の違和感はこいつだ。

 変な感じがしたが、今感じているこいつの違和感と同一のものだ。


「チッ! 気付いていやがったか……」


 男が舌打ちをした。


「マスター、この者は魔族です」

「ほう……」


 AIちゃんの言葉に男が感心する。


「魔族って?」

「前にこの世界にはいくつかの種族があることを言いましたよね? その一つが魔族です。生まれつき高い魔力を持ち、残虐で非道な種族である人類の敵です」


 まあ、いい人には見えんな。


「魔族ねー……スタンピードだっけ? 魔物を発生させていたのはお前か?」


 一応、聞いてみる。


「そうだ。あそこに鏡があるだろう?」


 男が自分の後ろを指差した。

 男の後ろには確かに鏡が転がっている。


「あるな」

「あれは転送装置だ。あれで各地から魔物を呼び出している」


 すごく便利だな。


「欲しいな」

「お前が持っていても使えんぞ。あれはゴブリンやオーク程度の魔力を持つ者しか転送できない」


 だからオークとゴブリンしかいなかったわけね。

 町を滅ぼしたいならもっと強力な魔物を呼べばいい。


「原因はよくわかった。壊すか……」

「レアなアイテムなんでやめてほしいな」

「レアだろうが、邪魔だ」

「そうか。では、抵抗しよう」


 男が構える。


「抵抗? まるで俺がお前を殺そうとしているみたいな言い方だな?」

「違うのか?」

「逆だろう? お前が俺を殺そうとしているのだ。素直にべらべらとしゃべっているのは俺を殺すつもりだからだろう? それと少しは殺気を隠したらどうだ? 残虐非道の魔族君」


 俺がそう言うと、男がニヤリと笑った。


「炎よ!」


 男が手をかざすと、炎が俺達を襲う。

 だが、炎が到達する前に護符を投げると、炎が一瞬にして消えた。


「やはり妙な魔法を使う……………貴様、何者だ?」

「冒険者だな。何者と言われても困るが、転生者ってやつらしい」

「チッ! それでか……良いギフトをもらったらしいな。だが、その程度で粋がるなよ!」


 男はそう言うと、腰を落とし、突っ込んできた。

 そのまま殴りかかったきたので身体を逸らして躱す。


「死ね!」


 男は俺が避けたことで体勢を崩していたが、指をこちらに向けてきた。

 すると、指が光り、さっきの光線が勢いよく、俺の顔面に向かってくる。

 とはいえ、魔力を感知していたからバレバレだったため、顔を逸らして躱した。


「チッ! ギフト頼りの無能ではないらしいな」


 舌打ちが多い男だな……


「マ、マスター、大丈夫です?」


 AIちゃんが心配そうに声をかけてくる。


「問題ない。危ないから下がっていろ」

「はーい」


 AIちゃんは俺達に背を向け、トコトコと走っていき、木の裏に隠れた。


「残虐非道の魔族君、人質にするといいぞ」


 俺はチラッとAIちゃんを見た男に助言をする。


「そんなバレバレな誘いに乗るものか」

「あっそう……」


 まあ、人質は意味をなさないからな。

 いつでも消せるし、死んだら死んだでまた出せばいい。


「想像以上の強さを持っているようだな…………少しだけ本気を出そう」

「そうだな。まだ1割程度しか出していないようだからもう少し出してくれ。このままでは相手にならん」


 そう言うと、男が目を細める。


「良いだろう! 魔族の恐ろしさを教えてくれるわ! 死ねっ!」


 男はそう言うと、距離を取る。

 そして、両手を俺に向けてきた。


「ダークフレイム!」


 男の手から黒い炎が現れると、一瞬にして俺の周囲が黒い炎で燃え広がる。


「すごい魔力だなー」

「くたばれ!」


 俺を囲んでいた黒い炎は一瞬にして俺に迫ってくると、俺の視界が真っ黒に染まった。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(1)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔物を呼び寄せるより普通に自分で襲撃する方がいい気がしますが。 いずれ崩壊するとはいえ、雑魚はまだ食い止められてますし、こいつが突っ込んできたら誰も止められないのでは?(主人公以外) …
[一言] どこまでこの世界のことをインストールできたのかわかる描写が欲しいなあ 主人公には20年の記憶があるはずだけど異世界にやたら馴染んでるなと感じたり、変なとこで異世界の文化に違和感感じたりするか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ