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第037話 援護


「あー、疲れた」


 町の中に戻ると、一息つく。

 他の冒険者は疲れているようでその場で腰を下ろしていた。


「大丈夫です、マスター?」


 息一つ切らしていないAIちゃんが心配そうに聞いてくる。

 AIちゃんは式神なので疲れることはないのだ。


「この程度はな。とはいえ、さすがに疲れた」

「お前さん、強いなー。魔法も剣もすごかったわ」


 俺達のそばで腰を下ろしているクライヴが称賛してくる。


「お前も槍さばきがすごいな。料理人だろうに」


 槍を巧みに使っており、普通に強かった。


「一応、Bランクだからな。でも、きついわ。もう腕が上がらねー……」


 こいつもBランクか。

 どうりで強いわけだ。


 俺達がその場で休んでいると、すぐに救護班の連中がやってくる。


「ユウマ、AIちゃん、大丈夫!?」


 救護班のナタリアが狛ちゃんを連れ、慌てて駆けてきた。


「怪我はないが疲れたわ」

「私は後ろから狐火を放ってただけなので問題ないですね」

「そう……あ、ヒール!」


 ナタリアが回復魔法をかけてくれる。

 すると、身体から疲労感がすーっと抜けていった。


「俺は?」

「あ、ポーションです。どうぞ」


 微妙に無視されたクライヴが聞くと、ナタリアが小瓶をクライヴを始めとするクランメンバーに渡していった。


 クライヴと他の2人は顔を見合わせながらポーションを飲む。


「ナタリアってこういうところがあるよな」

「そっすね」

「あからさまですもんね」


 ポーションを飲んだ3人の男達が愚痴を言い合っていた。


「無事で良かったよ。外はどんな感じ?」


 ナタリアは男共をガン無視し、俺とAIちゃんに水を渡しながら聞いてくる。


「ゴブリンとオークだけだが、うじゃうじゃいるな」

「うじゃうじゃ……大丈夫かな?」


 どうだろう?


「お前は心配しなくてもいい。最悪はお前らだけでも助けてやる」

「う、うん……」


 ナタリアの頬がちょっとだけ赤くなった。


「ナタリアの奴、まったく俺達が眼中にないぞ。この差は何かね?」

「さあ?」

「顔じゃないですかね?」


 この観客共、うるさいな……


「俺は上に行くから後は任せたわ」

「休まないの?」

「お前の回復魔法で回復した。後は上で術を放っているわ」

「そう……あ、アリスにこれを」


 ナタリアが小袋を渡してきた。


「何これ?」

「飴。あの子、糖分がなくなると、魔法が撃てなくなるの」


 飴?

 あー、砂糖菓子か。


「見た目通り、ガキだな…………わかった。AIちゃん、行こう」

「はい!」


 俺とAIちゃんはこの場を離れ、防壁を昇る階段に向かった。

 そして、階段を昇り、アリスを探していると、壁に寄りかかって休んでいるアリスと魔法を放っているアニー、そして、もう1人のクランメンバーを見つけたので近づく。


「休憩か?」


 声をかけると、アリス達が俺達を見てきた。


「…………あ、ユウマ」

「お疲れ」

「あ、お疲れ様です」


 俺達に気付いた3人も声をかけてくる。


「ほら。ナタリアからだ」


 アリスに小袋を渡した。


「…………ありがと」


 アリスが小袋を開け、飴をコロコロと舐めだしたのでアニーの横に行き、壁に肘を置きながら外の光景を見る。


「どんな感じだ?」

「見たまんまね。ずっとこれ」


 アニーがそう言いながら放った火球は遠くに飛んでいき、魔物の群れに着弾して炎上する。

 数匹は倒せたと思うが、それでも後方から押し寄せる魔物の群れで見えなくなった。


「蟻の群れって例えたけど、マジだな」

「本当ね。倒しても倒しても数が減らない。異常すぎ」


 俺は護符の剣を天に向け、霊力を込める。

 すると、剣の先に金色に輝く火球が現れ、徐々に大きくなっていった。


「さっきもここから見てたけど、なんでユウマ達の火魔法って金色なの?」


 母親が金ぴか狐だから。


「そういう術だ……こんなもんだな」


 直径が2メートルくらいの火球を作ると、護符の剣を魔物の群れに向ける。


「大きくない? 私の火球の数倍はあるんだけど……」


 アニーが火球を見ながら呆れた。


「このくらいじゃないと敵の勢いが落ちないだろ……食らえ!」


 火球を放つと、魔物の群れに飛んでいく。

 そして、着弾すると、金色の火柱が上がり、数十メートル四方を焼き尽くした。

 魔物達はその炎を見て、一瞬だけ立ち尽くしたが、すぐに突撃を再開し始める。


「全然、怯まないな。恐れを知らないのか?」

「確かに恐ろしい魔法だったわね……対軍魔法じゃないの。でも、確かにおかしい。魔物に恐怖心がなさすぎる」


 魔物の特性はわからないが、あれだけの火力を出せば、普通は怯む。


「さっき、下で魔物を近くで見たが、目が血走ってたぞ」

「狂化状態ってこと? うーん……群れたことで勢いづいているのかしら? スタンピードなんて数十年前に起きて以来だからわからないわ」

「俺も知らん。ハァ……さすがに休憩するか」


 アリスの隣に腰を下ろして壁に寄りかかる。


「マスター、霊力はどれくらい残っていますか?」

「まだ十分に残っているが、このペースだとすぐに尽きる。余力を残しておきたいし、休みながら術を使うわ」

「了解です。では、私は狐火を放っています」


 AIちゃんが頷くと、アニー達の横で狐火を放ち始めた。


「ところで、お前はいつまで休んでいるんだ?」


 ぐったりとしながら飴を舐めているアリスに聞く。


「…………私はさっきまで頑張ってた。当分、休憩」

「そうか。じゃあ、休むか」

「…………うん」


 俺達はその後、休憩をしながら魔法を撃つという作業をひたすら続けることになった。


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主人公は偉そうな貴族っぽい言葉遣いをしている設定なのに、実際の言葉遣いがそこらの軽いノリの男子っぽいのが気になります やけに「〜〜だわ」を多用していたり、「マジで〜〜」とか普通に使ってたり
[一言] 蟻の群れ、って例えだったか
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